植民地建築紀行: 満洲・朝鮮・台湾を歩く (歴史文化ライブラリー 330)

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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642057301

作品紹介・あらすじ

旧満洲・韓国・台湾に建てられた、数多くの日本の植民地建築。戦争の記憶を今日に伝えるそれら植民地建築を見ながら、日本の東アジア支配に果たした役割を探る。建築様式と建築技術も踏まえ、歴史的意味を考える。

感想・レビュー・書評

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  •  筆者は建築学が専門だが、一般書のため特に難解ではない。本書で取り上げられる場所の多くに行ったことがあるため、楽しんで読めた。
     筆者が繰り返し述べるのが、「日本の支配」と「その土地の歴史の一部」という植民地建築の持つ「二面性」。また近年は各地で歴史それ自体を尊重する、植民地建築を直視するという意識の故か、植民地建築が保護されるようになってきたという動きだ。87年に筆者がソウルでの講演で「旧朝鮮総督府庁舎は建築としていいもの」と述べただけで会場に極度の緊張が走ったという。その後同庁舎は一旦は博物館として転用されるも、90年代に景福宮の復元事業の中で取り壊されてしまう。しかし21世紀になり市庁は一部が残され、ソウル駅はそれ以上に原型を保っている。同様に、大連や台北でも植民地建築が文化財指定されてきているそうだ。
     多くの写真が使われてはいるが、本書で紹介される全ての建築を網羅しているわけではないので、より多くの、できればカラーの写真があればもっと良かった。また、瀋陽駅を「瀋陽南駅」としているのはいただけない。瀋陽駅がその名だったのは戦後一時期だけのことで、また現在では別の瀋陽南駅が存在する。

  • 昨年はソウルを訪れ、今年は台北を訪問することになっている。取り上げられた建築物は、事務所機能の他に、当時の為政者が作り上げた権力・権威の象徴であったことは今さら言うまでもない。しかし現在もなおその姿が「在る」事実を受け入れ、感じ方と価値観を他者に強いることなく、それを「見る」ことが、今のところの行動様式の一つと考えている。

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著者プロフィール

1960年、愛知県に生まれる。1983年、名古屋大学工学部建築学科卒業。1993年、東京大学大学院博士課程修了。現在、名古屋大学環境学研究科准教授。 ※2011年10月現在
【主な編著書】『海を渡った日本人建築家』(彰国社、1996年)『図説「満洲」都市物語』(河出書房新社、1996年)『日本植民地建築論』(名古屋大学出版会、2008年)『日本の植民地建築』(河出書房新社、2009年)

「2021年 『植民地建築紀行 満洲・朝鮮・台湾を歩く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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