新編・風雪のビヴァーク (ヤマケイ文庫)

著者 :
  • 山と渓谷社
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本棚登録 : 177
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635047265

感想・レビュー・書評

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  • 山岳用語がたくさん出てきて、岩登りをやらない自分にはわからない言葉ばかりだったけど、それが問題にならないほどの筆力と意志の強さに惹きつけられて一気読み。
    加藤文太郎と同じ北鎌尾根で遭難したのを知らずに読んでいて、「何トカ湯俣マデト思フモ」というところで「孤高の人」の最後のシーンが蘇ってきた。
    風雪の中でしたためられた手記の最後は、借りたお金の覚え書きで終わっていた。雪山で死ぬつもりは毛頭ないけども、果たしてこんな境地で最期を迎えられるだろうか。

  • 遭難を美化できないが、文学的なセンスが彼の真っ直ぐな生涯を際立たせ、最後は涙なしでは読み進められない。

  • 叙情的ではあるが感傷的ではない。パリッとした記録としての文章もあれば、分析的、感情的な一面もあり人間味に溢れる。
    詩人ではないけれど雄弁な言葉を持つ登山家であり、その語彙力と表現力は随一。
    山を登らない人間にもその凄みが伝わるのではないか。
    死の間際のメモはどこまでも生命に溢れており逆説的かもしれないが死が生を生たらしめているのではないかと感じざるを得ない。

  • 2016/2/23購入
    2016/5/5読了

  • // memo
    戦後すぐに起きた遭難事故の遺書なのですが、心情があふれています

  • 学生と社会人の、登山への考え方の違いを論じた部分(p443/563 S23.7)が印象的だった。
     自分で働いて(稼いでから)山に行く人間は、初めから権利の概念が強い。汽車賃だって、、、みな俺が稼いだものだ。わずかな暇を盗んで山に行くのは俺自身の努力でかちえた当然の権利だ。・・・どうしても享楽的になる。・・・楽しいということが第一になる。 (順番は逆だが)学生で親の脛を齧って山に行く奴は、山に行けば行くほど良心がとがめる。・・・せめて遊びに終わらないようにと考え、やり甲斐のある登り方、文化的意義のある登山をしようと努力する。そこに登山の進歩が生まれる。・・・(以上引用)とあった。
     自分の登山も、社会人の考え方にたがわず金に物言わせてとりあえず、一日で縦走するために手段を選ばない、、というところが無きにしも非ずであり、また、仕事でも、とにかく金に物を言わせてなんとかする、、、ということが行われがちであったことに気付かされ、自分が登山で何を求めているのか、仕事で何がやりたかったのか、またそれができているのか?など、自分を見つめなおすきっかけを与えてくれた。
     本書は、最後の遺書の部分があまりに有名な様だが、途中、途中で会誌などによせている寄稿文も私は多く気に入った。昭和初期の文化人というか、自由に理想を想い、観念を述べた文章が私にお気に入りとなった。

  • まず、「しょうとう あきら」だと思ってた。登山界の伝説みたいな岳人の名は「まつなみ あきら」。遭難死した時、若干26歳10ヶ月。
    とは思えないレベルの文章力と山行の両立ぐあい、と、それらしい若い情熱。
    学生登山と社会人登山の流れや、極地法への疑問など、昭和初期の開拓の空気や、その上に立った松濤の先進的な思想がよくわかり、読みものとしてもまとまっている。

    本人の筆による山行報告とコラムがいい。それに付随する解説も助かる。最期となった「風雪のビヴァーク」部分の考察はまさに「後進の参考となる」内容。グラム単位で重量計算し、事前に荷上げし、緻密に緻密に練り上げた山行でも、計画通りに進められない状況に陥った時、引き返すタイミングを間違えば、気づいた時には手遅れとなっている…。という遭難本はいくつもあるが、帰らぬ人となった本人による文章の迫力が追随を許さない。

    その厳しさを胸に、いつか自分が同じ場所に立つ日がきたら…。岩のようすにトポ、コースタイムや食糧までを書き込んだ、この偉大な先人の山行記録に、こっそり重ね合わせてみたい
    (…多分夏だけど)
    ものです。

  • 当時の技術と装備でここまでオリジナルな登攀を行うことの凄さ。敬服するかり。
    登攀するルート、技術において極致法が主流を占めていた当時の登山界の中で単独あるいは少数で、金と時間をかけずにバリエーションルートを登り詰めるという方法そのものが、その後に続く日本のロッククライマーの流れをくんでいることを見る事ができるものだ。
    そもそも、登山を家族が出来てめっきりしなくなってしまったのだが、岐阜に行く機会があって雪化粧をした長良川からながめられる山々を眺めているうちに、本書を無性に読みたくなったのだった。
    そして、読了した今、山への憧憬を求め真剣に山をこよなく愛する著者の姿勢を見るにつけ、改めて生活全般に対するファイトが俄然わいてくる。
    「風雪のヴィバーク」のタイトルになっている著者最後の縦走となるはずだった北鎌尾根から北穂、焼岳への計画と季節はずれの豪雨と雪に見舞われた山行きの記録に到達する頃になると、今年は自分も山行きを決意したくなる心境に。登山を志す人々だけではない多くの人々に「最善の生き方とは」とか「人間とはなにか」というような死生観や哲学的な思索へと誘ってくれるはずです。
    同時に、本書を読むと山への憧憬と圧倒的な感動を求めて山への誘惑に駆られてしまうこと間違いないだろう。
    私も、夏の槍から西穂縦走に向けて一歩を計画しよう。カミさんに承諾を得ながら・・・。

  • 松濤明の名著が文庫で復活。
    学生時代にどれだけ、この本を捜し歩いたことだろう。

    戦前、戦後時代の登山記録だが今の次代に見ても凄い記録を数々うちたてた天才クライマーだと思う。
    いつかは彼の歩いた道を追ってみたい。

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