- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784634640559
作品紹介・あらすじ
グローバルな世界史的文脈と新たな政治文化の生成から読み解く、フランス革命史研究の第一人者による最後の著作。
感想・レビュー・書評
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【工藤庸子・選】
必読の『フランス革命』(岩波現代文庫)と合わせ、歴史家の透徹した知性に触れてほしい。革命史の方法論的な探索と併行して新たな「革命通史」を展望しつつあった碩学の遺著。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
[評価]
★★★★☆ 星4つ
[感想]
著者「柴田三千雄」が残した資料を元に上梓されたフランス革命史に関する書籍となっている。
この巻はフランス革命自体よりも、フランス革命の発生要因となった当時のフランスの社会状況や周辺諸国に関する解説が多数を占めている。
他の書籍では当時のフランス社会に関してはなんの解説もなかったのでこの本を読み、フランス革命をより深く知れた。
2巻、3巻ではフランス革命期とナポレオン期が構想として存在し、フランス革命と明治維新の比較も構想されていたということなので、それらが読めないことが非常に残念だ。 -
フランス革命研究の大家の遺著。本来は3巻でフランス革命の全容を明らかにする予定だったというが、著者の逝去により果たされずに終わった。本書はその3巻構想のうち、革命の本格的展開の「前史」にあたる部分を、ほぼ出来上がっていた遺稿をもとに出版したものである。
もっとも印象的なのは、「変革主体とは、社会・経済構造の矛盾のなかで異質の敵対分子として徐々に形成され、一定の力をたくわえた熟成の時を待って立ち上がる、そいう性質のおのではない」(p.169)とする変革主体論である。では変革主体はどのように登場するかといえば、それは「現実の政治に結晶化してくるそれらの要因(経済構造の変化や思想潮流の洗礼―本文作成者注)の相互連関作用、複合作用であり、革命主体が革命をつくりだすのではなくて、革命が革命主体(革命家)をつくりだすのである」(p.184)という。まさに構造主義。
さて、現在のフランス革命研究は、この構造主義的理解をいかに乗り越えているのだろうか。そのことは、著者が比較史の対象として設定していた、明治維新史研究もまた同じである。ただ明治維新史研究は、フランス革命研究よりも構造主義的理解の消化がうまく行っていない印象で、それゆえに「ポスト構造主義」にいかに向き合うか、という論点そのものが成り立たないのだけど…。本書の内容からは離れてしまうけれど、歴史学の方法論と維新史、という整理が必要だと改めて感じたのだった。 -
日本のフランス革命研究の第一人者の遺稿をほぼそのままの形で出版したもの。本来の著作計画はジャコバン独裁や第一帝政まで扱う予定だったということだが、この遺稿では1789年の多様な政治的変革の原因を探ることに焦点があてられている。フュレなどのいわゆる「修正主義」の成果も盛り込み高水準の内容に仕上げているが、同時に叙述が平明で非常にわかりやすい。ある程度フランス革命研究について読書を重ねている人、逆にほとんどそのあたりの研究に触れたことのない人、どちらにも勧められる本だと思う。