愛犬王 平岩米吉 「日本を代表する犬奇人」と呼ばれた男 (ヤマケイ文庫)
- 山と渓谷社 (2024年3月19日発売)


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本 ・本 (440ページ) / ISBN・EAN: 9784635049894
作品紹介・あらすじ
「感動しながら読んだ。途中で何度も涙した」村井理子氏(翻訳家・エッセイスト)
「これは犬と暮らす人、動物と暮らすすべての人に読んでほしい」加門七海氏(作家)
「かつて平岩米吉という最高に素敵でクレージーな人間がいた。頁を開いて、ぼくと同じようにぶっ飛ばされてください」高橋源一郎氏(作家)
「植物の牧野・動物の平岩」と並び称された男の痛快ノンフィクション
戦前から戦後にかけて、狼をはじめとするイヌ科動物を独学で研究し、雑誌『動物文学』を立ち上げた平岩米吉という人物がいた。
動物行動学の父・ローレンツに先駆けて自宅の庭で犬、狼、ジャッカル、狐、ハイエナと暮らしながら動物を徹底的に観察。
「シートン動物記」「バンビ」といった動物文学を初めて日本に紹介し、フィラリアの治療開発に私財と心血を注いだ、偉大なる奇人の物語。
本書は在野の研究者や作家が多彩に活躍していた時代の記録でもある。
文庫化にあたり、往時の様子を収めた貴重な写真と作家の直筆原稿を収録。
第十二回小学館ノンフィクション大賞受賞作。
解説/村井理子。
感想・レビュー・書評
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犬を飼ったことは無いが(猫は飼ってる)犬の賢さ愛情深さは少しは知ってるつもりだったけれど、狼やハイエナが人に慣れたりこんなにかわいいなんて思いもよらなかった。そもそも彼等のご主人である平岩米吉氏が抜群に面白いのだがご家族もみな器量と愛がデカ過ぎる!
村井理子、高橋源一郎、高野秀行の帯に惹かれて手に取ったのだけれど、とにかく最初のエピソードから引き込まれ驚かされ、一気読みさせられる事間違いなし!写真も楽しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
こんな人がいたのかと驚きながら読み進めた。自宅の庭で犬はもとより、キツネ、オオカミ、ジャッカル、ハイエナなどの動物とともに暮らし、深い愛情を持ってその生態を観察し、研究を続けるとともに、雑誌『動物文学』を立ち上げ、日本に真の意味での動物文学をつくろうと努力を続けた人物。晩年には「犬奇人」と呼ばれていたそうだが、犬の愛好家と言う人は結構いるとしても、普通の常識では考えられないという意味で、「奇人」という言葉に相応しい人だったのだろうと思う。
今でこそ犬の寿命は延びて10年以上生きるのは普通になっているが、平岩米吉の愛犬の多くは数年で亡くなってしまっていた。その大きな原因の一つが、蚊を媒介とする寄生虫フィラリアだった。多くの愛する犬を見送ることとなった米吉の悲しみ、それを詠んだ短歌が何首か収められている。どんなにか辛い別れだっただろう。
一匹くらいの犬ならともかく、何頭ものシェパードに加え馴染みのないオオカミやジャッカルの世話をするのは大変だったろうし、家のドアは傷だらけ、襖、障子は破れ放題という生活に耐えたというのはスゴイこと。もちろん本書の主人公は米吉であるが、その研究を支えた妻、そして長女の献身振りもしっかりと描かれている。
現代では、ペットは家族の一員として大事にされるようになってきた。それもこのような先人の努力があったこそなのかと、本当に頭が下がる思いがした。庭で遊ぶ愛犬たちと米吉ら家族の写った写真や、懐いているオオカミやハイエナと一緒のところ、愛犬との散歩風景などは微笑ましいが、最も愛した愛犬の死に顔のスケッチ、見ていて切なくなる。 -
裕福な家庭に生まれた米吉が動物を愛護して動物文学を手掛けるノンフィクション
それと同じ頃には以前読んだ「アラシ」の主人公は北海道の山奥でとても賢い狼犬と生活していたのを思い出す
自由が丘の裕福な家庭の犬でもアイヌの犬でも主人への忠誠心は同じなんだよな... -
日本の動物愛護と動物文学を支えた、こんな人がいたとは。知らなかった。狼や海外の動物を家で飼育するという、今なら様々な法律で阻まれて無理そうなことをやってのけている。交友関係も多岐にわたる。南方熊楠やまどみちおの名前が突然出てきて面食らった。戦前・戦中・戦後と時代の移り変わりに翻弄されながらも、最終的にはフィラリアのライフサイクルが突き止められ、今の予防方法が確立されたということはもっと知られも良い。研究機関に属さず自身で研究を続けられる人が、かつては存在したという証でもある。現在では非常に稀な存在だと思う。
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いや、こういう振り切った人すごいな。
憧れるんだけど、チキンでできないでいる。 -
まさしく犬の王。
シーザー・ミランに先立つこと70年、本邦にこのような方がおられたとは。
平岩米吉の思想、そしてそれを基底に提唱される具体的な啓蒙の種々を読んでいると、それらが発せられた時代が昭和初期でありあるいは戦後まもなくであった、という事実を思わず忘れてしまう。
それほどまでに、洗練されているし、まったく色褪せていない。
特に"犬畜生"などと呼んであからさまに犬猫を下等なものと見なすことが当たり前だった当時の日本において、彼らに対し過剰とも言える愛情を注ぎ、観察を通じた科学的な知見を披歴した上で、彼らを尊重すべしと訴える存在の特異さは際立ったことだろう。
アニマルウェルフェアの精神性を日本で顕現した魁でもあるのではないか。
2024年の現在ですら、犬や猫の習性を知らず(学ぼうとせず)、誤った方法で飼養している飼い主は少なくないと見受けられるのは実に嘆かわしいこと…。
冒頭で半ば冗談混じりでシーザー・ミランになぞらえたが、犬たちの王として群れの中で君臨する理屈を超えたカリスマ性に加え、平岩米吉には学者然とした思考力と分析力、そして文筆家としての能力も備わっていた。
「動物文学」の創刊と発行の継続は、そういった平岩米吉の才能と功績を示す代表例かと思う。
当時の文壇における錚々たる面々がヴァリエーション豊かな原稿を寄せ、時にUMA的な存在にも言及して真面目に論を戦わせていた総合誌、私もリアルタイムで購読したかった!
読了した今、なるほど短歌という形態こそが、平岩米吉が目指すところの究極の動物文学なのだということもよく分かった。
アニマルウェルフェア実践の先駆者であると同時に、文字通り世界をリードする動物行動学者でもあり、さらには流麗な歌も詠みこなす文人であったとは、アンリ・ファーブルとコンラート・ローレンツも裸足で逃げ出す超人ぶりではないか。
おっと、フィラリア撲滅に心血を注いだ愛犬家としての顔もあった。
今、当たり前のように私たちは月に1度、犬に薬を飲ませることでほぼ完璧にフィラリアを予防することができているが、ここに至るまでに平岩米吉が大きな役割を果たしていたということを知った。
これほどのスーパーマンである平岩米吉を、多面的に見事に描ききった著者、片野ゆか氏の力量も素晴らしい。
平岩米吉の家族や近しい人たちから聞き取ったエピソード類はもちろんのこと、例えばオオカミに関する論考など、対象の周辺にある事柄を必要に応じて詳述することで、生身の人間としての平岩米吉を各読者が感じやすいように工夫が凝らされている。
すべてを読み終わった後、家族として一緒に暮らす我が犬への愛が深まっていることを感じた。 -
詳細はあとりえ「パ・そ・ぼ」の本棚とノートをご覧ください
→ https://pasobo2010.blog.fc2.com/blog-entry-2086.html
とにかく 平岩のイヌをはじめとした生き物への 愛と探究心の深さに、圧倒されました。
戦前からのいろんなことを知ることもでき、面白い本です。
片野ゆかの作品





