本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (226ページ) / ISBN・EAN: 9784642055970
作品紹介・あらすじ
墨の滲(にじ)みや濃淡などの特性を活かし、光や色彩を表現して描く水墨画。室町時代、禅僧たちは好んで水墨画を鑑賞し、画僧らが盛んに絵筆を握り、多くの作品を生み出した。彼らはそこに何を描き込んだのか。豊富な図版をもとに、水墨画の魅力とその誕生の場に集(つど)ったすべての人たちを紹介。一幅の室町水墨画の中に、人と人の温かな交流を照らし出す。
みんなの感想まとめ
水墨画の魅力やその歴史を深く掘り下げた作品で、特に室町時代の詩画軸に関する貴重な情報が詰まっています。多くの図版を用いて、当時の人々の交流や感情を描き出し、観る者に温かな印象を与えます。特に「蜀山図」...
感想・レビュー・書評
-
伝周文の「蜀山図」に関するところしか読んでいないので、全体についてはまだなんとも…。とはいえ、室町時代の詩画軸に関する一般書なんてほとんど無いので、貴重な一冊だと思います。
「蜀山図」の一条兼良が着賛した漢詩が、当時の兼良の境遇に照らすとエモいんですよ〜。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
堺といえば、戦国の世に自治貿易都市として栄え、その経済的繁栄を背景に茶の湯が発達し、大成者・千利休を生んだことでよく知られた街である。
ふらりと旅に出、堺市内に宿をとった私は、朝食後に旧市街地を歩き回った。もちろん往時の繁栄を偲ばせるものは皆無であると、前の晩に割烹「松(ときわ)」の主人が教えてくれたので、その点で失望は最小限だったが、「これが本当に政令指定都市なのか?」と疑わしく思えるほど人出が少なく、街路は活気が乏しい。
南宗寺を訪れ、村野紹鴎そして千利休一門の供養塔、そして徳川家康のものとされる墓(家康公は大坂夏の陣で討ち死にしたという説がある)などと対面する。利休ゆかりの茶室「実相庵」の表の柱に、蟷螂が一匹止まっている。保護色の作用によって、この蟷螂は自分の体を渋い黄土色に変色させていた。言うなれば「わびの蟷螂」である。
南海電車をみたび南下し、泉北郡忠岡町の正木美術館。滴凍翁・正木孝之氏のコレクションをひたすら見せびらかす場なのであるが、ここは春と秋の2期しか開館しておらず、交通の便もいいとは言えないため、遠方の人間にはどうにもむつかしい場所ではある。ここを今回初めて訪問できたことで感無量となったが、それは私にとっては決して大仰な表現ではないのである。《墨痕》という、なんとも渋い企画展示が開催されていた。
雪舟の弟子の等春による『瀟湘八景図』は、綿々と描き継がれたこのモチーフの歴史の中でもっともガスだけを、気体の推移だけを、絶妙の溌墨で跡づけて見せている。8枚続きの風景画は、完全に抽象画となっていると言っていい。ヨーロッパではこの頃はまだ、風景画というジャンルの確立さえされていない時代であることを忘れてはならない。
帰り際、この館の主席学芸員で、『水墨画にあそぶ──禅僧たちの風雅』(吉川弘文館)の著者である高橋範子氏に、遠方から訪ねたことに対し礼を言われ恐縮。ちなみに『水墨画にあそぶ』は、美術批評の近年の傑作の一冊だ。
旅の最後は大阪・難波に上がり、過去に何度か訪れている法善寺横丁の「H」の席に着く。繁盛しているようで同慶の至り。あまり時間をかけずに飲み食いを済ませ、地下鉄御堂筋線で新大阪に向かい、これでわが南海の小さな旅は打ち上げとなった。
本棚登録 :
感想 :
