維新支持の分析 ポピュリズムか,有権者の合理性か (単行本)

  • 有斐閣 (2018年12月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784641149274

作品紹介・あらすじ

「大阪維新」の政治について,有権者の維新への支持態度を実証的に分析することによって明らかにする。サーベイ実験などの手法を用いて,維新に扇動された有権者といったポピュリズム論を反証する。また有権者の批判的志向性を見出し,民主主義の可能性を探る。

みんなの感想まとめ

維新の支持がなぜ大阪で強いのかを、サーベイ実験などの実証的手法を用いて分析した本書は、ポピュリズム論に対する批判を通じて有権者の合理性を探求しています。著者は、維新が「大阪」の代表者としての価値を高め...

感想・レビュー・書評

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  • 大阪都構想は、大阪市を特別区に再編し、現在大阪府と大阪市が担っている広域行政を一元化するという地方自治制度の改革です。橋下徹氏が率いる大阪維新の会が主導してきましたが、2015年5月の住民投票において僅差で否決されました。結果を受け橋下氏は政界を引退しました。
    その大阪都構想を巡って再び対立が激化しています。

    本書は、有権者の投票行動、選好調査などを通じて、なぜ維新は大阪で強いのか(他では振るわないのか)、にもかかわらず都構想の住民投票で敗れたのはなぜか、実証的に論証した労作です。

    橋下氏・維新=ポピュリズムという見方を筆者は明確に否定します。党派性とポピュリズム態度に関する調査によれば、維新支持者は、多様性を重視し、大衆意見を重視する人民主義的性格は平均より低いことが示されます。
    また、別の調査で、維新が大阪で強い支持を集める理由も説明します。曰く、地方議員選挙は中選挙区で、有権者は政党でなく議員個人を選択する。結果、どの政党も大阪全体の利益代表者たりえなかったところに、維新が「大阪全体の代表」というラベリングに成功したと。よって、橋下氏個人の支持率は長期的に低下傾向だったにもかかわらず、維新は大阪で圧倒的な強さを持ち、その裏返しとして他で大きな支持を集められない。維新に投票する人たちは、大阪全体の利益代表として「合理的」に維新を選択したと説明されます。
    意外なことですが、その有権者の合理性が都構想の否決につながります。
    都構想の住民投票は、メリット・デメリットを含め判断材料が極めて多く与えられた点で、他の選挙と大きく異なるものでした。有権者は、都構想が大阪市の廃止を意味することをしっかり認識していました。結果、維新支持層の中で大阪市の廃止の是非を合理的に判断した結果、慎重な人たちが賛成から反対に転じたというのです。シルバー民主主義、大阪市内の南北問題など、もっともらしい見方を立証できるデータは存在せず、それらは「維新=ポピュリズム」という見方に固執した幻想にすぎないと批判します。筆者曰く、「大阪の有権者はきわめて合理的な判断をくだした」のだと。

    調査→結果分析→仮設の提出と、維新支持の構造について論を進める筆者の手際は鮮やかです。見立ての部分もかなりありますが、都構想の否決、その後のダブル選挙での圧勝、国政選挙での強さを整合的に説明できる解のように思われます。

    最近、橋下氏以降10年間の大阪の改革を検証した資料に触れる機会がありました。改めて全体を俯瞰すると、よくまあこれだけ多くの分野で多層的な改革が進んだものだと感心します。これまでは橋下氏個人の稀有な才能と、政治不信にあった府民の不満が推進力だと考えていましたが、大阪全体の利益を考える有権者の支持があったことが明確に示されて、腑に落ちた心持です。

    来月には知事・市長ダブル選が実施されるという観測が強まっています。大阪府民・市民は今回、どのような判断を下すのでしょうか。

  • サーベイ実験など実証的手法によって大阪での維新支持を分析する。床屋政談が悪いとも言わないが、議論の土台を提供できるようなデータを揃えるのは大事だし、特に日本においてはこれまで欠けがちなことのようだ。

    しかし、こういったサーベイ実験は例えばバイオで言うところのin vitroみたいなものではと思う。本当に実世界と同じような実験条件が設定できているのか、特に政治みたいにデリケートな代物を扱うときはふつうの心理学以上にむずかしそう。

    第4章の維新支持規定要因の分析から、筆者は維新が「大阪」の代表者だから支持されていると読み解く。しかし違った角度から見れば、政策の違いは議員定数削減を除けばほとんど支持要因になっておらず、橋下徹への支持がもっとも重要な要因となっている、とも読める。これをポピュリスト的支持とラベリングするかどうかは措くとして「これでいいのか?」との思いは強く残る。

    たとえば米国でポピュリストと呼ばれる政治家の代表格はトランプだろうが、彼がコロナワクチンのブースターショットを受けると支持者からブーイングが上がる。やつは裏切り者だと。ある意味、ここにはまず政策(?)の選好があって、それを踏まえたうえで政治家への支持がある。ふつうのプリンシパルーエージェント関係だ。大阪で起こっていることはこれと違う個人崇拝的ななにかなのだろうか(ただし維新支持と橋下支持が必ずしも相関しないとの指摘も本書の別の分析ではなされている)。

    ともあれ特別区設置の住民投票が否決された一事をもってしても、決して盲信的な支持でないことは十分に証明されているとは思うが。とにかく解釈が一筋縄では行かない。

  • あとがきで知ったが、本書の執筆の契機は、善教先生がまだ博士課程の学生だった頃だったらしい。当時躍進を遂げていた維新の会について、世の中では「ポピュリズム政治」という批判がされていたらしく、ひいては大阪府民に対して「扇動されている」といった批判もあったようである。本書はそうした言論に対するアンチテーゼであり、サーベイ実験を通して、維新の会の躍進の理由は、自らの政党ラベルに「大阪」の代表者としての価値を付与することに成功したこと、そして政党ラベルの使い勝手のよさを高めて支持態度と投票行動の結びつきを強めたことを示した。また、大阪都構想の住民投票が、維新支持が強固な大阪市内において反対多数となった原因について、大阪市民の批判的志向性を指摘した。

    本書の意義の1つは、乱雑なポピュリズム論への反論を科学的に示したことである。組織票が少なく浮動票が多い都市において、特に投票率が上がった際、「まさか」の結果が出ることや、未熟な新興政党が躍進して、「ポピュリズム」論や「愚民」批判が絶えることがない。そのような安直な批判に対して、有権者の合理性を信じ、勝利の理由を冷静に分析する本書の姿勢は貴重なものである。
    もう1つ本書が意義深いのは、政治行動論の書籍として、先行研究の紹介や手法の説明がとても丁寧に行われている点である。政治学に興味がある者にとって、本書は政治行動論の具体的な応用例の1つとして通読するにふさわしい。

  • 現代の日本政治(有権者投票行動)分析。
    本書は政治行動論の視点から、有権者が維新の会を支持する理由を実験(アンケート回答)により分析。本書では維新の会支持の理由として
    1維新の会が、「大阪」という地域を代弁する政党としてのラベル定着に成功。
    2一方で大阪市民の合理的判断が、大阪市廃止に対して反対票を投じる結果となった。

  • 「なぜ維新は大阪で支持されているのか」、「なぜ(一度目の)特別区設置住民投票の結果は反対多数となったか」をサーベイ実験等で実証的に解明。
    維新の台頭をポピュリズム論で説明することを批判し、有権者の合理性を主張している。
    鮮やかな分析で、政治学における実験的手法の威力を感じた。流石サントリー学芸賞受賞といえる良作と感じたが、内容に関わるような誤植(例えば、P116で、「公務員数(F5)」とあるが、F5は議員定数であり、公務員数ならF6で、どちらを指しているのかが不明確)が散見されたのは残念だった。

  • ①大阪維新の会がなぜ大阪において支持を得続けているのか、②なぜ特別区設置住民投票で反対多数となったのか、という2つの問いに対して分析され、ポピュリズムと比較しながら解を示している。

  • 東2法経図・6F開架:318.2A/Z3i//K

  • 【書誌情報+内容紹介】
    『維新支持の分析 ――ポピュリズムか,有権者の合理性か』
    著者:善教将大 (関西学院大学 准教授)
    発売日:2018年12月
    版型:A5判 上製 カバー付
    頁数:272
    定価:4,212円(本体 3,900円)
    ISBN:978-4-641-14927-4

    ◆なぜ住民投票の結果は反対多数となったのか
     「大阪維新」の政治について,有権者の維新への支持態度を実証的に分析することによって明らかにする。サーベイ実験などの手法を用いて,維新に扇動された有権者といったポピュリズム論を反証する。また有権者の批判的志向性を見出し,民主主義の可能性を探る。
    http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641149274

    【簡易目次】
    序章 課題としての維新支持研究 

     第1部 問いと仮説
    第1章 維新をめぐる2つの謎 
    第2章 維新政治のパズルを解く 

     第2部 維新支持と投票行動
    第3章 維新支持とポピュリズム 
    第4章 なぜ維新は支持されるのか:維新RFSEによる検証 
    第5章 維新ラベルと投票選択:コンジョイント実験による検証 

     第3部 特別区設置住民投票
    第6章 都構想知識の分析 
    第7章 投票用紙は投票行動を変えるのか:投票用紙フレーミング実験による検証 
    第8章 特別区設置住民投票下の投票行動 
    終章 我々は民主主義を信頼できるのか 

    補論A 批判的志向性は反対を促すか:サーベイ実験による検証 
    補論B 都民ファーストの躍進とポピュリズム 

    索引

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著者プロフィール

関西学院大学教授

「2021年 『大阪の選択』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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