ヤマケイ文庫 アイヌと神々の物語~炉端で聞いたウウェペケレ~

著者 :
  • 山と渓谷社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635048781

感想・レビュー・書評

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  • 『アイヌと神々の物語~炉端で聞いたウウェペケレ~』読了。
    アイヌ民族の末裔である著者がウウェペケレ(昔話)をまとめた話。
    登場するのは主に神さまやアイヌの人々や動物たち。そんな彼等に飢饉が起こったりお供え物をしたり狩りをしたり祈祷を唱えたり神になったり結婚したり恋したり死んだり殺されたりと色んな事が起こり面白かった。
    まるで三位一体論のような関係性で上もなければ下もない。
    人間と神と動物が対等な立場で接しているところが面白い。持ちつ持たれつという言葉が合うかもしれない。
    そして起こった出来事が教訓になって語り継がれて死んでいく人々。
    昔話のような幸せになりましたで終わらないところが面白かった。
    テレビとかでアイヌ語を話せる人がいないとか、アイヌ民族が消滅するとかを見聞きする。
    無くなっていい文化があっていいわけではない。
    人間の営みがどのようにして今に繋がれているかを知ることができてよかった。

    2022.3.23(1回目)

  • 祝文庫化!

    ヤマケイ文庫 アイヌと神々の物語~炉端で聞いたウウェペケレ~ | 山と溪谷社
    https://www.yamakei.co.jp/products/2820490450.html

  • 素晴らしく面白かった。

    炉端でばあちゃんや近所のおじさん、おばさんが口述で語り継いだ物語を和人の言葉で丁寧に書き起こしてくれている。

    物語ごとに丁寧な解説がつく。各物語には子どもたちへ伝えたい教養が詰まっている。


    アイヌは神々に対して対等な立場を取っていたなど、興味深いアイヌ文化に触れることが出来る。

    確実に失われていってる文化であることが惜しい。

    物語自体面白く、読み易いので非常におすすめ。
    とっても楽しい時間だった。

  • アイヌの昔話・ウエペケレは興味深い。神と人が近しく、食料としての熊やシカは、狩猟の結果死ぬことによって神になる。他の動植物にも神性が宿っている。そして、人の不利益になることがあると、人が神を叱るという考え方が面白い。物語の構成は多分に教育的でパターン化されている印象。それは厳しい北の大地で自然と共生する知恵なのだろう。破裂音、促音が多いアイヌ語を日本語表記に翻訳しているので、小さいラやレ、良く出てくる地名のユペッなどを、どのようにアイヌの方が発音するのかが知りたくなった。

  • なんだろう、面白かったなー
    たった数十年前なのに、世の中には沢山の神様がいて、人と共存してたんだなぁ〜

  • アイヌの人々の間で語り継がれてきたウウェペケレと呼ばれる昔話を採録し、集めたもの。

    このウウェペケレは、おとぎ話や童話というより、伝承という形で過去にあったことを今の人たちに語り伝えるようなものとして語り継がれているものである。

    そして、内容としてはどの話もアイヌと神々のやり取りであり、正しい神を祭り大切にすることで、神が自分たちの命を守ってくれ、生活を豊かにしてくれるということを説いている。

    アイヌでは、神々にも良い神と悪い神があり、良い神は人間を災いから守ってくれる一方、悪い神は人間に嫉妬したり横恋慕したりして、暮らしを乱してしまう。

    そのような神々と人間の間には、ただ人間が神を祭り祈るだけではなく、時には神々のお願いをきいたり悪い神々を叱ったりするという関係性がある。

    神々は動物や人間の形を取ってアイヌの人たちの暮らす世界にやって来るが、また神の国に帰る時には、人間から贈られたイナウと呼ばれる御幣やお酒などのお供え物を持って帰らなければ、神の国には入れないという。

    そのため、神々も、人間から感謝をされるために、人間の話を聞き、人間のためになることをしてくれたり、悪いことをしていた場合には反省をしたりする。

    人間と神々が異なる世界に暮らしながらもその接点で関係性を持ちながら共存している状態である。このような世界の考え方は、アイヌの人たちが異文化や自然といった自分たちの世界と異なる世界にどのように対処しようとしてきたかということを表しているようで、興味深かった。

    その他にも、狩猟などの生活の方法や家族の関係性などのアイヌの文化の特徴をそれぞれの話を通じて知ることができるなど、とても面白い内容であった。

  • 自然と一体で人々が暮らしていた豊かなありし日の北海道を旅している気分になりました。
    迷信とか遅れてるとかそういうことではなく、生き方が違ったんだと。

  • ホントに楽しかった。
    読み終わるのがもったないくらいでした。
    子どもや親たちがいろりを囲んでおじいちゃんやおばあちゃんの話に耳を傾けている姿が浮かんできました。
    絶やしたくない文化です!

  • アイヌの人の語りを通して、アイヌ文化を知る。人と自然と神と。神様も自然も、崇拝するんじゃなくて、平等に対等に扱って共存していく。神様に対して人が怒ったりもする考え方が面白いな、と思う。ただ違う世界に住んでいるというだけ。だけど、互いに助け合っている。だから自然を大事にするし、裏切られるようなことがあれば怒りもする。
    人にとって都合良すぎない?とも思っちゃう話が多かったり、神様ってそんなのでいいの?!とか思っちゃうんだけど、そういう人間臭い感じも良かった。

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著者プロフィール

1926─2006年。北海道生まれ。アイヌ文化研究者。学術博士。長年アイヌの民具や伝承を精力的に収集・記録し、1972年には二風谷アイヌ文化資料館を開設、館長を務める。1994年、アイヌ出身者としてはじめて国会議員となり、北海道旧土人保護法撤廃・アイヌ文化振興法制定などに尽力。主な著書に、『ウエペケレ集大成』(アルドオ、菊池寛賞)、『萱野茂のアイヌ神話集成』(ビクターエンタテインメント、毎日出版文化賞)、『萱野茂のアイヌ語辞典』(三省堂)がある。

「2017年 『アイヌ歳時記 二風谷のくらしと心』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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