- Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
- / ISBN・EAN: 9784642054836
作品紹介・あらすじ
天皇・皇族などの墓地=陵墓は、風雲急を告げる幕末、尊攘の嵐の中で被葬者が決められていく。文久の修陵、神武天皇陵の創出、揺れ動く天武持統天皇陵、陵墓と村・崇りなど民衆との関係を探り、さまざまな問題に迫る。
感想・レビュー・書評
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奈良や京都に行くと、あちこちに天皇陵を見かけます。
古くからあるものという印象でしたが、この本が近代史とタイトル付けされているため、どんな内容なのか気になって読んでみました。
天皇陵がどのように保存され、政治的意味で継続し続けてきたのかが説明されています。
特に幕末から明治前期にかけての怒涛の混乱期における、国としての管理法に、話は集中しています。
宇都宮藩の建議で幕府が1862年(文久2年)から行った陵墓修復事業は幕末の「文久の修陵」と言われ、中でも神武天皇陵が最も重要視されたとのこと。
そもそも実在しなかった天皇ですが、自ら東征し橿原で即位したという武勇のイメージが強い神武天皇の陵は、天皇の意思を具現する聖地として、新政府が意図的に創出していったという背景が見えます。
個人的には、その拡張整備のために隣接する被差別部落が移転させられたというエピソードが気になりました。
そのあたりの話は鈴木すえ著『橋のない川』に描かれているとのことです。
緊張が続く幕末期の政治動向の中、攘夷の象徴としての政治的役割に利用された天皇陵。
ただ、陵墓となった古墳は立ち入り禁止のため、山林や用水ため池として利用してきた住民は不便を強いられたことでしょう。
てっきり古墳という見地からの内容だと思いましたが、考古学とは違う政治学的研究アプローチでまとめられています。
ほとんど基礎知識を持たずに読んだため、全て理解しきれず、難しく感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示