憲法学再入門 (法学教室ライブラリィ)

  • 有斐閣
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641131620

作品紹介・あらすじ

憲法の抽象的な議論や難解な概念に、不安や苦手意識はありませんか?基礎知識・概念に立ち返り、また視点を変えることで、本書から"再入門"をしてみよう。「法学教室」の好評連載を単行本化。補章「憲法判断とは何を判断することなのか?」を新規収録。さらに、それぞれの著者による、お互いのパートについての「解題」も収録。

感想・レビュー・書評

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  • 若手憲法学者お二人が、憲法解釈上の論点を学生向けに解説された本。
    大昔に勉強して以来、憲法はご無沙汰でしたが、いよいよ国会で議論されるやもしれず、憲法学の現在地を知りたくて手に取りました。

    統治機構を木村草太さん、人権を西村裕一さんが執筆。

    木村さんの「憲法の妥当性」。
    憲法の妥当性を支えているのは、人々の意識にすぎない。
    日本国憲法が公布されたとき、人々が「新しい世の中になり、皆この憲法に従おうとするのだろう」と思ったことで、国民の間に「憲法は守るべきもの」という「了解」が成立しただけであって、有力な「8月革命説」は後世の見立てにすぎない。人々の意識が変われば、「憲法変えるべきじゃないか」という議論が出てくる。
    だから、時代が変わっても守るべき憲法的価値は絶対に譲らないという「憲法保障」とその担い手である裁判所のあり方を押さえるべきではないか。

    西村さんの「まなざしとしての憲法学」。
    私たちは、他者のまなざし(「あいつは〇〇な奴だ」という決めつけ)に尊厳を傷つけられる。
    スティグマ(=ステレオタイプ的な偏見)を押し付けられた少数者(外国人や性的少数者等)はマジョリティの道徳感を根拠として、さまざま人格的利益を制約される。
    社会の差別感情を国家が追認する、いわば国家と社会の共犯関係。
    憲法14条が争われたケースでは、具体の権利侵害も問題だけれど、差別を受けて当然という社会の目を国家が裁判という形で認めてしまうことのほうが、より影響が大きい。
    故に憲法14条1項はまず、国家機関を名宛人とし構成員の「平等な尊重と配慮」を求める原則として考えるべきではないか。

    憲法改正というと、9条や地方自治等の改正内容が主な議論になりますが、その前提として私たちの国家や社会のあり様をどう考えるか、少数の人権を守るとはどういうことか、など基礎的な事がらの大切さに気付かせてくれる本でした。

  • 平易な対話形式で憲法の背後にある理論を解説。ある程度の前提知識が無いと理解が難しい箇所が多々あった。
    法律というものが、社会を成り立たせるための「擬制」であることを再認識した。
    憲法が想定している「意志」や、憲法を支える正統性の議論は面白かった。

  • 自分には少し難しかったが、でも面白いとも思えた。もう少し憲法を学んで読み直すとまた理解が深まると思う。

  • ○首都大学東京の准教授で、憲法学者である、木村氏、西村氏による、憲法学の著作。
    ○統治部門を木村氏、人権部門を西村氏が担当。それぞれの作風(文章傾向)は、全く違うが、内容としての憲法論は高度なものが多かった。
    ○木村氏の他の著作を読んでから本書を読んだので、統治論部分については、割と頭に入りやすく感じたが、それでも内容は高度だった。まして、西村氏の人権論部分については、いわゆる“基本書”と同様、バリバリの憲法論・学術論文で、結構手強かった。とはいえ、全体的には、論点や解説が論理的で、きちんと整理されているため、大まかな議論の流れをつかむことはできる。
    ○そもそも、憲法学の専門ではない一般人が読むには高度な内容で、評価を含め、自分の能力が足りなかったのだろう。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:323.14//Ki39

  • ・因果で原因をどこまでさかのぼれるか(刑法では客観的帰属の議論)について、最も強い原因力だと評価できる原因までさかのぼるというルール。将来の善行奨励、悪行防止のために何に結果を帰属させるのが一番効果的かを考える。
    ・意思以外に人格を観念する必要があるのは、過去、現在、未来にわたって継続して同一性を持っている存在を観念せざるを得ないから。
    ・石川健治「憲法の統治機構を考えるときには、執政権というタームで考慮すると良い」
    ・近代国家の本質は主権。
    ・近代国家の統治原理は権力分立で、主権と権力分立は対立する。
    ・樋口陽一は、ナシオン主権論者で、具体的な解釈論、立法論では国民主権という概念はむしろ使用しないほうがいいと言っている。国民投票とか人民のかっさいは結局独裁につながるから。
    ・立法権も、何を律法対象とするか、議題が提示された上で成り立つもの。だから、議題せってい権限こそ非常に重要な権限で、これが執政権。
    ・執政権は内閣か、国会かで論議。
    ・内閣と国民の間に議会がいたが、マスメディアの登場で議会が影薄く。それで、いっそ内閣も国民に選ばれるという高橋和之と、議会を活性化させる方向性の長谷部に分かれる。
    ・木村そうたは、最近の最高裁判決はいわゆる「常識」にかなり依拠しすぎではないかと危惧している。
    ・処分が違憲だなんてありえあい。すべての処分は法律に基づくものであり、その法律の違憲性がとわれるのだから。
    ・芦部の適用違憲第3類型は、処分違憲ではなく処分違法のことだ。

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著者プロフィール

木村草太(きむら・そうた)
1980年神奈川県生まれ。東京大学法学部卒業、同助手を経て、現在、東京都立大学大学院法学政治学研究科法学政治学専攻・法学部教授。専攻は憲法学。著書に『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書)、『憲法の創造力』(NHK出版新書)、『集団的自衛権はなぜ違憲なのか』(晶文社)、『憲法という希望』(講談社現代新書)、『憲法の急所 第2版』(羽鳥書店)、『木村草太の憲法の新手』『木村草太の憲法の新手2』(共に沖縄タイムス社)など。共著に『ほとんど憲法(上下)』(河出書房新社)、『むずかしい天皇制』『子どもの人権をまもるために』(共に晶文社)などがある。

「2022年 『増補版 自衛隊と憲法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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