ファシズム (有斐閣選書 71)

山口定

• 有斐閣 (1979年11月30日発売)

感想・レビュー・書評

[estheim93さんの感想 · 2019年7月22日]

　日独伊のファシズム比較を中心として、広くスペイン（フランコ独裁）、やポーランド、ルーマニア、ハンガリー、サラザールの、ポルトガル、バルカン諸国、第二次世界大戦勃発以後のナチ・ドイツの軍事占領下の国々、ノルウェーのくヴィスリング政権のファシズム比較などを、極めて細かい歴史的状況、資本主義、伝統的支配層との「同盟」、「下からの」ファシズムや、日本の「大祭翼賛会」（1940年）で完成されたと著者は主張する「上からの」権威主義的ファシズム等の区別と整理がなされ、世界各国のファシズム政権の相違や概観を吸収するのに好適な、各国ファシズム比較の絶好の概説書。終盤まではかなり多くの項目が列挙され難解、というより情報の洪水に圧倒されるが、終盤はそれらの整理に入りやや読みやすくなる。ファシズム各国成立史と区別、推移の把握に、今日から見れば40年ほども前の著作ながら絶好の概説書として推奨できる書籍です。水晶書籍入り。