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Amazon.co.jp ・本 (430ページ) / ISBN・EAN: 9784641165120
作品紹介・あらすじ
第一線の研究者が,重要な研究をバランスよく紹介し,分析手法について丁寧に解説したうえで,まだ明らかになっていない問題を提示し,課題解決のための政策対応を模索する。働くことの未来を考えるためのヒントに満ちた一冊。
感想・レビュー・書評
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編著者の川口大司は、高名な労働経済学者であり、本書は「労働経済学が各種の問題をどのように分析しどこまで解明したか、そして、残る研究課題は何かを概観するハンドブック」である。多岐に渡るテーマを、これも非常に高名な研究者の方たちが執筆されている。
大学院のゼミで使っている「どうする日本の労働政策」の中の「第12章 地方の若者の仕事に未来はあるのか」についての宿題レポートを書くために、必要があり、「第4章 地域経済が抱える課題と労働市場」を読んだ。
最近は、「東京一極集中の是正」が国の政策課題としてあげられることが多い。その背景には、東京に若年人口が集中し続けることで、地方の市町村が消滅に瀕するだけではなく、都市部への若年流入が少子化をもたらして日本の人口が減少していくという危機感があると言われている。そのため、第2次安倍政権以降、「地方創生」のかけ声のもと、実際に政策として取り組まれている。
本章では、地域の雇用・労働市場に関しての、主だった研究を紹介している。研究によって、例えば以下のような知見が得られている。
■都道府県間に賃金格差があるが、その要因を分析すると、多い順番に①学歴構成格差②不明な要因による格差③企業規模格差④産業構成格差⑤物価水準格差が寄与している。意外と年齢構成格差や、雇用形態(正規・非正規)格差は賃金格差にほとんど影響していない。
■学歴を人的資本の水準と捉える場合には、人的資本の高い人々が都市部に集中していることになる。これは、経済資源やの集中している都市部で大卒者にとって魅力的な仕事が集中しているということと関係しているように思われる(都市部に大卒者等が多いから給料が高いというよりも、大卒者にとって魅力的な給料の高い仕事が都市部に多い)。
■都道府県間の賃金格差と就業機会格差は全体的に縮小している。ただし、東京都と他の道府県との間の格差は広がっている(東京は特別な地域。東京一極集中のひとつのあらわれ)。
さて、「宿題」との関係である。
■「地方の若者の仕事に未来はあるのか」という標題は、反語的に「未来の見通しは厳しい」ということを、暗に示唆しているが、実は、都道府県間の賃金格差と就業機会格差は全体的に縮小しており、そういった事実関係を前提にすると、実は少々奇妙な標題でもある(そもそも問題として成立しているのかどうか)。
■「日本の労働市場」にも書かれているが、「地域の雇用・労働市場」の研究は、これまで、せいぜいが都道府県単位のデータをもとにしたものである。しかし、実態をみると、都道府県の中の都市によって、実態は大きく異なる。例えば、北海道で、札幌市と夕張市を思い起こしていただけると、その「雇用・労働市場」の実態が大きく異なることは実感として分かってもらえると思う。従って、「地方の若者の仕事に未来はあるのか」という標題の意味合いは、札幌市の若者と、夕張市の若者にとって、大きく異なるはずであり、一律に議論できることではないはずだ。
■「地方の若者の仕事に未来はあるのか」での問題提起は、地方の若者を取り巻く雇用状況は、①自営業の減少②産業のサービス化③雇用の非正規化に伴い、賃金の低下をはじめとした「雇用の質」の悪化が起こっている、というものであった。ところが、実際には、都道府県間での賃金格差と就業機会格差は全体的に縮小していること、また、格差に対して雇用形態はほとんど影響していないことが、実証的に確認されている。もともとの問題提起は、データの裏付けのないものだった可能性がある。
このようなことについての理解が深まった。
他にも、まだ調べてみたいこと、読んでみたい文献がある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
導入としての研究紹介。
【書誌情報】
『日本の労働市場 -- 経済学者の視点』
川口大司 (東京大学教授)/編
2017年11月発売
A5判並製カバー付, 430ページ
定価 3,960円(本体 3,600円)
ISBN 978-4-641-16512-0
〈http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641165120〉
【簡易目次】
序章 社会経済環境の変化と今後の労働市場の課題(川口大司)
第1部 労働市場と技能形成
第1章 日本的人事の変容と内部労働市場(大湾秀雄・佐藤香織)
第2章 労働契約・雇用管理の多様化(玄田有史)
第3章 人的資本と教育政策(佐野晋平)
第2部 労働市場における課題と政策対応
第4章 地域経済が抱える課題と労働市場(太田聰一)
第5章 高齢者雇用の現状と政策課題(近藤絢子)
第6章 女性活躍が進まない原因(原ひろみ)
第7章 移民・外国人労働者のインパクト(神林龍・橋本由紀)
第8章 障がい者雇用を取り巻く現状と課題(坂本徳仁・森悠子)
第9章 失業保険政策(酒井 正)
第10章 貧困問題と生活保護政策(勇上和史・田中喜行・森本敦志)
第3部 労働経済分析のフロンティア
第11章 エビデンス・ベースの労働政策のための計量経済学(小原美紀)
第12章 労働経済理論(川田恵介)
第13章 労働経済学における実験的手法(佐々木勝・森知晴)
第14章 労働経済学における行動経済学的アプローチ(大竹文雄)
終章 社会の課題に労働経済学はどのように応えるのか?(川口大司) -
東2法経図・開架 366.21A/Ka92n//K
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