- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784635810104
作品紹介・あらすじ
「薬草」をキーワードにして、ヨーロッパ文化の深層に迫る知的冒険。ロングセラー『魔女の薬草箱』著者による待望の姉妹本。
感想・レビュー・書評
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「魔女の薬草箱」の姉妹編。こちらは薬草にまつわる話がメインになっていて、画像とイラストが豊富な点も同じ。
グリム童話からドイツの伝説、更に古い時代として聖書に登場する植物についても語っている。
かつてドキドキしながら読んだ(はずの)「雅歌」にまで触れていて、前述した「魔女の・・」と同様に大変読みやすく分かりやすい。
ブックトークに使用するべく実はこちらを先に読んでしまったのだが、レビューの順番としては妹が後ということで。
タイトルになっている「不思議な」というのは、案外身近で良く知られている植物たちが次々に登場するため、その意外性について言ったものだろう。
「え?あの花や木にそんな力があったの?」という驚きとともに読み進むことになる。
ただ「ニーベルンゲンの歌」に出てくる菩提樹だけは身近とは言いがたく、隣町の廃寺に生息していたことを思い出して、わざわざ見に行ったりもした。
菩提樹と聞くと釈迦(これはインドボダイジュ)とシューベルトの楽曲(これはセイヨウシナノキ)くらいしか連想しなかったが、これからはジークフリートの数奇な人生も思い出すことになりそう。
意外性でトップだったのは「白雪姫」の「リンゴ」と「ホレおばさん」の存在。
ドイツの人々にとってはサクランボのならない日本の桜は「見せかけの桜」であるらしい。
花より団子を取る国民性なのか、街路樹もリンゴの樹だというから面白い。
「ホレおばさん」もまた、童話の登場人物ではなく冥界に住む死の女神という伝説の領域にある存在らしい。
歴史を知って胸がふさがれる思いになったのは「ヴァルプルギスの夜」の話。
キリスト教の罪はまことに重いが、地元民は今も4月30日にはお祭りを楽しんでいるらしいからホッとひと安心だ。この辺りは日本人と相通じるものがあるなぁ。
「最後の晩餐」の記述については、「久オ・ヴァディス」という映画の中で砂の上に魚の絵を描く場面があるわけが、ようやくここで理解できた。何十年ぶりに繋がったことになるだろう・(笑)
ラスト18ページ分では、ドイツの薬草園と魔女迫害の跡地を訪ねている。
心の重い旅だったことだろうが、迫害の跡地に建てられた鎮魂碑でわずかに救われる思いだ。
数々の薬草園も魅力的で、近場だったらどんなにいいだろうと羨ましくもあり。
今では様々なアニメやコミック、童話等のおかげで魔女のイメージも明るくなった。
かつてのような被害者ではなく、「賢い女」として社会で生き続けてくれるようにと願う。 -
ドイツのグリム童話・伝説・キリスト教に関わる植物の話を
メインに、民間伝承とキリスト教の関係、薬草の効用と
時代の変遷を考察した内容。植物については専門家の監修有り。
第一章 グリム童話・・・魔女と薬草
第二章 ドイツの伝説・・・魔女と不思議な植物
第三章 聖書・・・古い時代の植物
[附録]ドイツの薬草園と魔女迫害の跡地を訪ねる
主にドイツにおける伝説や物語と薬草の関係を、検証・考察。
中世の生活や文化、薬草の役割と、情報が多彩です。
それにしてもドイツの森の奥深さよ!
古代からの信仰とキリスト教のせめぎ合い、不幸な魔女たち。
それでも薬草は残り、伝承され、現代ではその効能で見直される。
「いばら姫」のいばら、マンドラコラの真の姿や、没薬、乳香等、
名前だけしか知らなかった植物や薬がわかるのも良かったです。
画像が豊富なのですが、モノクロなのと小さいのが残念です。 -
借りたもの。
同著『魔女の薬草箱』( https://booklog.jp/item/1/4635810089 )の姉妹本。
上書が魔女という存在と“魔女の軟膏”(空を飛ぶための薬)に使われた薬草と成分についての言及だった。
こちらはヨーロッパ――特にドイツ――における、童話や神話・伝説、聖書にでてくる植物について言及。
勿論、そこに魔女――とされてしまった“賢い女”たち――の存在は欠かせない。
同書で指摘されてわかる、彼女たちは魔法を使うのではなく、自然薬学(薬草、毒草)と生活の知恵から英知に富む女性たちだった。
薬草……現地で普通に生えているハーブから、もはや認知度ではダントツである、空想の植物・アウラウネ(マンゴラゴラ)まで。
これら薬草(ハーブ)の科学的な解説よりも、物語(エピソード)が中心。
物語の中でも植物が重要な位置を占める……『ニーベルンゲンの歌』においてボダイジュが英雄と国の運命に関わっているエピソードを読むと、興味深く、想像力を掻き立てられる。植物が人間の運命を左右するということに。
船山信次『〈麻薬〉のすべて』( https://booklog.jp/edit/1/4062880970 )で、‘歴史上、あへんや紅茶のような植物由来製品が一国の運命を左右することがあったことはとても興味深い(p.72)’と言っていたが、伝説の中でもそれが起こっていた。
最終章では、ドイツの薬草園と魔女迫害の跡地を廻る旅。
ヒルデガルドの薬草園についても紹介。
信頼されている修道女だったためだろうか…彼女が魔女とされなくて良かった。(なっていたら人類にとって大きな損失)
迫害の歴史跡地を巡る旅は薬草と関係が無い気もしたが、読んでいると当時の“生活”の一面を見た気がした。
エッシュヴェーゲのカタリーナとその母のエピソードを読むと、それは麦角によるものではないか?と想像してしまう。 -
NDC分類 943
「「薬草」をキーワードにして、ヨーロッパ文化の深層に迫る知的冒険。ロングセラー『魔女の薬草箱』著者による待望の姉妹本。」
目次
第1章 グリム童話―魔女と薬草(「白雪姫」―白雪姫の継母は魔女か セイヨウリンゴ;「ネズの木の話」―甦りの木 セイヨウネズ;「いばら姫」―「賢い女」は魔女か ハマナス/イヌバラ;「六羽の白鳥」―呪いを解く草花 ハナニラ/アストランティア・マヨール;「ラプンツェル」―金髪の娘と魔法使いの女 フェルトザラート;「ホレおばさん」―祝福されたニワトコの木 セイヨウニワトコ)
第2章 ドイツの伝説―魔女と不思議な植物(「ドリュベックの若者」―ヴァルプルギスの夜と薬草 魔女草;「魔女ヴァーテリンデ」―薬草摘みの乙女;「アルラウネ」―フィクションになった植物 マンドラゴラ;「コルヴァイ修道院のユリ」―死とつながる花 ユリ;「ジークフリートの死」―竜の血とボダイジュの葉 セイヨウボダイジュ)
第3章 聖書―古い時代の植物(雅歌―ザクロの片割れのような頬;過越祭―最後の晩餐のメニュー;十分の一税―支払いは薬草で)
附録 ドイツの薬草園と魔女迫害の跡地を訪ねる(薬草園;魔女迫害の跡地)
著者等紹介
西村佑子[ニシムラユウコ]
早稲田大学大学院修士課程修了。青山学院大学や成蹊大学の講師を経て、現在はモアビートプロモーションの「ドイツセミナー」講師。これまでに「グリム童話の魔女たち」展(栃木県いしばし町グリムの館)の企画・監修やドイツ魔女街道ツアーの同行講師、薬草専門誌に連載記事を掲載するなど、ドイツの魔女と薬草にかかわってきた -
・童話はどのように読んでもいい。読み手の数だけ解釈がある。人間の想像力は童話の世界では何の制約もうけずに自由だから。
・ヴェーザー河畔にあるコルヴァイ修道院では修道士の誰かが死ぬことになると、その死の三日前に、聖堂内陣にかけられている青銅の花輪の中のユリがその予告をするという。このユリは花輪の中から抜け出して、死が迫った者の椅子の上に姿を見せる。こうなったら決して死から逃れることはなかった。この不思議は数百年も続いていたという。あるとき、ある若い修道士の椅子にユリが姿を見せたとき、彼はそのユリを年配の修道士の椅子に移し替えた。年配の修道士は己の死を知り、病気になってしまったが、やがて回復した。一方、死を回避しようとした若い修道士は予告通り三日目に急死した。 -
副題にあるように、魔女、グリム童話、伝説、聖書に登場する植物たちがどのように物語中で使われるか、効能を持つかなどをまとめたものである。
第2章のドイツの伝説では、ヴァルプルギスの夜が何度も登場する。
面白いのは、魔女が箒に乗ってやってくる、というのは固定観念で、「桶の船」、バター樽、火搔き棒、ニワトリ、フクロウ、荷車など様々なものに乗って彼女たちは集ったらしい。
いつの間にやら箒一択になってしまっているが、実にユニークな登場方法をしていたかわかる。
物語は人の口を経て、面白く端的な方に向かうものだ。
さて、現代の私達も空を飛びたいならJALやANAの他に「魔女の薬草酒」がある。
割と強めのアルコールで、甘みのあるハルツ名物だということだ。
しかし、アルコール耐性の低い日本人は、空を飛ぶために酒を飲んでも、飛ばないうちに朝を迎えてしまうかも。
第3章の聖書の物語では、ザクロ、没薬(ミルラ)、乳香、ヘンナなどが登場する。
ざくろの話では鬼子母神も登場し、この植物を通して西と東の文化が見えるのが面白い。
巻末にはドイツの薬草園と、魔女迫害跡地が掲載されている。
歴史の負の部分も踏まえ、魔女の故郷をいつか訪ねてみたくなった。 -
グリム童話、ドイツの伝承、聖書などに登場する植物について詳しく解説した本…ですが、いろんな国の民俗学的なエピソードもたっぷり散りばめられていて、読み出したら止まらない。マンドラゴラを抜く方法とか、キリストと魚の関係とか、この手の話が好きな人なら大抵知っている有名なエピソードの、さらにもう一歩奥へ踏み込んだところを語ってくれるので、「上級者」でも満足できる内容です。超オススメ!
あやふやな記憶ですが、パッと散ってしまうのが、サクラの語源だったような。
あやふやな記憶ですが、パッと散ってしまうのが、サクラの語源だったような。
こちらにもコメントをくださって、ありがとうございます!
サクラの語源には諸説あって、どれが本物か分かりにくい...
こちらにもコメントをくださって、ありがとうございます!
サクラの語源には諸説あって、どれが本物か分かりにくいですね。
「パッと散ってしまう」というのも、何だか素敵だし説得力があります。
古代ではサクラというと白い山桜を指したらしく、私としてはそれが嬉しいところ。
ソメイヨシノなどより、ずっと風情がありますものねぇ。
なので毎年サクラの季節は山桜を見に行っておりますよ。