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Amazon.co.jp ・本 (200ページ) / ISBN・EAN: 9784642057240
作品紹介・あらすじ
結婚・出産・死亡の記録から個人のライフコースをたどり、人と家族の一生を明らかにする歴史人口学。宗門改帳(しゅうもんあらためちょう)を分析し、江戸時代の結婚年齢、出生率や死亡率の水準、再婚の可能性などを解明。東北の「少子化」社会や子ども手当「赤子養育仕法(あかごよういくしほう)」から、現代の少子高齢化や非婚・非産などの問題解決への手がかりを提示しつつ、新たな江戸日本の姿を描く。
感想・レビュー・書評
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近年の歴史人口学の素晴らしい成果の数々を、噂には聞いているが、実際に速水先生の本も斎藤修先生の本も難しくてよう読み切らんわ、という方にはとくにオススメ。最先端の研究成果を易しく解説しながら、読者を歴史人口学の世界に誘ってくれる。結婚、出産、子育て、そして死。普通の日本人の生きた歴史から現代の日本社会を考える糸口を見いだそうとする本書の問題提起は、静かではあるが、重い。
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「歴史人口学」という、江戸期の「宗門改帳」をもとに様々な人口推計と考察を行う「学問分野」があることを本書で初めて知った。
「江戸期を通じて、日本の人口は3000万人前後だった」ということ、「鎖国という閉鎖社会での日本の養える人口はそのレベルだった」ということは知っていたが、本書ではいくつかの興味深い知見も散見する。
平均寿命がいちじるしく低いのは想像していたが、「男子が36.8歳、女子が36.7歳」、「10歳時までに約37%が死亡したと推計」とは、やはり過酷な社会だと思った。
また、東北地方の早婚には驚く。「女子の初婚年齢が12歳前後」とは、現在ではまだ小学生ではないか。
その理由を、本書は、「東北地方の過酷な寒冷気候のもとでは3世代所帯によって産年齢人口比率をつねに安定させる必要があったからである」とは、実に合理的でリアルな選択であるとも思えた。
しかし、本書は、江戸日本について考察しているが、「美濃の国西条村」「二本松藩」などの一部のデータのみでは、ちょっと物足りないように思えるし、「人口から見た幕末京都」や「改革や産業と人口との関連性」についても、もっと詳しく研究・考察すべきテーマはないかとも思え、ちょっと読後に不満が残った。 -
本書は,1960年代以降蓄積された歴史人口学の業績をもとに,新しい江戸時代の姿を描こうとした入門書である。歴史人口学とは,個人のライフコースを過去の歴史から解明する学問である。日本でも宗門改帳をもとに江戸時代の人口が分析された結果,ダイナミックな江戸時代像が明らかになりつつある。
歴史人口学は,主に農村を対象としてきた。ただ,江戸時代の農民とはいえ,人口行動や家族形成のパターンは一様ではなく,大きな地域差を伴っていた。中央日本では,初婚年齢が相対的に高く,出生率も高いが,死亡率も高い「多産多死」の社会が形成されていたのに対し,東北日本では,結婚年齢が際立って低いにも関わらず,出生率は人口再生産水準を下回るほど低い状態に留まっていたため,人口減少社会を迎えていた。この低出生率は,「間引き」によって意図的に子供数を少なく,かつ性別のバランスを取ろうとした結果だと予想されるが,筆者は,こうした東北農民の出産行動に対して,家計レベルでの合理性を追求して行動に拠るものだと主張する。このような人口減少に対して,東北各藩は手をこまねいていたわけではない。出産奨励の手当を領民に支給し,人口増加政策を展開していた。このわずかな手当のおかげで東北農村の出生率が上昇した証拠はないが,筆者は江戸時代にも子育てのコストを社会全体で負担する考え方が芽生えていたとして,この政策に一定の評価を下している。
こうした研究成果を踏まえて,筆者は,日本の人口が再び増加し始めた幕末期に,現代日本の人口問題を解決するヒントがあるという。第1に,江戸時代には再婚マーケットが機能していた結果,「適齢期」を過ぎた男女でも結婚率が向上した点,第2に,江戸時代の農業社会では基本的に共働きであるゆえに,労働と子育てが両立していた点である。そのうえで,現代社会では妻のみに大きな子育ての負担がかかり,少子化がさらに進まざるを得なくなるため,夫の家事・育児への参加を高める必要性を指摘している。
かつては封建制,身分制,搾取と貧困などマイナスのイメージを強くしていた江戸時代は,近年の研究によって大きく塗り替わっている。それは,けっしてプラスのイメージだけではないが,少なくとも本書を通じて,明暗の変化に富み,地理的にも極めて多様な時代だったと理解することができよう。
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