天皇とキリシタン禁制―「キリシタンの世紀」における権力闘争の構図

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784639016762

作品紹介・あらすじ

権力確立期にキリシタンに直面した信長・秀吉・家康らとの国家の主権掌握をめぐる緊張と確執のなかで、神仏の教えの擁護者である天皇・朝廷は、キリシタンを敵対者と位置づけることで自らの立場と権力を明確にしていった。

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  • チェック項目18箇所。統一政権によってキリスト教が禁止され、排除されていったことはよく知られているが、最初に宣教師が追放されたのは、天皇の綸旨によるものである事実は、あまり知られていない。ヤジロウの才知を愛したザビエルは、翌1548年、ヤジロウを日本伝道の役に立つように、ゴアの聖パウロ学院に入学させた、そこで教理教育を受けたヤジロウは、同年五月に受洗してパウロ・デ・サンタ・フェと称した。1550年、鹿児島を発ったザビエル一行は平戸、山口を経て念願の都、京都に入った、ザビエルが在京したのは1551年一月中旬から1月下旬にかけてのことだと推定されている。なぜ、戦後割拠の状況下においてこそ、キリスト教は受容されることができたのだろうか、コーロスは「私たちを受け容れることを望まない領主がいても、ほかに私たちを迎える領主もいるからであります」と記している、実際に九州の戦国大名たちは、貿易やその他の利益を求めて、キリスト教の宣教師たちを優遇した。なぜ天皇が宣教師を京都から追放したのか……内裏(天皇)は、宣教師を「(日本の)神と仏に敵対する教えの宣布者として、宮から追放し」たのであり、そして、帰京を許可するためには「人間を食べぬということを日本の偶像に誓うこと」を要求したとしている。1571年、パードレ・オルガンティーノを京都に迎え、室町幕府滅亡後の1575年には、信長の援助のもとに京都で聖堂の建設が始められ、これが翌年落成し、京都での布教は隆盛期を迎えることになる。後に秀吉は、アジア諸地域に宛てた外交文書のなかで、自らを「日輪の子」と宣言し、太陽神を自負するのである。秀吉……「己れを日本の偶像に祭り上げることで、そうすることによって自らの記憶を永久に地上に留め得る」と考え、「今一人の天照大神になろうとし、まさしくその偶像崇拝の筆頭に置かれることを欲している」(オルガンティーノ)、秀吉はキリシタンの教えがあらゆる偶像崇拝に真っ向から楯突くものであるために、キリシタンを迫害するようになったというのである。秀吉の死は1598年に8月18日だったが年末まで秘密にされた、10月には宣教師側はその情報を知っていた。そもそも伴天連追放令は、決してキリスト教の信仰を禁止する、いわゆる禁教令ではなかった、文字通り宣教師を「神国日本」から追放する法令だった。1600年、関ヶ原の戦い前夜に、オランダ船リーフデ号が豊後臼杵に漂着した。1603年、家康は征夷大将軍に就任して幕府を開く、「イエズス会」では歓迎している、誰も聖教を奉じてはならないという太閤の法律は今も存しているが、公方(家康)は性質が穏やかで、キリシタンに圧迫を加えず、
    法律を守っていれば干渉しないので、我等は大いに注意してはいるが、これまでに比べれば、この教会は今平和と安寧を楽しんでいるということができよう。1606年、京都でのマグダレナの葬儀が、キリシタン式で盛大に執行されたのである、仏僧たちは、この事態を家康に訴える(中略)、その結果、大阪では武士がキリシタンになることを禁止する高札が立てられたのである。開幕当初よりポルトガルやスペインとの貿易のために、貿易の仲介者としてキリスト教宣教師の日本居住を認めるものの、本意としては布教の禁止を志向していた、1611年になると、キリスト教禁止を表明するに至る。キリシタンが多く存在した豊後臼杵では、禁令によってただちに弾圧が開始され、宣教師は追放されている、なかには禁令に従わず、宣教師の滞在を黙認していた地域もあるにはあったが、いずれにせよ、この時点で江戸幕府は、キリスト教の禁止を表明したのであり、豊臣政権がキリスト教の布教を規制したが、信仰を禁止しなかったのに対し、徳川政権は信仰そのものを禁止するに至ったのである。1637年から1638年にかけて闘われた島原・天草一揆の殲滅後は、幕藩制国家の支配の及ぶ全ての地域でキリシタン禁制が実施されていくことになる。キリシタン排除において、日本国の政治体制のなかに天皇が存在するということが、重要な契機となっていることを指摘しているのである。

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