本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (420ページ) / ISBN・EAN: 9784641164406
作品紹介・あらすじ
三十年の超長期にわたった大規模新エネルギー開発,サンシャイン計画。さまざまなプレイヤーの思惑が絡み合った,産官学連携による技術研究開発計画の歴史を,複数の理論的枠組みで描き出し,現象の多様な側面を明らかにする。経営史と組織論を架橋する力作。
感想・レビュー・書評
-
■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
【書籍】
https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001057560
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
太陽エネルギーの活用による石油代替を目指したナショナルプロジェクト「サンシャイン計画」の推移を通して、多数のアクターが相互作用しながら取り組んでいく「計画」、「プロジェクト」がどのような要素によって動いていくのかを分析した本。
特に、G.アリソンとP.ゼリコウがキューバ危機を分析した手法である、「合理モデル」、「自然体系モデル」、「社会構築モデル」の3つのモデルによって同じプロジェクトの分析を行うことにより、一面的な価値基準やモデルでは見えてこない理解にたどりつくことができる点が本書の非常に興味深い点だった。
合理モデルだけでは、周辺環境の変化により組織や計画の意義そのものの前提が崩れた時に起こる変化を記述できない。計画を担う主体である組織は、往々にして新しい環境での生存意義を見出してその役割を変化させながら生き延びていくという動きを見せるからである。そこで、自然体系モデルの分析が必要となる。
自然体系モデルによって、一度組織が作り上げられると、外部環境が変わってもその組織を解散するよりもそれを生かす形でボトムアップで新しい計画が創発してくるプロセスが明らかになってくる。
しかし、自然体系モデルでも、組織や計画全体を1つの有機的な統合体とみなしている点では、合理モデルと同じような課題がある。
そのため、計画に参画する1つ1つの主体をアクターとして捉えなおし、個々のアクターがどのような動機を持ってそのプロジェクトに参画し、そこから何を得ようとしているのかを分析する「社会構築モデル」の分析の視点が必要になる。
これらの3つの視点を常に複眼的に持っておきながら複雑なプロジェクトをマネジメントいていくことが、重要である。
また、そのような分析の枠組み以外に、計画自体の変遷も、日本の産業史を考える上で非常に興味深かった。旧通産省が主導しながらも、各メーカーがそれぞれの思惑と戦略を持ちながらこのプロジェクトに関与していき、それがその後の各メーカーの特徴につながっていったということが、よく分かった。
著者プロフィール
島本実の作品
本棚登録 :
感想 :
