- Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
- / ISBN・EAN: 9784634590717
感想・レビュー・書評
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倫理とは何かを知りたくて手に取りました。
倫理の「倫」とは、「なかま」のこと、「理」とは「筋道」のこと、要するに、人々の長年の経験が積み重なってできた人間集団の規律やルールを指し示すが、本書の主張です。
「倫理感」からくるイメージで、道徳のようなものを想像していたのですが、ちがいました。既知感はありましたが、社会契約論から民主主義への流れ、実存主義の流れについては、どうしてそういう流れとなるのかが難解で理解ができませんでした。
気になったことは次の通りです。
<哲学の黎明>
・ギリシャ哲学 哲学の原点:ソクラテス 無知の知 プラトン イデアとエロス アリストテレス フィリア、までが1つの流れ ポリスで生まれた哲学です。
・ヘレニズム ポリスが消滅して心の安らぎをもとめる ストア派 自然と一体となって生きる エピクロス派 魂の平穏をもとめる ローマ世界からヨーロッパに伝わり、神学大全につながっていく
・中国の思想 これが本流 孔子⇒孟子⇒荀子⇒朱子学⇒陽明学:儒教の流れ 他 墨子(非戦)、老子⇒荘子 ありのままのまま、神仙思想
<宗教>
・宗教:キリスト教 モーセ;旧約 ⇒ イエス :新約 ⇒アクグスティヌス:ミケーア会議の三位一体 ⇒ トマス・アキナス 神学大全 神と哲学の調和 ヨーロッパにカトリック勢力が広がっていく
・宗教:イスラーム教
・宗教:仏教:さとりとは、真理に目覚めた人 ありのままの現実を直視するのが仏教 愛別離苦、一切皆苦など 現世は変化して留まることをしらない 諸行無常
この世界で、心静かに生きるための教え 四諦、八正道。やがて仏教は、個人のさとりから、大衆を救うために変化していきます。それが大乗仏教で、六波羅蜜を教えとする
此岸:この世、迷いの世界 ⇒ 彼岸:真実の世界 六波羅蜜とは、布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧(般若)をいう
<西洋哲学の発展>
・ルネサンス後のヨーロッパの思想史、哲学史、難解極まる。その違いがよくわからない。
ルネサンス 中世の支配から、キリシャ・ローマの人間味のある文芸を学ぶことで、人間再生を行うヒューマニズムの運動
マキャベェリ 分裂していたイタリアを政治的に統一するために強力な君主の出現を願って「君主論」を著す。そのためには権謀術数をつかっても仕方ない
宗教改革 世俗した教会の腐敗に対して、聖書をもとに聖典の原点にもどろうとした運動。反ローマ・カトリック
・経験論、合理論 ベーコン、ガリレイ、デカルト、スピノザ、ライプニッツ この中から、方法的懐疑、分析と総合、科学へとつながっていく アインシュタイン、レイチェル・カーソン
・社会契約説、自然法から、民主主義の誕生 ホッブス、ロック、ルソー、カント、理性と弁証法、ヘーゲル、フィヒテ、シェリング この流れの必然性が理解できない
・働くこと、農村から都会へ出てきた人々の人間性の回復 オーエン、マルクス、アダムスミス、共産主義、社会主義と功利主義から、資本主義との対立へ、ロールズ、ベンサム、ミル、ジェームス、デューイ。試行錯誤と仮説検証、科学的な手法を社会へ適用する
・実存主義 キルケゴール、ニーチェ、ヤスバース、ハイデッカー、サルトル、メルロ=ポンティ この流れも難解で流れの必然性が理解できない
・ヒューマニズム ガンディー、シュバイツァー、キング牧師、アンネフランク、マザー=テレサ ここは解りやすい
・新しい知性、現代批判 戦争・虐殺への反省から出発 フランクフルト派 ハーバマス、フーコー、レヴィーストロース、レヴィナス、ハンナ=アーレント、ヴィトゲンーシュタイン、第二次世界大戦をきっかけとした、未開から文明への発展への懐疑論
<日本の思想>
・平安仏教 最澄・空海以前、言葉で伝えられる仏教 顕教 今でいう形式知。密教とは、言葉では表せない教え、暗黙知
・鎌倉仏教 貴族の宗教から、民衆を救おうとした僧が現れる、それが法然であり、親鸞。念仏を唱えるだけで仏の救いを受けることができる、明確、簡単、専念でだれにでも理解できた。
・江戸時代 幕藩体制を支えるための教え、朱子学:藤原惺窩、新井白石、室鳩巣等 武士への道 山鹿素行 心学:石田梅岩 商人の地位向上 農本主義 二宮尊徳
・国学の誕生 本居宣長 もののあわれ:自然に触れてその美しさに感動すること かんながらの道 自然のままに心情をおもんじて人為を加えない心
・幕末の思想 蘭学 杉田玄白、シーボルト、松下村塾:吉田松陰
・明治の思想 武士から大衆へ 福沢諭吉、中江兆民、内村鑑三、社会主義へ、幸徳秋水、田中正造、吉野作造
・日本の近代哲学 西田幾多郎、和辻哲郎、柳田国男、柳宗悦、南方熊楠
現代の倫理的課題 生命倫理、遺伝子操作、尊厳死、生殖医療、脳死と臓器移植、環境倫理、資源枯渇、環境問題、情報、プライバシー保護、仮想現実、異文化交流
目次は、以下の通りです。
ふたたび倫理を学ぶ皆さんへ
序章 現代社会と自己の道
プロローグ 自分を探す旅
1 自己の発見
2 他者との出会い
3 社会に生きる自己
4 人生の意味を求めて
第1章 思索の源流
1 哲学と思索
2 宗教と祈り
第2章 西洋の近代思想
1 人間の尊厳
2 近代科学の考え方
3 民主主義の考え方
4 近代の理性的な人間像
5 人間と働くこと
6 幸福と創造的知性
7 真実の自己を求めて
8 生命の尊重とヒューマニズムの思想
9 新しい知性と現代への批判
第3章 日本の思想
1 日本の風土と文化
2 古代日本人の心
3 日本人と仏教
4 儒教とさまざまな思想
5 日本の近代化と新しい思想
第4章 現代の倫理的課題
1 科学技術の発達と生命
2 地球環境問題と私たち
3 情報社会とその課題
4 国際化と異文化理解
5 世界の平和と人類の福祉
エピローグ 命の星に生きる
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哲学、宗教に関する基礎知識を習得するためには教科書が一番との思いで「もう一度読む山川」シリーズの倫理を手に取った。倫理・哲学・宗教・科学等の定義を再確認するとともに歴史上人物の思想が一通り確認することができた。これをきっかけに興味をもった人物や思想については深堀りしていきたい。
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小寺聡編『もういちど読む山川倫理』(山川出版社)
2011.4発行
2017.10.17読了
倫理とあるが、ほとんど哲学史といってよい。古代ギリシャの自然哲学から始まって、ドゥルーズのポスト構造主義までの通史をさっと学べる。哲学史のこれまでの発展をざっと知る上では使えるのかもしれないが、高校の教科書を下書きにしているからなのか、無味乾燥な文章に眠くなってしまう。とりあえず無難に山川出版社の本から哲学史の勉強を始めたが、もっと他にも良い本があるかもしれない。
URL:https://id.ndl.go.jp/bib/000011177513 -
2021/08/21
やっぱり、教科書チックなものはつまらんな。
知識を詰め込もうという示唆を裏に感じてしまう作りになっていて残念だ。
ただし、書かれている内容はとても洗練されていて“辞書的な用途”として使う分には十分な1冊だ。また、日本の思想についても厚く書かれており、その点においては学びの多い良書であった。 -
通読するのはきつい、というより、そういう読み方をする本ではなく、興味がある箇所を拾い読みする人が多いのでは。それでも、学生の時以来ひさびさにソクラテスのことを思い出してみたり、エーリッヒフロムの著作が気になってみたり。試験のためだけに暗記させられるのでは、逆にしっかり中身を理解するのが疎かになりそう。ただ、情報量が多い分、どうしても個別テーマは軽くなってしまうので、学生が興味を持つに至らないのは致し方ない部分もあるなぁ。
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冒頭の序文は名作だ。まさか山川の参考書で感動するとは思わなかった。初っ端から、先日読んだばかりの「夜と霧」の引用があって驚いた。名の知れた本だったんだ。
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富山市立図書館
150/コサ/2011 -
教科書的ではあるが内容的にはしっかりしていてよく出来ているので、アレコレと哲学の入門書を読むぐらいなら、この1冊を何度も繰り返し読む方が有益かもしれない。
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哲学、特に東洋の哲学を学んでみたいという気持ちが刺激された。
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西洋と東洋の哲学・社会思想の概要を学ぶことができた。知識を定着させていきたいし,どれかに絞って深めていきたいとも思った。