北岳山小屋物語

著者 :
  • 山と渓谷社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635156066

感想・レビュー・書評

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  • 雄大な自然の中で……

    北岳山小屋物語
    2020.02発行。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。
    白根御池小屋。広河原山荘。北岳山荘。北岳肩の小屋。両俣小屋。両俣小屋取材記-2019年7月の短編6話。

    「南アルプス山岳救助隊K-9」の著者・樋口明雄さんが、本の舞台となる北岳の山小屋を取材した物語です。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    この本を手に取ったのは、表紙の写真に惹かれたことと(笑)
    「南アルプス山岳救助隊K-9」を読んでその舞台となる北岳を見たいという気持ちが勝りました。

    若い頃には、よく山に登りました。山小屋にもお世話になりました。
    その山小屋で色んな問題を抱えていることを知り、ビックリするやら、嘆くやら……時代が変わったのだと思わざるおえません。いまでも、山小屋でお世話になって良かったし、働いている人たちに親近感を感じています。
    2021.05.30読了

  • 北岳に行きたい理由が2つありました。1つは昨年叶ったんですが北岳にしか咲かないとゆう希少種の「キタダケソウ」をみるため日帰りピストンしました。花の時期が早いので6月の開山と同時に行ってきましたがもう終盤を迎えてましたが見れてラッキーでした。下界は晴れていたのですが2500m以上はガスに覆われ10m位の視界のなか、強風にミゾレまじりの雨が冷たくって、煽られながらも凛として咲く姿の可愛いらしい花でした。今度行くときは晴天の眺望のよいときに行きたいと思いました。
    そして2つ目は、北岳~間ノ岳の「天空の縦走路」を歩きたい。3000mの稜線歩きが楽しめる日本最高地の縦走路があるのです。ここを歩いてみたいと長年の憧れだけどタイミングがあわず叶えられずにいます。花の季節には数々の高山植物が咲き誇り、雄大な眺望は近景に甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、鳳凰三山、南ア南部の山々に、遠方は中アに北アも、勿論富士山もみえる。ここも日帰りで考えているのですが私の脚で10~12時間の行程になるのでなかなか実行できずにいるのです。とゆうのは、時間制限があるからなんです。登山口の広河原までは車で行けず芦安より乗合タクシーを利用し5時の始発に乗って広河原着が6時、最終が16時30分なので10時間30分以内にピストンできなければ日帰り無理なんです。
    それに5時の始発に乗るには4時には並んでないとダメだから逆算すると前日の23時には自宅を出発してないと間に合わないんです。
    帰りは無茶疲れて眠くなるのでSAで仮眠をとりながら帰宅すると。日帰りと言えども全行程24時間かかるとゆうタイトスケジュール。長野あたりに移住したいってつくづく考えてしまいます。山小屋利用して1泊2日で考えればわりと実現可能なのですけど。

    前置き長くなりましたが、
    北岳まわりにある5つの山小屋のルポ、ジャケ借りで収穫した本です。
    各山小屋の特徴とか実態が書かれてました。遭難者が出た時の対応とか苦労話、マナーの悪い客のこと等々
    広河原エリアは南アの玄関口として上高地や八ヶ岳のような観光リゾート化を推進してるのだから、客の不満話よりもサービスの向上にむけて努力するのが肝心に思えるんです。コロナの影響もあったので山小屋の経営が厳しいのは充分解ってますが、宿泊料金だって1泊12000円と値上りましたし高額なわりに食事はチープだし、売店で飲み物買うにしても1本500円とか、トイレも、水も有料なのが現状なんです。時代に迎合するのでもなく、ただそこに凛として存在しているような小屋があれば嬉しく思います。キタダケソウのように・・・

    その中で行ってみたいと思った山小屋がありました。両俣小屋です。メインルートから大きく外れてた仙丈ヶ岳との谷間にある小さな小屋で山慣れた人じゃないと行けないような所にあります。北岳登山のマイナールートである左俣ルートが荒廃して通行止になっているので利用する登山者は減ってきてるとのことなのですが小屋番は星美知子さん、女性の方です。それに猫2匹だとか。30人程収容できる広さで夏場の繁忙期にはバイトも雇うようですが基本1人できりもりしてるとか。それと経歴に興味津々。文学部を中退し出版業界で働いたことから、後に桂木優のペンネームで『41人の嵐』とゆうノンフィクションを執筆されたことがあるとか。これは1度読まないといけない。彼女1950年生れなのでなんと今年で73歳。
    ネットで両俣小屋を検索してみたら昨年11月に更新されたページがあり去年までは営業されてた様子でまた来シーズン元気でお会いしましょうと張紙されてるフォトがありました。
    この山小屋は、星さんが現役のうちに是非とも訪れてみたく思いました。

  • 山小屋の管理人さんの話。人を育てること、様々な人との連携、食事の準備、掃除、山開きや荷揚げの大変さ、事故、マナー、山の素晴らしさ。興味深く読んだ。

  • 「南アルプス山岳救助隊K-9」シリーズの著者が、南アルプスの小屋の管理人たちへのインタビューをまとめたノンフィクション。
    それぞれの管理人たちの人生や仕事に対する姿勢の違いにより、各小屋にも特徴があり、思わず訪ねてみたくなる魅力にあふれている。
    広池御池小屋は夫婦で経営。
    管理人は規律を重んじ、「山の仕事は人を鍛える」との信念で、スタッフに対している。極限状況の中で、ひとつひとつの困難を乗り越えて彼らの顔つきが変わり、ひとりひとりの若者が磨かれてゆくことに喜びを感じている。
    対して、広河原山荘では、そのスタッフは自由が基本だそうだ。
    祖父と父に続き三代目の管理人は、高校時代はレスリングでならし、テコンドーの道場にも通った猛者。調理師の学校にも通った経験から、山荘での食事に一家言あり、丁寧に出汁を取り、味に徹底的にこだわっているとか。美味しいメニューを食べてみたくなる。
    北岳山荘は、あの黒川紀章設計事務所が設計を請け負ったとか。
    ここの管理人もユニーク。若いころ、糸魚川から北アルプスを縦走し、南アルプスを経由し富士山へ登り、その山頂から見えた伊豆の島々へ渡り太平洋を航海し、旅を終えた!?
    傷病者の搬送の時、途中に休憩場所となる中継点が欲しいということでつくられたのが、北岳肩の小屋。
    そこの管理人も三代目。小屋から山頂まで走って往復する山頂ダッシュが13分!往復コースタイムが70分のところを!
    冬には12mもの積雪があるというこの小屋。ここからは八ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、中央アルプスに北アルプス、そして富士山と、日本を代表する美しい山が、手に取るように眺められるという。何と贅沢なロケーションだろう。
    両股小屋は、「両股のおねえさん」と呼ばれる小屋番(管理人と呼ばれるよりこのほうがふさわしいと)。
    彼女の語る怪異談には、思わずゾクッと。
    個性的な管理人たちを描いたこの本、「山に会いにゆく、それ以上に、この山にいる人々に会いたい」と綴る筆者の思いが込められた、山好きには見逃せない一冊と言っていい。

  • 実際に訪れ、山小屋の主たちと会話をしているような雰囲気を味わうことができ面白かった。
    登山客一人ひとりに楽しく安全に楽しい思い出となる時間を過ごしてほしいと日々過ごしている姿を知ることができた。数々のエピソードを読むことができとても感激した。

  • 山小屋のドタバタを、アルバイトから入って成長してきた本人が描くノンフィクション。遺体の収容の話が苦しい。食事風景だったり、遭難した人を助けたり、山好きなら気持ちを込めて読める。

  • 日本で二番目に高い山、北岳の山小屋にまつわる物語。両俣小屋が特に印象に残ったかなー。今年は北岳企画したものの天気が悪くいけなくて、来年こそ行きたいなぁと思った!

  • 「北岳は人に会いに行く山」。白根御池小屋、広河原山荘、北岳山荘、北岳方の小屋、両俣小屋を取材したノンフィクション。

    富士山に次いで高い山、北岳。この手の本としては珍しく山小屋の主人だったりスタッフが書くのではなく、しっかりプロのライターが各小屋を訪れて取材した内容。
    その分、バイトの子の使い方などビジネス的な内容が充実。閉鎖された環境、限られた食材などを扱いながら、山小屋を営む人々のリアルな日常。

    月刊「山と渓谷」に約2年連載されたもの。

  • 山小屋を管理している人たちの苦労やアルバイトの子たちのマナーなど小屋を運営する人達それぞれ考え方が違う分規律を守って働いてもらっている、だったりゆるかったり、面白く読める。
    料理ができる人は仕事の能率がいいし機転が効くと書いてあり料理するのが嫌いで料理をしてくれる旦那さんを募集している自分にとってはやっぱり気が利かないし、周りの状況を把握して動くことができないのは当たり前なんだと料理の大切さを知る。が、やはりやりたくはない。
    自分では体験できない分野を知ることは楽しいし仕事の大切さや取り組み方、考え方も改める事ができた時間でした。

  • 僕のはじめてのアルバイトは、キャンプ場の番人。県民の森キャンプ場にひと夏、4人の大学生が山小屋に泊り込み、子供会や家族や会社のキャンプの世話をした。たいした仕事はなかった。子供たちと沢登したり、カレーを作ったり、スイカ割りをしたり。夜はキャンプファイヤーを準備し『キャンプだホイ』を歌い、踊った。

    がんちゃんと呼ばれる長崎大学の教育学部生は、子供たちから人気あった。いつも、小さな子供たち数名が彼のがっしりした腕にまとわりついていて、歓声をあげていた。高知大のバン君はやたらと日本酒に強く、毎晩異なる酒を持ってきてはうんちくを言いながら酔って、昼頃まで寝ていた。天然パーマ君は、たぶんどこかの大学の工学部だったと思うが、ハンマーと鋸を持って、キャンプ場で何かを作っては壊していた。

    僕は、悶々としていた。本を読んだり、書き物をしたり、バイクに乗ったり、落ち着かなかった。受験が終わり、大学に入り高校時代みたいに部活に一生懸命なることもなく、もどかしい恋もあいまいに消えてゆき、大学の授業にも興味も湧かず…、山の綺麗な空気と透き通る水の中で、ひとり濁ってドツボっていた。

    僕が過ごしたのは、長崎の数百メートルの山だが、『北岳山小屋物語』は、標高3193メートルの南アルプス北岳周辺にある5つの山小屋の物語だ。物語といっても小説ではない。著者が山小屋の番人たちにインタビューして書き起こすノンフィクションである。面白い。

    バイトのひ弱な若者がひと夏で力強く育ってゆく白根御池小屋、親子二代で引き継がれている広河原山荘、診療所の医者達との交流のある北岳山荘、ボランティアの人たちで建てられえた北岳肩の小屋、ユニークな女番人と二匹の猫がいる両俣小屋。

    山小屋を開くためにアルバイトを集める苦労、春に雪をかき分けながら山に登り小屋を開ける準備の大変さ、夏のお客とのトラブル、遭難と救助、ボイラーの故障…、次々と山小屋に難題が迫ってくるが、すぐに助けが来るわけでもなく、自分達だけで解決しなければならない。 平穏な日々は衣食住が繰り返されるだけだが、3000メートルの上での着る、食べる、寝ること自体が命がけである。

    インタビューのテンポが非常にいい。読んでいると実際に山を歩いて、山小屋で番人たちに会い、出された絶品のカレーを食べ、北岳を眺めながらビールを飲みたいとも思わせる。筆者の樋口明雄さんが、自身も山に精通し山岳小説の書き手であるから成立した企画本だと思う。山に登る、イコール、人に会いに行く…という、コンセプトのいい本だ。

    もし、大学生の僕がこの山小屋でアルバイトをしていたら、人生は間違いなく大きく変わっていただろう。そんな思いにさせてくれる一冊だった。

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著者プロフィール

1960年山口県生まれ。明治学院大学卒業。雑誌記者を経て、87年に小説家デビュー。2008年『約束の地』で、第27回日本冒険小説協会大賞、第12回大藪春彦賞をダブル受賞。2013年刊行には『ミッドナイト・ラン!』で第2回エキナカ大賞を受賞。山岳救助犬の活躍を描く「南アルプス山岳救助隊K-9」シリーズの他、『狼は瞑らない』『光の山脈』『酔いどれ犬』『還らざる聖地』、エッセイ『北岳山小屋物語』『田舎暮らし毒本』などの著作がある。有害鳥獣対策犬ハンドラー資格取得。山梨県自然監視員。

「2022年 『南アルプス山岳救助隊K-9 それぞれの山』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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