昭和を騒がせた漢字たち―当用漢字の事件簿 (歴史文化ライブラリー 241)

著者 :
  • 吉川弘文館
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レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642056410

作品紹介・あらすじ

1946年、「当用漢字」が制定された。漢字の使用が制限されたとき、国民の生活には何が起こったのか。「福井県」が「福丼県」だと怒鳴り込む人、彫刻掘りなおし裁判などの事件をたどりつつ、戦後日本の世相を読み直す。

感想・レビュー・書評

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  •  こういうどうでもいい話って好き。いや,どうでもいい話ではないな。毎日使う漢字の話だし。戦後「日本語の民主化」で導入された当用漢字時代の,漢字にまつわる騒動を振り返る。
     当用漢字は要するに漢字制限で,難解な漢字を公文書等から追放して,わかりやすくし,民主主義の精神に合わせようとした。民間には強制ではなかったけど,新聞社などは活字減らせるし好都合ということで,率先して追従。徐々に国民の間に定着していく。
     ただ,その漢字改革の旗手である新聞にも,イタイつっこみが…。題字問題というやつで,「…新聞」の新の字の左側,線が一本多いんでない?当用漢字推進だったら変えなきゃいけなくね?という批判が盛り上がったそうだ。
     これは痛烈なジレンマで,多くの新聞は,「題字はデザインですから」てことで逃げ切って今に至る。著者は漢字には「唯一無二性」があり,字体の違いであれ何であれ,深く根を下した漢字を捨てきることはなかなかできないと分析。同様の事件で,「福丼県」が誤記ではなく,歴史的に使われてきた書体というのも面白い。
     このほかにも,郵政省を逓信省に名称変更するか否かを巡る,郵政官僚と新聞業界とのバトルとか,「宙」と書いて「おおぞら」という商品名のタバコが,「国語教育を乱す」と生産中止になった話とか,字体が教科書と違うために起こった矢板小学校「よい子の像」校訓改刻論争とか,どうでもいいようなよくないような漢字話がいろいろ読めて楽しかった。
    「よい子の像」改刻問題では,高名な書家による「元気で仲よく根気よく」という文字が,突き抜けないはずの線が突き抜けている,とかダメ出しされ,「漢字教育に支障が」とクレームがついて裁判にまでなったらしい…。棄却だったけど。

  • 『文献渉猟2007』より。

  • ことば

  • 八紘一宇、教育漢字にない「恋」、篆書体では福「丼」県、朝日新聞などの「新」も篆書体から、 逓信省復活は新聞が民主的でないと反対したが...その他「徳仁」をなると読ませる。「怨」は水俣病の抗議行動の幟(石牟礼道子の発案)から一般化した、タバコの銘柄「宙」の販売中止、差別による冤罪と言われる狭山事件の被告の漢字が 読めない、書けないという事実など、興味深い事件の数々でした。ちょうど11/30の常用漢字見直しで「怨」が追加されると報じていました。

  • 600 古本市

  • [ 内容 ]
    1946年、「当用漢字」が制定された。
    漢字の使用が制限されたとき、国民の生活には何が起こったのか。
    「福井県」が「福丼県」だと怒鳴り込む人、彫刻掘りなおし裁判などの事件をたどりつつ、戦後日本の世相を読み直す。

    [ 目次 ]
    八紘一宇をめぐって―プロローグ
    新しい時代とともに―一九四〇、五〇年代の漢字事件(『青い山脈』の恋;新聞題字問題;郵政省改名騒動)
    変わりゆく社会の中で―一九六〇年代の漢字事件(新宮の命名をめぐって;記号式投票と狭山事件;誤字を理由に解雇できるか)
    拡大する自由の行方―一九七〇年代の漢字事件(水俣病患者たちのうらみ;たばこ「おおぞら」の物語;「よい子の像」碑文裁判)
    自由と平等の相克―エピローグ

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    [ 参考となる書評 ]

  • 漢字についての話しは難しいけど、

    青い山脈(恋と変。学校で教わらなかった漢字“恋”)や狭山事件(非識字者の冤罪)、不当解雇(誤字で解雇は不当。)、水俣病の話(怨の旗)は興味深かった。

    一部の水俣病患者はチッソ株式会社の株を一株買って株主総会に出るのか。そして訴えたのか。

    忘れてたけど、逓信省の逓はやけに難しいと思ったら、昔の漢字だったのね。田中角栄が放送の電波を使ってたり、免許交付してたの?へぇ〜。

    新聞の木の部分が旧字では未かぁ。

    福井県がふくどんぶり県ってのも面白いなあ。

  • 漢字にまつわるウンチクかと思えば、漢字を巡る実際に起きた事件であり、興味深く読んだ。観点や考察がすばらしく、今までにない捉え方にワクワクした。八紘一宇は理解に苦しむけど、唯一無二はわかりやすい。そうだったんだ。

  • 井と丼は同じ字だった、等当用漢字導入前後のエピソードを交えて当時の世相を解釈する。

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著者プロフィール

円満字 二郎(えんまんじ・じろう)
1967年、兵庫県西宮市生まれ。大学卒業後、出版社で国語教科書や漢和辞典などの担当編集者として働く。2008年、退職してフリーに。著書に、『漢字ときあかし辞典』『部首ときあかし辞典』『漢字の使い分けときあかし辞典』(以上、研究社)、『漢和辞典的に申しますと。』(文春文庫)、『漢字の植物苑 花の名前をたずねてみれば』(岩波書店)などがある。

「2020年 『文庫 雨かんむり漢字読本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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