はじめてのアメリカ法

著者 :
  • 有斐閣
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641048041

作品紹介・あらすじ

アメリカ法と比べてみることで日本法を裏側から考えてみよう。アメリカ法っておもしろい。具体的なケースを素材にアメリカ法をより身近に。

感想・レビュー・書評

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  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18350

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB01118426

  • タイトルが「はじめてのアメリカ法」だったので、基本的な法体系が書かれていると思ったら、具体的な判例を基にアメリカの法とはどのようなものであるか、ということを紐解いていくものであった。いきなりの具体例に初めは戸惑ったが、日本の法律の大陸法と、アメリカやイギリスの英米法(判例主義)の違いがわかるにつれ納得がいった。
    日本では法を語ること=規制であるが、アメリカでは自由を語ることである。
    日本とアメリカの法に対する考え方の違いがわかって良かった。

  •  アメリカの裁判で思い浮かぶのがマクドナルドのホットコーヒーでやけどをした女性がマクドナルドを訴えて億単位の賠償金を取ったというニュースだ。これだけが独り歩きしてアメリカの法律はめちゃくちゃだなというイメージに一役買うこととなった。

     しかし、その後の展開があった。著書でも言及されているが、確かに懲罰賠償として270万ドルを認めたが、その後、懲罰賠償を減額して48万ドルにして、しかも裁判官が両者に和解を勧めて、金額は、40万ドルだったと言われているそうだ。

     このヤケドをしたステラ・リーベック(当時79歳)の女性は、一生跡が残るほどの大やけどを負った。著者も述べているが、まねてやけどをして賠償金をせしめようなんて甘いことは考えない方がよいと指摘している。注に書かれているが、弁護士に成功報酬としてわたるのは3分の1で、原告が全部もらえるわけではない。それにすべすべのお肌を傷つけてまで、金を取ろうなんて割の合わないことだ。

     アメリカやイギリスの場合、日本や日本がお手本とした欧州と違って、判例法主義が取られている。著者が指摘しているが、条文よりも先例としての判決が法と考えられているとある。その上、日本と違って契約に厳しい。「まあまあ、そこを何とか」なんて言う一昔前まで通用していた暗黙の了解は通用しない。

     日本と違ってアメリカの場合、個人の名前が法律の教材に実名表記されている。先に挙げたマクドナルドの裁判でも実名が載っていた。そこは考え方の違いか。

     違うと言えば、アメリカの場合、訴訟から始まり和解交渉に入るとある。その理由には、次の2点があると著者は述べている。
     
    1. 訴訟提起では、費用が多くかからない
    2. 訴訟を提起すると開示(Discovery) という手続きに入る。そこで双方が必要な情報を提出する。

    2に関しては、以前は紙でやっていたので大変だったと聞いたことがある。今では、e-discoveryというコンピュータを利用した情報収集をするようになり、人間がやるよりも必要な書類を絞り込んで見つける手間が省けるようになっている。

    具体的な例が載っているので、ただ条文が並んでいるだけの本と違って読みやすいかな。

  • 法律の本なのに教科書的ではなく読み物として完読できてしまう良作。コモンローとエクイティローの変遷や陪審員制度と裁判員制度の違いについて非常にわかりやすく説明されており、理解が深まった。国際契約を見る機会がある人にとってはかなりオススメの一冊。

  • アメリカ法の基礎概念(例えば、consideration)について、丁寧な解説がなされています。また、著名判例についての解説もたいへん分かりやすく書かれています。

  • コモン・ローとは何か、日米の契約に対する考え方の違いなどがわかりやすく解説されている。

  • アメリカ法(英米法)の基本が書いてある本。

    第1部では、契約書、訴訟、判決などの例から、実際にアメリカではどのような契約が順守されるかについて書いてある。第2部では日本ではあまり考えられない法的な考えを紹介している。

    第3部ではアメリカの基本的な法的な考え方裁判について説明し、第4部では憲法について説明している。アメリカの法律のエッセンスを学ぶには良い本ではないでしょうか?

    第1部 アメリカの契約法
     第1回 契約書を読もう
     第2回 WとBの隣人訴訟
     第3回 判決文を読もう
     第4回 約因法理とは何か
     第5回 契約を破る自由

    第2部 アメリカの不法行為法
     第6回 不法行為法と過失責任主義
     第7回 泥棒にも三分の理─故意と過失─
     第8回 2つのマクドナルド事件

    第3部 アメリカの司法制度
     第9回 コモン・ローとエクイティ
     第10回 陪審と裁判員
     第11回 三浦事件と二重の危険
     第12回 アメリカの弁護士・法律家

    第4部 アメリカの憲法
     第13回 アメリカの独立と合衆国憲法
     第14回 違憲審査制
     第15回 実体的デュー・プロセス

  • やさしく、わかりやすいアメリカ法入門。
    簡単に読み切ることができ、米国法の基礎の基礎を知るには最適。
    すくなくとも田中英夫の基本書なんか手をだすよりもまず最初に、こちらを2周したほうが遙かに役に立つと思われる。
    内容に若干の偏りがあり、刑事手続・刑事法・憲法といった公法分野の紙幅が少ないのがちょっと気になる。

  • 初めて英文契約を読んで約因とかwhereas条項とかの意味がよくわからず購入。すごくとっつきやすい解説で英米法のインストラクションとして最適。
    ただ、あくまで入門書なのでこれだけでわかった気になってはいけないって自戒もこめて星4つ。

  • なんとなく興味を持ったので速読。アメリカ法は、イギリス方に起源を持っている。成文法があり、そこから全てを解釈しようとする大陸法に対し、英米法は判決文が根拠になるという。面白いなぁ。

    どうやってそれで回っていくのか不思議だが、どんどん法律を決めていくのにも、順次改訂していくのにも限界があるから、逆に現代においては判決文を法源にするのがむしろ効率的なのかもしれない。

    こういうカルチャーがあるから、(ロー・スクールやメディカル・スクールに比べて価値のないことしかやってないんじゃないのかといわれていた)ビジネススクールでケーススタディが始まったんだろうな。

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著者プロフィール

武蔵野大学法学部特任教授・東京大学名誉教授。1974年東京大学法学部を卒業し、助手となる。1978年学習院大学法学部専任講師、助教授、教授、1992年東京大学大学院法学政治学研究科教授を経て、2017年定年退職し、同年から現職。専門分野は英米法。主著は『超高齢社会の法律、何が問題なのか』(朝日新聞出版・2015年)、『アメリカ高齢者法』(弘文堂・2019年)、『アメリカ家族法』(弘文堂・2021年)、『アメリカ契約法[第三版]』(弘文堂・2022年)など。

「2024年 『しあわせの高齢者学 2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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