旧幕臣の明治維新 (歴史文化ライブラリー)

  • 吉川弘文館 (1899年12月31日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784642056014

作品紹介・あらすじ

江戸幕府を支えた幕臣たちは、明治維新の後どのように生きたのか。徳川将軍家が移住した静岡に身を寄せた彼らは、西周(にしあまね)を中心に近代的な学制と、他藩からも注目される高い教育内容の沼津兵学校を創設し、人材の育成に努めた。やがて、各界で活躍の場を見出していった旧幕臣を通して、明治維新の敗者が近代社会で果たした役割を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 2005年刊。著者は国立歴史民俗博物館・総合研究大学院大学助教授。

     明治維新によって、徳川氏は駿河の一大名と化したが、他方、旧幕臣には前途有望な人材も多く揃っていた。
     静岡藩としては、彼らを無為徒食に落とすわけには行かず、教育推進のため2つの機関を設けた。
     その一が本書の描く「沼津兵学校」である。

     兵学校という呼称の通り、基本的には士官(殊に陸軍士官)の養成目的であった。
     が、附属小学校を設けたり、あるいは女子教育に関与し、広範に門戸を広げ、また、教授内容も士官養成に止まらず(語学・数学の重視が見て取れる)、結果、軍人とは違う道を歩んだ人物も多く輩出している。
     すなわち、元兵学校生が社会に対して幅広く浸透し、人数も他の追随を見ない。

     ただ僅か4年に満たぬ存続期間。
     ということで、兵学校が掲げた教育内容が、他地域や世間、あるいは教育の国家的施策にまで、そのまま浸透したとは言えなかった。
     実際、元兵学校生も官吏としては中下級どまり。軍人としても一部を例外にして佐官級止まりという限定も内包しているのは、本書からだけでも窺い知ることができる。
     決して大きくもなく、強い影響を及ぼしたかは判然としない存在が歴史の中に埋もれているのは、論を待たないが、かような存在に光を当てていくのも、必要な営為だろう。本書はその一端を試みた書と評しうるかもしれない。



     なお、本書の中で挙げておく必要のある点は、明治初期の官吏の35%程度が旧幕臣と推測され、最大の供給源だという指摘だ。
     中下級官吏なしに実務運営ができるはずもなく、そういう意味では、人的マスという観点からの江戸幕府と明治政府との連続性を伺うことは可能だろう。
     ただ兵学校生ですら中級官吏に止まったことをみれば、幕府の有能な官吏を、薩長藩閥が上手くフリーライドした印象が強く残るものである(まぁ、ある意味、予想通りではあったが)。

  • 江戸幕府の幕臣が維新後に学んだ、近代的な学制と高い教育内容をもつ沼津兵学校の歴史と、その関係者の群像を追う。とにかく、よくこれだけ沼津兵学校の関係者のことを調べたなあ、と感心する。著者もこの20年で蓄積した史料・史実に自信を持っていることが「あとがき」で控えめながらうかがえる。

    面白い史実はけっこうある。兵学校の「体操」(今でいう体育の授業)で、生徒のなかから選ばれた生徒が、他の生徒を指導するとやたらスパルタでみんな大変だったという話とか。附属小学校には女子にも開放しようとしていたとか。それはそれで面白い。

    面白いんだけど、たとえば旧幕臣が近代に入ってすごく活躍したのは、果してこの沼津兵学校の教育程度が高いことだけが要因だったのか?という疑問もある。育成した生徒が「幅広い分野にわたり国家・社会の指導的・中堅的存在となった多くの人材を輩出した」とあるけれど、そもそもそれは沼津兵学校だけの特徴なんだろうか。旧幕臣もそうだけど、旧藩士にも高い能力や学力で「国家・社会の指導的・中堅的存在」となった人もそれなりに居るような気もする。

    問題は、旧幕臣が多く「国家・社会の指導的・中堅的存在」とならざるをえなかった、近代日本社会というのは何だったのだろうか?ということではないのだろうか。それは「高い教育水準」一般に還元できるものではないような気がする(沼津兵学校に最後まで残った学生が不遇だったことはそのことを表している、 p133)。

    まあ要は著者自身も書いているのがちょっとおかしいのだが、「ありきたりの結論」(p193)なんだよなあ。沼津兵学校の、近世近代移行期における特質がわからない、という風にもいえるのかもしれない。

  • 分類=幕末維新期・明治時代・旧幕府関係者・静岡藩。05年10月。

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著者プロフィール

1961年静岡県熱海市生まれ。国立歴史民俗博物館・総合大学院教授。文学博士。著書に『旧幕臣の明治維新』『沼津兵学校の研究』『シリーズ藩物語 沼津藩』など多数。

「2017年 『幕末の農兵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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