都市に聴け

著者 :
  • 有斐閣
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本棚登録 : 48
感想 : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641174528

作品紹介・あらすじ

再開発により大きく変貌しつつある東京を,「アーバン・スタディーズ」で読み解く。社会・政治・経済・文化など多様な出来事について,誰に対しても開かれる可能性をもった都市を今構想することへの挑戦。人が集まり社会をつくることの意味を考える刺激的な書。

感想・レビュー・書評

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  • 著名な社会学者による東京論。都市空間、経済、文化、社会など幅広い領域がとり上げられており、類書が少ない中で貴重。

    筆者の価値判断は明確で、まず「東京はスローダウンすべきである」。ただし、筆者は都市の機能自体には高い信頼を寄せる。都市は多様かつリアルな集まりに依るイノベーションを誘発する空間として、独自の価値をもち続けるから(コロナ禍はこの価値をまさに直撃した)。

    現実の東京が筆者の理想通りには進んでいないことは、筆者自身によって詳細に明らかにされている。派手な開発を求める心性の持続、意思決定の閉鎖性、格差に伴う分断の固定化…、などなど。

    ただし、商店街のエスニック・レストランやパブリックスペースといった東京の隅々にも目を寄せると、多様化の増進が文化を育む光景も、目にすることができる。こうした小規模な集まりをあきらめないことに、筆者は期待を寄せる。

    ほか、本書の随所から、筆者の理想と現実との緊張関係が感じられて、引き込まれるように読み進めることができた。「『夢』の局面を持たぬ『現実主義』の立場からは、現実を打開する方策のリアルな認識は出てこない」(内田義彦『作品としての社会科学』)ということをあらためて教えてくれる1冊。


  • まず、書名はいささか魅力的である。アーバンスタディーズから読み解く東京、という副題にもそそられる。
    が、私が読んだ限り、グローバリゼーションのせいで格差が進行した、都市に居場所がなくなった、不動産の金融化で資本の論理がまかり通った、オリンピックも政治の産物、といった主張が続く。

    これが悪いわけではない。むしろ社会問題としては興味がある。が、これがアーバンスタディーズなるもので都市を読み解いた結果ならなかなか退屈である。

    また、人が集まる公共的空間が大切なのだそうで、これは全面賛成である。が、良き集会の例が震災後の反原発デモだというから、これは都市論とは無関係の特定の思想の吹聴と私には思える。

    さて、都市の問題を改善する一助として、著者は所有権の制限を論じている。ようやく面白くなった、と言いたいところだが、現代日本において私権の制限には莫大な政治的コストがかかるはずで、それを推進するのは、それこそ著者が連呼する「上からの」圧力になるのではないか??

    思うに著者は土地を囲い込んでいるのは巨大資本だという立場なのだろう。例えば著者は駅ナカの公共性を論じながら鉄道会社がその使用権を独占することに疑義を唱えている。
    一方で、下町の木造密集地などは災害対策上もあきらかに区画の再編が必要に思われるが、その複雑すぎる権利関係の整理については、この著者はおそらく上からの権利の行使として批判的な態度をとるだろう。そこには著者が大好きであろう、弱者のささやかな生活があるからだ。

    都市を特定の物語(ナラティブ)に閉じ込めない(p315)、との著者の主張とは裏腹に、権力対マイノリティのナラティブで都市を語ることへの違和感ばかりが残った。 

  • 東2法経図・6F開架:361.78A/Ma17t//K

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著者プロフィール

1956年、北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科教授。東京大学大学院社会学研究科博士課程退学。社会学・都市研究・開発研究・グローバリゼーション研究。著書に『開発主義の構造と心性―戦後日本がダムでみた夢と現実』(御茶の水書房、2011年)、『都市の政治経済学』(編訳著:日本評論社、2012年)、『社会学』(共著:有斐閣、2007年)など。

「2013年 『都市空間に潜む排除と反抗の力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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