琉球国の滅亡とハワイ移民 (歴史文化ライブラリー 369)

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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642057691

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  • なぜハワイに沖縄県出身者が多いのか。歴史を繙き、ハワイの移民へのインタビューという手法で明らかにしていく。沖縄県の被差別史、そして滅亡した「国」を背負った琉球とハワイの共通点が浮き彫りになっていく。「国のあり方を考え、国家体制下における個の人間の生き方の歴史を移民を通して描いた」本である。(P3)
    琉球国は1430年頃に成立し、1879年に琉球処分で消え去るが、国が腐って崩壊している様子が、国王自身の嘆きによって伝わってくる。人民の国への絶望感が、2代目県令・上杉茂憲(鷹山の玄孫)の「愛民」を実践する名君ぶりと相俟って、新しい支配国・日本に同化していくことができたのだと思う。

  • ハワイの日系人に沖縄(琉球)の人が多い。それは、明治時代に多くの人が移民したからだ。何故、移民したかといえば、生活が貧しかったからで、その原因は琉球処分いある。原因をもっと遡れば、独立国家である琉球を島津藩が侵略したからである。
    原因があり結果がある。沖縄にアメリカ軍の基地があるのも、理由があるからだ。でも、殆どの本土の人はその原因を知ろうとしない。

  • 読みやすい一冊だった。
    沖縄の歴史がより可視化された。

    沖縄からのハワイ移民一世があくまで日本人として自認していたこと、そして移民二世との間に価値観の断絶があったことは意外だった。
    インタビューで紹介される移民一世の人生はいずれも数奇なもので興味深かった。

  • 沖縄から海外に移民した人が多い理由は「貧困から脱出するため」だったとか、「當山久三は “自由” 民権運動の一環として移民の送り出しに取り組んだ」などという紋切り型の説明がなされることが多い。いずれも字義通りに受け取ることはできない。海外移民にはそれなりの費用を要したので本当の貧窮層は移民することもできなかったし、當山久三の運動が “自由” というある種のイデオロギーに基づいていたという形跡もない。

    今までモヤモヤしていた点に、著者が明快な回答を提示してくれた。

    沖縄出身移民が突出して多い理由は「琉球国の滅亡」と関係がある。曰く「国が滅びると、その民は流浪する……それを、「社会的公理」とでもよびたいほどである」(p9)

    また曰く、移民運動は「自由の探求というよりも、一般農民たちの生活を保護するための民権運動であったと言ったほうが正確だろう」(p86)

    前半部分はオーソドックスな琉球・沖縄史のレジュメのようになっていて、手っ取り早く琉球史を知りたい人に勧められる。著者が1980年代にハワイ移民1世に聞き取った証言も後半に収録されており貴重。

  • 沖縄県は移民県と呼ばれ、1940年時点で1位広島、2位熊本につぐ全国第3位だったらしいが、移民者÷県の人口とすると沖縄は9.97%で広島や熊本の倍以上の率になるという。10人(いや11人か)に1人が海外移民というが、これは琉球国の滅亡と関係しているらしい。世界の歴史的に見ても国の滅亡は大量の移民を出すことが多く、国の統治力がなくなりたがが外れること、亡国の民というのは貧しいという2つのことが原因らしい。今よりも情報の少ない時代、未知の世界に活路を見出そうと思ったぐらいだからよほど生活が苦しかったのだろう。

  • 沖縄人のハワイ移民が何故行われたのかについて、琉球国の滅亡が大きな契機であると提起している。
    具体的には、琉球国の滅亡。そして日本による廃藩置県。琉球国時代から続く無禄士族や農民の貧困。
    こうした状況を打開するために行われたのが、謝花昇による民権運動であったとされる(内地の自由民権運動とは目的が異なると理解)。

    そして、謝花の民権運動の延長線上に当山久三が進めたハワイ移民事業があった。

    琉球国の滅亡の原因には、琉球処分以前にすでに内部が「構造的崩壊」にあったとしている。この内部の状況については、近年歴史学の研究でも明らかにされてきている。

    本著で一番興味深い内容は、民俗学者である著者がハワイ移民の1世・2世へ聞き取り調査をした記録である。我々の移民のイメージを変えてくれるような事例もあった。

    最後の「沖縄世」の概念については、なかなか我々内地の人の感覚では理解しにくい。亡国を体験し、日本やアメリカによって統治されてきた人々だからこそ感じ得る概念なのかもしれない。

    ハワイへ移民した人々もこの「沖縄世」という概念が心の奥底にあるからこそ、移民社会での沖縄人の地位を築けたのだろう。

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著者プロフィール

鳥越 皓之(とりごえ・ひろゆき):1944年、沖縄県生まれ。東京教育大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。文学博士。関西学院大学教授、筑波大学教授、早稲田大学教授、大手前大学学長などを経て、現在は大手前大学大学院比較文化研究科教授。早稲田大学名誉教授。日本社会学会会長、日本村落研究学会会長を歴任。著書に、『水と日本人』(岩波書店)、『琉球国の滅亡とハワイ移民』(吉川弘文館)、『花をたずねて吉野山』(集英社新書)、『地域自治会の研究』(ミネルヴァ書房)などがある。

「2023年 『村の社会学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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