大人のための社会科 -- 未来を語るために

  • 有斐閣
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本棚登録 : 275
レビュー : 42
  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641149205

作品紹介・あらすじ

気鋭の社会科学者が,日本社会を12のキーワードから解きほぐし,未来への方向性を示す。「反知性主義」が幅をきかせる時代において,私たちがきちんと考え,将来を語り合うための共通の理解,土台となりうる「大人のための教科書」の誕生!

感想・レビュー・書評

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  • 大学教授等の専門家が、現代社会での事柄について、上から目線で述べたもの。本書作成の発想はとても良いと思うが、共著となっているので章によって、質にばらつきがあり、感動的な内容がある一方、読むに堪えない稚拙な部分もある。特に松沢氏の意見は、左翼的で賛同しかねる箇所が多く、また下から目線で本書作成方針に反すると思う。
    「シェアリングが広まれば、人生の生活水準は上がりますが、GDPは上がりません。物を大切に使うことや、再利用に努めることも、やはりGDPを上げません。エコロジカルな暮らし方はGDPの上昇には結びつきにくい傾向があります」p15
    「(勤労)まじめに労働にいそしむことを大切にする考え方は、日本人の伝統的な道徳観や倫理観とかかわていた」p31
    「伝統的な相互扶助(ムラ社会)に代わって国家が教育や社会保障を担い、個人を伝統的な社会的結びつきから解放し、自らの意志で職業を選択することを可能にした」p107
    「「社会問題の個人化」こそが、私たちの問題を、私たちの力で解決する民主主義を困難にしているように思えてなりません」p109
    「(トクヴィル)個人の抽象的「人権」という理念に基づく改革は、むしろ社会の解体をもたらす危険がある」p110

  • 現代社会の抱える課題について、経済学・歴史学・政治学・社会学の視点から考えている作品です。

    経済成長の基準とされる「GDP」について、その数値が示すものの意味と、GDP値を上昇させることの意味。
    また、日本において根深く残る「勤労」感(働かざる者食うべからず、として貧困層をかれらの努力不足と断じる姿勢など)がどのように醸成されてきたのか。
    多数決で物事を決定してゆく民主主義が抱えているシステム的な「課題」や、また「社会福祉」として行われる弱者救済が「人びとのニーズ」に合致しなければならないことなど、「これから先の社会」を考える前提としての「現代の社会」について、どのような仕組みで動いているのか、その歴史的な変遷をも含めて解説されている前半部分はとてもわかりやすく、大きな学びとなりました。

    後半の記述の内、「11章 公」の章は少し議論が抽象的・概念的なものとなり、読みづらい印象ではありました。

    「希望」とは単純な楽観主義ではありませんが、現在の社会状況を正確に把握し、構成員の多くが納得できる形で「より良い社会」へと更新してゆくために何ができるのか、を考えるきっかけを与えてくれる書籍です。

  • 日本の大人として押さえておくべき現代社会のポイント、および、現代社会の形成に至る過程におけるポイントを、非常に平易な言葉でわかりやすく解説した本です。

    自分は、図書館で借りて読んだので、「ぐずぐず言わずに考えろ!」という帯は、このレビューを書く際に、初めて知りました。

    この本の中身は、決して高圧的なものではなく、「みんなで一緒に、これからの社会について考えていこうよ」という雰囲気であり、友好的で紳士的です。

    いわゆる社会科の勉強は、とっても大切なのですが、子供の頃は、知識も経験も少なく、世界も狭いので、ピンとこないことが多かった気がします。
    しかし、大人になってから、社会科の勉強を振り返ると、とっても役立つことが多いように思います。
    この本は、改めて、そのことに気付かせてくれる本だと思います。

  • みんなのために

  • 選挙や多数決、モノを「公正に」分割するにしろ、さまざまな方法がある。タルムード法、比例分配。ボルダルール、などなど。

  • 2017/09/13 初観測

  • 社会
    思索

  • 若い人に贈る読書のすすめ2018

  • 大学の先生が、大人のために、個人主義とかGDPとか多数決とか公正や信頼などについて解説してくれる本。

    多数決は何かを決めるときに必ずしもベストな手段ではないとか、なるほど。

    利己主義は昔からあるけれど、個人主義は比較的新しいもので、国によって発生過程が異なり、「フランス革命に反対する勢力が、社会を解体する良くないものだと否定する文脈から登場し、19世紀半ば以降の英国では、個人の自由な経済活動が『小さな政府』とセットで強調されるようになり、哲学と文学が盛んだったドイツでは多様な個性を重んじる個人主義が重んじられ、アメリカでは他人の力を借りず一人でやりとげる『セルフ・メイド・マン』の概念と結びついた」という話。

    統計的に言えば、一定の社会的属性に入る人たちが例えば失業という共通のピンチに瀕していても、一人ひとりにとっては自分だけの問題のように感じてしまう。このことを、「集団・階層」から「個別の状況や個人史」への「社会学的革命」と呼び、本来は社会的な背景をもっており個人のせいにはできないような事柄までも個人の問題のようになってしまった。なるほどねー。社会問題の個人化ってわけだ。


    という具合に興味深い話が多かったのだけれど、特に、第二章の「勤労」が面白かった。

    岸信介政権の「国民皆保険」と「国民皆年金」は、日米安保が批判されていたので、アメとムチとして導入された→池田勇人内閣では、社会保障はぜいたくだとされ、働く者たちへ減税で報いた→経済成長とともに増える税収→減税、1947年以降国債発行しなくてもよくなった=「小さな政府」となった→貯蓄が増える、財政投融資も増える→さらに成長=「勤労国家」→バブル崩壊→消費低迷、物価下落、貸し渋り→企業は非正規雇用増やす→政府債務悪化、1995年財政危機宣言→政治家は個別の有権者の利益を提供するようになり(中小企業対策、農家の所得補償、地方向け公共投資など)→特定の誰かのための利益の寄せ集めのような財政→ジニ係数が増え、相対的貧困率も高くなった。福祉国家の実態は、経済成長に依存しており、景気が停滞するとすぐに不安定になっていった。なるほどー。

  • 『運動が起き、それが広がるためには、「参加者の間で何らかの価値が共有されていること」そして「その価値が相手にも共有されていると考えていること」が必要』

    相手にも共有されていると考えていること、これが難しい。運動まで行かなくても、仕事の部下と上司の関係でも同じことがいえるんじゃないだろうか。多様な価値があると考えることのできる経験と想像力と余裕が必要だと思う。


    『事実の認識問題は、「出来事レベルでの認識の共有に失敗」と「解釈レベルでの認識の亀裂」がある』

    出来事レベルでの認識の共有は日常でもよくある。それをなくすために丁寧にこまめに伝えようとするとそれはそれでくどい(笑)
    でも、仕事も私生活も、「この微妙な空気…出来事レベルで認識が違ってるな?」と察知できるようになったら強いと思う。


    モヤモヤが解消できる本じゃないし、知識を蓄えられるような本でもないけど、さくっと読めるし良い問題提起もあるのでおすすめっ

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著者プロフィール

慶応義塾大学教授

「2017年 『20年後、子どもたちの貧困問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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