教育の社会学 新版- 〈常識〉の問い方,見直し方 (有斐閣アルマ)

  • 有斐閣
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641124004

作品紹介・あらすじ

実態を順序立てて解明する作業と知識編で、問題へのアプローチ法、実態についての知識、理解や考察を深めるための理論、という3つの面から"教育の社会学"を学べるよう工夫しました。10年を経て改めて問い直す、定番テキストの新版。

感想・レビュー・書評

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  •  今日に至るまでの日本社会の変貌や課題を提示してある一冊。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/61460

  •  本書は「教育社会学」の入門書だ。基本的な知識や用語の説明が載っているため、初学者にとっては役立つだろう。「子育て」について書かれた箇所を引用しておく。

    <サラリーマン家庭が増え、子どもの教育が家族の中心的な仕事となったとき、親にとって子どもを育てることの意味は変わったといってもよい。労働力として期待されず、家業を継ぐ者でもない子どもを育てるということは、子どもは育てている間、親に楽しみを与えてくれる存在すなわち消費財になったことを意味する。いいかえると子育ては親に生きがいを与えてくれるものとなった。
     子育てが親の生きがいとなったとき、子どもはよりよく育てられることが必要になる。なぜならば、子どもをうまく育てることによって親の満足も高まり、親の生き方それ自体が肯定されたような感覚が生まれるからである。この意味では、子どもは消費財になったというより、子どもをよりよく育てることが親の「名誉」となって返ってくるという意味で、「名誉財」になったと考えるべきかもしれない[山田, 1997]。>(108頁)

     今日では、「子どものため」というよりも「自分(親)のため」の育児が成されているということだ。現代の親の多くは、子どもの人生を自分の人生と同化させ、子どもを「名誉財」として捉えている。「自立しない子どもが増えた」「現代の子どもは親離れができない」という指摘があるが、実際自立できていないのは子どもではなく親であり、親が「子離れ」できていない、という可能性は十分あり得る。この現象は現代の様々な問題と複雑に絡んでいると評者は考える。
     今日の日本で最も危険な場所はどこか。答えは「家庭」である。日本での殺人事件の半数以上は身内同士によるものだ。この背景にあるのは、子どもに対する親の過度な期待ではないだろうか。熱心に子育てをすることは良いが、子どもの人生を私有化してはならない。
     また、昨今の英語教育熱にも、この問題が絡んでいるのではないだろうか。子育てが過度になりすぎると、子どもを競争の道具にしてしまいかねない。子どもを「名誉財」としている限り、自分の子どもの優秀さが親の満足度を高めるからだ。筆者によると、近年のビジネス系の育児雑誌には、「他の子どもより一歩前に」「競争に勝てるように」「格差社会の勝ち組なるように」など、競争意識を煽るような宣伝が目立つ。企業側は競争主義の子育てニーズの高まりを巧みに利用し、親の感情を刺激しているのではないだろうか。

  • 2100円購入2010-09-27

  • 教育社会学の入門書であり、平易な文章で面白かったです。一方、現代の「教育問題」として色々なところで取り上げられている内容が多いので、今更感のある部分もあります。個人的にはバーンステインのコード理論やブラウンのペアレントクラシーなる概念についての話が面白かったです。更に面白いことに2人はどちらもイギリスの学者であることです。私が思うに、イギリスは歴史的にも階級や階層が比較的はっきりと分かれた社会だったために、教育の分析もし易かったのかなと感じました。逆に日本(特に現代)は、一見すると国民は同質のように映るので難しそうですね。教育の市場化はそういう意味で分析しやすい社会を呼び込むものなのでしょうかね。

    社会学を学ぶ意義の一つは、属する社会における自明性に疑いを持ち、実証的に再考する視点を持つことが出来るということだと思いますが、教育問題についても「何となく」問題を設定し、個人の感覚で「何となく」解を求めてしまうことが多いと思います。「不登校問題」もまさにその典型ですかね。不登校児に対する漠然としたイメージに基づいて、不登校を「問題がある」と前提から決めつけて、実証的な根拠のなく「こうすれば解決するのだ」と思い込みがちです。こうして「何となく」施される教育こそ問題だとも思います。まして、その責任を家庭や個人のものとして一面的に捉えることの危険性を意識するべきでしょう。

    当たり前や何となくから脱し、なるべく科学的な根拠に基づく議論で、教育問題に向き合う必要があるでしょう。本書はその入門として力を貸してくれると思いました。

  • 教育社会学のテキスト

  • クリティカルな視点を持つための入門書のようでした。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。

    通常の配架場所は、3階 請求記号371.3//Ka67

  • 苅谷先生筆頭著者ですから、
    本郷で受けた比較教育社会学の入門的な講義と重複する内容です。
    一度は聞いたことのある話ばかりですが、復習的に。

    教科書として、非常によくできています。
    ただその分固有名詞や人物名が多く出てくる一方で、それぞれの議論についてそこまで詳しく突っ込んだ内容は書かれません。(当然ですが)

    授業の予習として読んでおいて、より詳しい解説(講義者自身からの問いかけ+見方の呈示)に当たっての前提とする、というのが本来の用途なんだろうと思われます。

  • ヤングのメリトクラシー社会と、日本の学歴主義社会の比較。

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著者プロフィール

オックスフォード大学教授

「2023年 『新・教育の社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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