ビザンティン・ロシア思索の旅

著者 :
  • 山川出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634647800

作品紹介・あらすじ

1973年、筆者はギリシャの聖山アトスを訪れ、ヨーロッパのキリスト教世界を二分する東方正教会に触れた。ロシアではロシア正教、ギリシャではギリシャ正教とよばれる東方正教会の姿はあまり知られていなかったが、年月をかけてこの地を歩きつづけ、もうひとつのヨーロッパ像が見えてきた。

感想・レビュー・書評

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  • <span style="color:#0000ff;"><span style="color:#0000ff;"><抜粋&要約>
     ローマ帝国が東西に分割された後、「新しいローマ」とされたのはビザンティンだった。そこは名前こそ「ローマ」とあったが、ギリシャ・ヘレニズム文化を器とし、公用語はラテン語からギリシャ語となった。また、皇帝崇拝からキリスト教崇拝となった「新しいローマ」であった。

     キリスト教は7回にわたる公会議で教理を整理するとともに、異端もうみ出した。
     また、西と東の首位権争いから、「シスマ」が訪れ、正教とカトリックは互いに相容れないものとなった。

    <イコン>
     「いかなる像もつくってはならない」という教義と、「聖なるものを目に見える形に描きたい」本能の相克。

     P14
     敬拝するのは描かれた像そのものではなく、像という形をとった聖なる存在そのものに対してである、とされたのである。
     イコンが「天国を映し出す鏡」と呼ばれる由縁であるが、これはまたキリスト教の祈りがヘレニズムという器を借りてイコンに結実した。

    <復活>
     キリスト教では”復活”を重んじる。それがなければイエスも単なる預言者である。
     そのため、”復活”の秘儀こそが最も重要視される。

    P35
    (自己探求の旅の果てに、アトス山にのぼり、修道士になった青年ゲオルギオスとの会話)
     東方正教会の神学を特徴づける要素の一つに<イイススの祈り>がある。イエスに向かって絶えずいのることによって、神の光に包まれる。
     これは「神が人になったのは、人が神になるためである」という人間の「神化(テオーシス)」をめざす東方正教会の伝統から生まれた祈りだ。
     この祈りは(略)14世紀のアトス山のグレゴリオス・パラマスの手で「静寂主義(ヘシュカスム)」として大成されている。祈りは<主イイスス・ハリストス、我罪人を哀れめよ>という短いものだ。この祈りを、単に機械的に唱えるだけでなく、呼吸を整え、(略)意識を集中させなくてはならないと示された教えもある。
     つまり、呼吸を集中して神を求める。ヨガと静寂主義はこんな共通項を持っている。(略)
    「ヨガと静寂主義は似ている、とお考えでしょう。僕も初めはそう思っていた。でも、実際は180度といっていいくらいかけ離れています」
    「…」
    「ヨガには神に対する<へりくだり(ケノーシス)>の心がありません。それがなくて、神の愛が得られますか?」

    <『黙示録』の島 パトモス>
    P319
     そもそも『(ヨハネの)黙示録』は孤島(パトモス)に(ヨハネが)流刑中、洞窟で幻視を体験し、神から預かった言葉を示したものだ。

    P355
     (この)「聖なる都エルサレム」が間違いなく到来することを、著者として名をとどめるヨハネ以下、キリスト教とは信じて疑うことがなかった。それが<b>当時の信仰</b>(傍点)の意味するところであり、洞窟におけるヨハネの祈りは、キリストの再臨という共同幻視を目に<b>見えるかたち</b>として提示することに尽きた。


    </span>




    </span>

  • 本筋から外れるが、江渡貝邸最後の晩餐のカットを見て以来、何らかの形でキリスト教が話中で登場するのではないかと思うので、こちらのリストに列挙することにした。
    正教会関連が大半なのは、ヒロインの父がロシア極東地区からの移住者らしいことからの類推と、明治期日本におけるキリスト教を考えたらニコライの存在は欠かせないだろうと思ったため。(アテが外れたらリストを分けることにする)
    なお、正教会の信仰や聖書解釈の主だった解説はハリストス正教会がウェブサイトで公開している資料に詳しいので、そちらを参照されたし。
    http://www.orthodoxjapan.jp/pdf/new-tebiki.pdf

  • 1c

  • ロシアに行きたくなるな。
    とはいえ筆者のような楽しみ方、待遇?を受けるのはきちんと信者やからってのはある。

    ただ、こう、一人旅、旅先での出会い、みたいなものはいいな。それに、教会内の描写がきれいで、厳かな、包容力のある状況が伝わってくる。

    「旅」って感じ。「観光」ではないな。
    最初の方の聖山アトス、アリ・パシャのアルバニア、ここらへんが引き込まれた。アラム語を話す村、も。

  • 巻末にビザンティンとロシア・バルカン関連年表あり。読みごたえあった。

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