米日韓反目を超えた提携

  • 有斐閣
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641076648

作品紹介・あらすじ

日韓両国が強い協調関係を示すことは可能である。それはいつ、どのような理由からか。気鋭の国際政治学者が、歴史・理論・地域研究に基づいて考察する。2000年度大平正芳記念賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  •  久しぶりに再読。本書の核心は擬似同盟論にある。その前提に立ち、日韓共に米国からの「見捨てられ」懸念を抱いた時期(69-71年、75-79年)は安保分野も含む両国関係が良好。デタント下でも韓国のみ「見捨てられ」懸念、日本は却って「巻き込まれ」懸念を抱いた時期(72-74年)は両国関係が悪化、と論じている。確かに前者の時期では沖縄返還後の米軍基地使用に韓国が関心を示したり、カーター政権下での在韓米軍撤退構想に日韓が揃って反対したり、と両国の安保面での利害が重なっていたことが分かる。
     難しいのが80年代の「新冷戦」期だ。米軍のアジアへの関与は強まった一方で、一般には日韓関係は良好だったとされている。しかし筆者は、教科書問題等を挙げ、両国関係は思われているほど良好ではなかったとしている。
     本書の出版は99年。筆者自身末尾で、この理論が適用されるのは冷戦期が相応しいが、冷戦終結後にも全く無意味ではないとしている。現在、本書で論じられたことの何が適用可能で、何がそうでないのか考えてみるが、なかなか難しい。そもそも筆者は、漠然とながら今後の米軍は段階的縮小し、「民主的平和」論とも相まって日韓関係にはやや肯定的見方をしているようである。また、中韓関係への言及がほとんどない。今米軍が縮小されれば日韓関係が好転するかと空想してみるが、少なくとも現在の文在寅政権は、可能な限り「自主国防」を進めていきたいようであり、それが日韓関係強化に繋がるかは分からない。

  •  東アジア国際関係のテキスト(のうちの一冊)として通読。同盟理論を基にした「見捨てられ‐巻き込まれ」という観点からの分析手法は、冷戦期に日韓両国が疑似同盟状態にあったことを明らかにし、また、理論をいかに(分析に)活かせるのかという一つのモデル示す文章としても、非常に参考になるものであった。
     もっとも、内容に関して、日本の戦後政治・外交史の知見からすると、はたしてこうまでスッキリと理論に当てはめることが可能であったろうか――つまり、証明が不十分ではないか、と思われる箇所がまま見られた(この点に関しては、筆者が〝断り〟を入れている)。加えて、往々に中国(あるいは台湾)、北朝鮮といった要因を抜きに論が進められていたため、「冷戦後」の日米韓関係を考えていくためには、分析(視点)に関して物足りなさを感じずにはいられなかった。
     ちなみに、そんな中でも通読することにしたのは「監修が船橋さんで、その船橋さんが絶賛していたから」が、まんざらでもない理由だったりする。

  • 主に日韓関係が軋轢と協力を繰り返してきた歴史を、アメリカという変数を加えることで、「なぜ、常に反目(過去のできごとによる反感)があったにも関わらず協力するのか」と問うてみせる。

    ここでは、感情的な反目が日韓関係に強く作用してきたことを認めながらも「擬似同盟モデル」を使用して日米韓三国における「見捨てられ」の懸念と「巻き込まれ」の懸念を利用してその原因を分析する。

    非常に明快でわかりやすく、納得できる議論である。また、日本と韓国どちらからもある程度の距離を置くことで冷静な議論になっている。そのため反感を感じずに読むことができるのは非常に大きい。

    最後に、統一韓国と日本の関係の予想においても一般的に考えられているのとはまったく違う独自の見解を見せてくれる。
    結局、日韓関係においてもっとも大きな要因の一つとして考えられている「反目」がいかに強かろうと、決してそれは国のあり方、両国間の関係のありかたにおいて決定的な要因ではないと結論付けている。

    順を追って細かく、そして首相や大統領の時代ごとに出来事と分析が書かれているため日韓関係史の研究にも十分に使える。

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