先義後利の経営 渋沢栄一が求めた経済士道 (単行本)

  • 有斐閣 (2024年7月31日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (378ページ) / ISBN・EAN: 9784641166332

作品紹介・あらすじ

日本資本主義の父と言われる渋沢栄一は何を考え何を求めていたのか? 渋沢の「道徳経済合一説」の真意を諸資料から丁寧に読みとき,明快に描き出す。ESG経営など現代の視点も対比的に取り上げつつ,資本主義再生にも通ずる「よき企業者」のあり方を示す。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

道徳と経済の融合を探求する本書は、渋沢栄一の経営思想をわかりやすく解説しています。論語や算盤の難解さを解消し、アダム・スミスや欧州の経済騎士道との比較を通じて、渋沢の「道徳経済合一説」がどのように現代...

感想・レビュー・書評

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  • 渋沢栄一の先義後利の精神について、論語や算盤を読んでも難しくてよく理解できなかったものが、いろいろな比較をもとに記されており、とても理解しやすかった。何度でも繰り返して読みたい本である。

  • 「経営にも、格闘技などの世界で必要とされる『闘魂』が不可欠である。

  • 論語とそろばんは、バランスをとるのではなく、論語を重視しその中で利益を出すもの。道徳経済合一説の意味。
    公益は私利に勝る。
    よいこと、を上手に、かつ立派に、成し遂げること。単に上手だけではない。
    道徳無くして経済無し。経済無くして道徳なし。ゆえにお互いに不可分である。

    道徳とは消極的道徳と積極的道徳がある。
    消極的道徳は、人を騙さない、ルールを犯さない、=不誠実な振る舞いをしない。と、自己の利益を先にしない、という意味も含む。
    積極的道徳とは、博施済衆=公益の増進を民間人の使命と考えた。

    私利よく公益を生ず=十分な利益がなければ長続きしない=公益にそぐわない。
    アダムスミスは、私利を追えば自ずと公益になる、と考えたが、渋沢は、公益を最初から図るべきと考えた。
    マイケルEポーターのCSV(共通価値の創造)では、私利の獲得が動機となるが、渋沢は公益の追求が主たる動機になるべき、と考えた。CSVは、戦略的CSR、と言われるのは利己的な行動が自ずと公益になる、という考え方だから。

    利益よりも大切な目標がある、と考える経営者はとして、松下幸之助、稲盛和夫、出光佐三、小倉昌男、フォードなどがいる。ただし利益を軽視したわけではない。
    「全従業員の物心両面の幸福」は私利に見えるが経営者から見れば公益である。自分以外のものもよかれ、と思うことは利他の経営である。

    先義後利とは、近江商人の家訓。大丸などの経営理念。
    善きサマリア人の行動に見られる心。
    義のもうひとつの一面は、不義をしないこと。
    義を行えば利はついてくるが、当事者の努力も不可欠。もう一手間かけなければ十分な利益は得られない。
    人が困っているときにその弱みにつけ込んで大もうけをするべきではない。JAL が、ワンワールドからスカイチームへの移行を打診されたときに、稲盛の決断はワンワールドに残ることだった。

    損得の次元ではなく、人間として何が正しいか、という次元で考える。
    美という字は犠牲の羊が大きい、と書く。美学に犠牲はつきもの。利を全く捨てるのではなく、義を優先しときには利を取り切らないことで利を犠牲にする。これが美学。

    士魂商才=武士の魂と、商人の才能を兼ね備える。
    和魂漢才からの造語。商才とは、商売上手だけでなく、立派に行うこと、を含む。=実業道即武士道=経済士道=先義後利。マーシャルの経済騎士道も同じ。

    武士道は、きれい事を言っても負けてしまえばおしまい、という中で、損得の追求の末に生まれてきたもの。

    事業経営は本質的には私の事ではなく、公事であり企業は社会の公器である。公私の入れ子構造。社会から見れば企業は私。企業の構成員から見れば公。

    勇気とは、臆病と向こう見ずとの間にある中庸の得である(アリストテレス)。する勇気だけでなく、しない勇気もある。逃げない勇気。

    私利と公益の区別はない=私利即公益。道徳経済合一の別の表現。
    国の繁栄、多数の富を目的として、自己本意でなく経営する。

    現代企業の問題点
    株主利益の最大化。その反面としてステークスホルダー資本主義。
    積極的道徳=なすべき事をせよ、が免除されている。公益の追求を目的としていない。
    アダムスミスは、これを不要としたが、そのためには見えざる手が十分に働く必要がある。地球温暖化や経済格差など市場の失敗があるので、公益の追求を不要とするわけにはいかない。
    宅急便は、サービスが先、利益は後、の精神で成功した。

  • 渋沢栄一の経営思想が学術的にかかれている。アダム・スミスや欧州の経済騎士道などの事例や、近年のマイケル・ポーターのCSVとの相違点などとも比較されながら述べられている。
    日本経済の基礎を創った偉人の思想の素晴らしさを学べる良書である。

  • 渋沢栄一が求めた経済士道
    企業経営において利益の追求は欠かせません。大学時代、私も経営学を学びましたが、20世紀初頭にフレデリック・ウィンズロー・テイラー(Frederick Winslow Taylor)によって提唱された管理手法、つまり科学的管理法(Scientific Management)では、労働者を「歯車」のように扱い、作業を科学的に分析し、生産性を向上させることを目的としています。このテイラーの科学的管理法に代表されるように、いかにムダを省き、効率よく生産するか。また、マーケティングや広告論では、いかに人々のニーズをリサーチし、ドラッカーの言う顧客創造を行い、消費者の心に訴求し、ヒット商品を生み出すかに注力されました。

    しかし、大学卒業後、一冊の本を読んで、学生時代に学んだ経営学を根本から見つめ直さなければならないと衝撃を受けました。それは、京セラを創業した稲盛和夫氏の「生き方(サンマーク出版)」です。
    まず、他人を思いやる利他の精神を持って企業経営をすること。また、経営者の本にしては道徳について書かれており、人間として何が正しいかを基に行動することが強調されていることに驚かされました。
    それ以来、パナソニックを創業した松下幸之助氏も同様のことを言っており、私は常に「利益が先か、それとも他者への奉仕が大切か」という問いが頭にありました。その中で、渋沢栄一の「論語と算盤」にも影響を受けました。なぜ道徳が一流の経営者の指針となりうるのか。やはり、稲盛氏や松下氏が言っていたことも同様だったのか、と。

    渋沢栄一が唱える「道徳経済合一説」、つまり道徳と経済の両立は果たして可能なのか。そのテーマは私の中で永遠のテーマでした。この度、有斐閣から「先義後利の経営―渋沢栄一が求めた経済士道(2024年)」が出版され、まさにこのテーマを扱っています。迷わず本書を手に取り、読み進めました。

    まず、本書の著者、田中一弘氏の知見の広さに驚かされます。孔子、孟子、荀子といった中国古典をはじめ、松下幸之助、稲盛和夫、自動車王ヘンリー・フォード、ピーター・ドラッカーなど様々な偉人の言葉が登場します。これらの言葉は、すべて私が尊敬すべき人たちばかりです。

    本書では、終始一貫して「公益第一、私利第二」、つまり「先義後利」がテーマです。この「先義後利」の典拠は、田中氏によれば「荀子」にあるといいます。つまり、道義を先に考え、利益を後にする者には栄誉があり、その栄誉ある者は順調にいく。また、反対の順序でいく者は恥辱があり、恥辱を受ける者は困窮するとあります(本書107頁)。
    そして本書においても、渋沢栄一にとって事業活動と利益・富の実現に不可欠なことは「公益の追求」と位置付けています。

    本書の面白いところは、中国の古典をそのまま引用するだけでなく、時として孔子と稲盛や渋沢が少し異なった解釈をしていたのではないかという箇所もあることです。例えば、論語にある孔子の言葉「君子は争うところなし、必ずや射か(君子は人と争わないものだ。しいて争う場面をあげれば弓の競技ということになろうか)」という下りです。一方、渋沢や稲盛は道徳を第一としながらも争うことも重視していました。この部分は大変興味深く読みましたが、孔子の言葉が本当に弓の競技程度の争いという意味で言ったのか、さらには深層的な解釈があるのかを知りたくなりました。

    また、本書では孟子の言葉に対しても渋沢流の解釈が述べられていて面白いです。このように偉人たちの言葉に触れ、その言葉を解釈し、血肉として自分の行動に落とし込んでいった渋沢氏や稲盛氏は、私たちも見習うべき点が多いと感じました。

    本書の最後には、聖書の「まず神の国と神の義とを求めなさい。そうすれば、これらのものはみな添えて与えられる」というイエスの言葉を紹介しています。そしてこの聖句をビジネスのあり方に結びつけたヘンリー・フォードの実業哲学が紹介されています。

    このように、西洋問わず「先義後利」の考え方は、まず公共の利益を最優先し、その結果として莫大な利益を得るというものです。東洋で言えば「天」、西洋で言えば「神」というべきでしょうか。道徳心を持って人々に奉仕すること。本書は、この追求こそが最終的には自身の成功につながることを多角的に、そして多層的に分析し、位置付けています。

    道徳を忘れた競争心のみで自分だけ這い上がろうとする人がなんと多いことか。また、自分だけ儲かればいいとする経営者もなんと多いことか。しかし、社会で成功するために言えることは一つ、「先義後利」を実践すること。本書を読み終えて、自分の思いが確信に変わりました。そう、理不尽なことも多々ありますが、最後には義のある人間が勝つのです。

    それを信じて。また、明日も。

  • 東2法経図・6F開架:335.15A/Ta84s//K

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著者プロフィール

一橋大学教授

「2024年 『先義後利の経営』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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