ヤマケイ文庫 マタギ奇談

著者 :
  • 山と渓谷社
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本棚登録 : 52
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635048866

感想・レビュー・書評

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  • 工藤隆雄『マタギ奇談』ヤマケイ文庫。

    今月のヤマケイ文庫は、山の不思議を集めた作品が3冊も同時刊行というから何とも贅沢で嬉しい限り。ちなみに先月のヤマケイ文庫は矢口高雄と手塚治虫の漫画を3冊刊行している。

    本作は、2016年に刊行された同名傑作の文庫化である。マタギたちが経験した山の不思議な体験を著者が長年に亘り取材し、まとめ上げた奇談29編が収録されている。

    非常に面白い。自然と一心同体で生きるマタギにこそ、日本人本来の姿があるのだろう。物質文化に汚され、自然を蔑ろにする現代日本人の暮らしと、自然を畏怖し、自然の中に生きるための知恵と技術を研鑽し続けるマタギの暮らしとを対比するのも面白い。『第一章 歴史のはざまで』から見事にマタギの文化や風習、歴史の狭間でのマタギの活躍といったマタギの世界に魅了され、最後まで楽しめた。

    『第一章 歴史のはざまで』で、最初に描かれた八甲田山雪中行軍遭難事件にまつわるマタギの奇譚は非常に興味深かった。確かに新田次郎の『八甲田山死の彷徨』では青森隊と弘前隊が山中で落ち合う約束の元、雪中行軍に向かったという設定であったのを覚えている。史実は違っていたようだ。

    続く、50年間も東北や蝦夷地を巡った菅江真澄が幕府の密偵であったのではという話も面白い。幕府の密偵疑惑と言えば、松尾芭蕉がそうだったのではというのが有名であるが、弘前藩での菅江真澄の挙動を見る限り、疑惑はかなり深まる。

    1972年の第一次ヒマラヤの雪男捜索隊にマタギが参加したという話も興味深く、マタギがその足跡から正体は猿ではないか、雪男の挙動から或いは熊ではないかと、現代の通説と全く同じ推理をしていたことに驚く。

    『第二章 マタギ伝説』では、マタギの風習や文化や伝説・伝奇について描かれる
    。マタギの風習や文化については、矢口高雄の『マタギ列伝』『マタギ』にも詳しく描かれている。

    『第三章 賢いクマ』では、イタズの賢さや、マタギとイタズの知恵比べと死闘が描かれる。クマ好きには、なかなか面白い。

    『第四章 山の神の祟り』は、マタギの厳しいオキテとオキテを破ったことで山の神の逆鱗に触れた話が紹介される。四つグマのオキテはクマが減少することを恐れ、無闇にクマを獲ることを戒めたものだろう。

    『第五章 不思議な自然』は、タキタロウ伝説に山の木々が物言う話など奇談がてんこ盛り。自然の神秘を感じた。

    『第六章 人間の不思議な話』は、マタギのオキテ破り、死者に呼ばれる話、老マタギと犬の感動の物語がつづられる。

    『あとがき』に加えて、『文庫のためのあとがき』と高桑信一による解説『マタギと末裔たちの不思議な山語り』を収録。

    本体価格750円
    ★★★★★

  • 厳しい自然と暮らすマタギの生活がわかった。
    最初の八甲田の話の様なのが続くと思ったが、山と熊とマタギの話であった。

  • 不思議な世界に感じるが、100年も前のことではないと思うと感慨深い。
    ゴールデンカムイで興味を持って読んでみたが、マタギを通して自然と付き合ってきた方々の事を深く知ることができて大変満足しています。
    飄々とした文章で、昔話というかお伽噺を読んでいるみたいですがその文章からは生々しさも伝わってきてそれが決してフィクションでない事を教えられます。
    読んで良かったです。

  • マタギに伝わる風習やクマ、山の事故などを集めた本。

    ゴールデンカムイの影響でマタギに興味を持って読んだ。
    マタギの人たちに聞いた体験談が元になっていて、ダークな話が多く興味深くて読みやすい。
    マタギの山に対する敬意はちゃんと伝わってきたのだが、同時に性格終わってるしょうもない奴の話も多くて山とか関係なくめちゃくちゃげんなりした。話は面白いのだがあんまり読み返す気にはならない。

    マタギとはあまり関係ないが山津波の話が1番怖かった。山には絶対住みたくない。

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