- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784635320115
作品紹介・あらすじ
登山家たちが実話として綴った異界の「山」の物語。斯界の雄・東雅夫の選による未曾有のアンソロジー。
感想・レビュー・書評
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怪談実話のアンソロジーだが、出てくるのは幽霊だけではなく、雪女や山男、ツチノコ、そして最後は読み比べとなった〇〇と、なかなかバラエティーに富んだ顔ぶれで、ジャンルも物語からエッセイ、ルポまでさまざまだった。いろいろな味を楽しめるという点ではいいが、そのぶん少々読みにくいというか、なかなか1つ1つに思うように浸れないというか……興味深い内容ながら頭に入りにくいという微妙な感じだった。
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山には怪異がいる。
それは間違いない。
ひとえに俺もその怪異に山で出会っているからだ。
本作はアルピニズムの概念が日本に持ち込まれてから、古くから山にまつわる怪異奇譚集だ。
これは自然的というより、人が介在する怪異の話が多い。
これ読んでると、昭和前期は冒険的登山で死ぬ人多いなぁと思う。
今だったら炎上案件ばかりだと思った。 -
山で実際にあった怪談をまとめたアンソロジー本。
山の話なので登山用語も多く、登山未経験者の私には分からないところも多々あり読みづらい話もあった。
話自体は実話と銘打っているだけあり、エッセイのような体験談が多い。
そのため、恐怖というより薄気味悪さがある。
ホラー小説のような恐怖を求めている人には物足りないかもしれない。
個人的には炭焼きの話が好みであった。 -
明治、大正、昭和あたりの怪談実話アンソロジー
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この世の中には「不思議」なことはある。だから、それには謙虚に耳を傾けていきたいと思っている。この本の最初の方に「深田久彌」の名前、そして彼が書いた「山の怪談」という話があった。それを読んで、その「体験談」にゾッとしたし、実際にあったんだろうと思う。不思議やことや、怖いことがたくさんあった本だった。
〈本から〉
〈幻の山行〉 西の喜与衛
略
(そんなことはある筈がない)という人がいるかも知れない。しかし私はその後、山小屋で宴会が終わって静寂さをとり戻した深夜、前年なくなった父親に会っている。ノーベル物理学賞受賞の湯川博士は「科学で分かっているのは全体の2パーセントに過ぎない、知らざれる世界こそ現実である」ーと言っておられた。
説明できないものについて、私たちは、しばしば「幻」ということにしてしまっている。そんな「幻の山行」であった。 -
実話という表記にあまりいい読後感を持っていないので、どーかなーと思っていたら、今様の読者投稿という体ではなく、明治から昭和にかけてのアンソロジーだった。そういやサブタイトルに『~傑作選』ってあるな。
爆発的ヒットで知られる『山怪』を読んだ時にも感じたけれど、山の話は多分に主観的で、基本的に話者がイコール体験者という話も少なくなく、結果として、怖くない。少なくとも、山を体験したことのない私は。
とは言え、現象やキャラクターには興味津々なので、いわゆる『怪談実話』のなかでは読みごたえがあった。 -
柳田國男翁始め、岡本綺堂、夢枕獏、深田久彌、西丸震哉といった、その筋以外でも広く知られたビッグネームが並ぶ小品集。
収められている多くはズバリ分かりやすい怪談というよりも、山という異界を舞台にしたほんのり不思議で薄ら寂しい、そんな話になっている。
そしてインターネットやGPSなどに代表されるテクノロジーが急速に普及した現在とはまた趣を異にする、いかにも昭和という、特有のあの匂いに満ちた各掌編が醸し出す空気がしっくり漂い過ぎている。
巻末の編者解説でも触れられているが、「深夜の客」の類型は私もこれまでに何度か目にしたことがあり、やはり山の怪異話の古典、クラシックなんだなあと腑に落ちたりもした。
家の近所のちょっとした山でも、少し日が暮れかかってくるだけで訳もなく怖いもんなあ、何かが起きても決しておかしくない時空なのだろう、山は。 -
本書中の下平廣惠「山で見る幻影」其の四・火の幻影を読んでいて、wikiで読んだ「八甲田雪中行軍遭難事件」で知った矛盾脱衣の例がこれだなと思い出した。
それと、書中のどの話か忘れたが山が光るような話があったが、自分が中学生の頃理科の教師から山体が光る話を聞いたことがある。その時の説明ではダムの水の重さで沈んだ地面が元に戻る時の摩擦で電気が起きて山が光るのだというようなことだったと思う。本の中の話にはダムの存在は出てこないが思い出したので書いておく。
また、この本でツチノコが案外剣呑な生き物であることを知った。 -
昨年刊行の本の割に明治から戦前の話も多く少し思っていたものと違いました。