島地黙雷: 「政教分離」をもたらした僧侶 (日本史リブレット人 88)

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  • 山川出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (95ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634548886

作品紹介・あらすじ

「政教分離」をもたらした僧侶・島地黙雷。キリスト教を敵視する一僧侶にそれが可能だったのはどうしてか?そしてその意図は?黙雷の主張に耳を傾け、彼の行動を追うことで迫る。一人の僧侶に視点をすえた幕末・明治時代史。黙雷は明治やそれ以降の日本の社会にどんな影響をあたえたのか?そもそも近代日本にとって宗教とは何なのか?-。

感想・レビュー・書評

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  • 政教分離をもたらした送料、キリスト教を敵視、

    そもそも金田医院日本にとって宗教とは何なのか?

    政教分離の政と教とは何であるのか?信教の自由との関連まで、厄介だ言葉

  •  宗教という言葉を作った男。
     明治維新の廃仏毀釈で衰退した仏教を、神道からの分離などで建て直した、浄土真宗本願寺派の僧侶。

     教科書でチョロっと出てくるスゴイ名前の人。というイメージが強いので、踏み込んでみた。

     「日本に政教分離をもたらした」とあるが、崇高な理念というより、目的が手段になった感じ?

    _____
    p4  政教分離
     明治維新で日本の近代化を達成するために、あらゆる西洋のものが導入された。その中で、廃仏毀釈が行われたが、キリスト教が国教にならないように政教分離を訴えた。本来崇高な理念の政教分離が手段として使われたようだ。でも、そのおかげで今がある!!

    p33  日本で初めてインドを訪ねた僧侶
     島地黙雷は岩倉使節団と同時期の1872年に海外留学に出て、仏教の本場インドにも訪れた。しかし、猛暑や食事が合わず、あまりいい旅にはならなかったようである。この留学は西洋の敵情視察が主になった。

    p34  宗教という訳語
     江戸時代まで宗教という言葉はなかった。西洋のreligionが輸入されて初めて生まれた。
     この宗教という概念の導入によって、教と道の区別が成された。然るに、神道は道であり、儒教は学問であり、ともに宗教ではない。日本でキリスト教に並び立てるものは仏教だけであるという理屈を作った。

    p41  改宗せずに文明化
     文明化は政治や学術によって達成されるものである。欧州の文明開化も学術によるものであり、キリスト教によるものではない。だから、日本の文明開化にもキリスト教は必要ないのである。
     つまり、文明国にこそ政教分離が必要なのである。

    p80  僧侶のあり方
     仏祖の本質は教にあり、寺院はその教場であり菩提寺(墓を護る寺)など本来の姿ではない。僧侶も教の学問に専心し、他人からの施しに依存して生きるようなことはしてはいけない。キリスト教の連中は医者や教師として自立して教への敬虔な態度を実践している。これは見習うべきである。
     というのが黙雷の主張。しかし、しみついた葬式仏教の慣習は無くならなかった。

    p84  島地黙雷の功績(その他)
     監獄布教・従軍布教・仏前結婚(仏教は葬式ばかりだがキリスト教などは冠婚例祭すべてを取り仕切っている。それに追随しようとした。)

    p91  キリスト教侵犯
     日本にキリスト教は思いのほか根づかなかった。これは黙雷の政教分離の功績である。と同時に、仏教が、というよりも宗教が日本で軽んじられるようになったのも黙雷のせいかもしれない。
     日本の宗教はあまりに派閥争いだとかで面倒だったので、保護されなかったりして、国家をあげての宗教教育がなされなかったからかな。

    ____

     明治維新の島地黙雷は史料が多いからか、充実した内容だった。現代日本の宗教の原点を知るのに重要な人物だ。

  • 島地黙雷は明治維新時に廃仏毀釈により勢力を失った仏教をキリスト教の対抗勢力として復興を図った僧侶。
    浄土真宗本願寺派。
    黙雷は長州出身で木戸孝允等の長州出身政治家と親密な関係を築き、西南戦争を機に神道派が多かった薩摩閥の影響の排除に成功する。
    仏教を「宗教」という概念から神道、儒教と分離し、政教分離を企て、仏教が埋没することを防いだ。
    明治という近代国家を作り上げるにあたり、宗教はどのような位置付けにあったのかを学ぶことができる。
    (後世にも大きく影響を与えている)

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著者プロフィール

山口 輝臣(やまぐち・てるおみ):1970年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。東京大学大学院博士課程修了。専門は日本近代史。著書『明治国家と宗教』(東京大学出版会)、『天皇の歴史9 天皇と宗教』(共著、講談社学術文庫)、『はじめての明治史』(編著、ちくまプリマー新書)、『渋沢栄一はなぜ「宗教」を支援したのか』(編著、ミネルヴァ書房)など。

「2023年 『思想史講義【明治篇Ⅱ】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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