ここから始める政治理論 (有斐閣ストゥディア)

  • 有斐閣
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641150423

作品紹介・あらすじ

具体的な事例を交えながら,読者を政治理論の世界へと導く,新しい入門書。普段の生活で出くわす何気ない疑問を手がかりに,政治理論の考え方をやさしく説いていきます。政治に興味のない人も,より深く政治を学びたい人も,まずは「ここ」から始めてみよう。

感想・レビュー・書評

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  • 非常に良い教科書だと思う。学部生のときに読んでおきたかった。規範的政治学としてのリベラリズム、分配的正義、グローバル正義から、政治理論としての民主主義、フェミニズム、ナショナリズムまで、議論の軸をさだめで説明している。特にフェミニズムの章は、実証分析で仮説を立てるにおいて考えさせられた。〜することが○○を担当する女性を増やすか、といった仮説は多いが、それは男性側のルールに従ったものでしかない。
    個人的に一番面白かったのはグローバリゼーションの章で、民主主義と国民国家、グローバル化のうち我々は2つしか組み合わせることができないというトリレンマは目からウロコだった。グローバル化と国民国家の選択はTPPなどの形で実現している点で、現実的である。民主主義と国民国家の選択は移民排斥を訴える右派の台頭という形で現れている。本書ではグローバル化と民主主義国の選択を詳しく見ていくが、その際に政治空間として国民国家を基礎とするか、そして決定は拘束的か非制度的かという2軸から論が展開される。

  • 教科書としてはベストな気がします.

    学問として盛況なのか、以前読んだテキストより議論の整理の仕方等諸々の変化を感じ取れて、いい感じに知識のアップデートができました.

    よくもこれだけの内容をこの薄さでまとめたもんだと思います.記述のメリハリがよくて、特に新しいと感じた箇所では丁寧な叙述がなされます.

    この分野で手元に置いておきたい1冊です.

  • 政治理論の大学生向けに書かれた教科書である。どの項目についても、最近の社会的な問題取り上げ、そこからどんな理論が展開されているかということを、必要最小限のエッセンスに絞って解説・紹介されていて、たいへんにわかりやすい。こと大学生に限らず、政治に関心がある人はぜひ手に取って読まれることをお勧めする。

  • タイトル通り、政治理論の入門書です。
    政治理論とはなにかというところから始まり、政治、リベラリズム、分配的正義論などなど、さまざまなトピックについての考察がまとめられています。

    自分は政治についての知識が全然ないので読んでみましたが、現在の世の中について考える上で参考になる考察が多かったです。
    これだけですべてを網羅されているというわけではないですが、目次を見て気になる内容だと思う人には向いてると思います。

    一方で、入門書とはいっても言葉の選択が難しいものが多い印象です。
    もう少し平易な文章にできたのでは、というところが残念です。

  • 311||Ta

  • 政治理論とは、政治学における、現実に生じた政治現象を研究する経験的分析とは別の、規範的な問題を考える下位分野であり、政治理論においては、
    ①あるべき社会・政治について考えること(規範的政治哲学)
    ②政治とは何かについて考えること(政治の政治理論)
    の2つがあるが、この二つはしばしば切り離すことができず、両者について考えることも政治理論の課題になる。

    ミルによれば、政府が市民的自由を制約してよい場合は、それが他人に危害を加える場合のみ。
    政府の徹底的な中立を要求する「リバタリアン」、自立といった個人的価値に関して政府が介入することを認める(選択の自由に介入するのは認めない)「完成主義的リベラル」、選択される対象の価値にまで踏み込み、善い生き方を説く「コミュニタリアン」などがある。

    ロールズの格差原理→持てるものから持たざる者への再分配を支持するが、その理由は「功績」(各人が受け取る取り分は、家柄、才能など、本人の選択の結果ではない)と、「正統な予期」(社会においては、人は孤立してはやっていけないため、自分は他者を前提に成り立っていると考えれば、持たざる者に再分配するべき)が挙げられる。

    民主主義には多数決を中心としないものもあり、代表的なものは熟議民主主義と闘技民主主義
    熟議:話し合いの中で各自の意見が変容することを重視するもので、理由の検討のプロセスである。しかし、合意志向(合意とはその外殻にある合意しえなかった部分を排除すること)への批判と、感情を無視することが批判される。
    闘技:互いに経緯を払った対立・競争関係を重視、政治は敵対性のあるものだという認識。しかし、闘技の成立をどのように説明するかが難問。

    私とは:抽象的個人観(個人が社会に先立っており、社会とは個人の集合体とする考え)、個性としての個人観(各自のアイデンティティを重視する考え)、規律化した個人観(個人は社会からの影響を受けて個性が形成されるという考え)

    フェミニズムは、「わたし」と「政治」との関係について最も真剣に考えてきた思想の一つ。
    近代の政治理論において、
    国家=政治=公的領域であり、市場=経済=私的領域であった。しかし、ここに女性の存在は無く、女性は男性よりも劣った存在であり、家庭内にしか居場所がなかった。
    それは、政治の場であれ経済の場であれ、女性が男性と対等に活動することを「不自然」とみなす考え方を生んだ。
    また、フェミニズムは政治+経済=公的領域であり、家族=私的領域とし、女性が公的領域において適切に評価されることが難しいというフェミ流公私二元論を説いた。
    さらにここから発展し「個人的なことは政治的である」という言葉が生まれる。これは、政治とは何かという政治の定義まで遡って考え直し、男女関係や家族の中にも政治を見出した。(何が公的で何が私的なのかは、そもそも自然ではなく、国家・政治によって公的に形成される家族や婚姻にかかわる法によって規定されている)

    これに対する反応
    ①政治理論は「自由な個人」や「自律的な個人」を対象としているが、女性が権利的に十分な自由を保障されていないのであれば、想定すべき対象を代えたほうが良い
    ②家庭=政治=暴力=NOとするのではなく、政治が上手く行われていない状況を把握するべきである

  • 21世紀に入ってからの政治理論の展開を、丁寧な参考文献つきでコンパクトにフォローしている入門書。シティズンシップ論、公共性、多文化主義など、比較的新しい概念を他の概念と結びつけた上で簡潔に説明している。リベラル―コミュニタリアン論争を、広いパースペクティブで語る手法も、概念間および概念とリアルの有機的な結びつきをうまく説明するものである。

  • 東2法経図・開架 311A/Ta82k//K

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著者プロフィール

名古屋大学大学院法学研究科教授

「2023年 『法と哲学 第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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