海軍将校たちの太平洋戦争 (歴史文化ライブラリー 383)

  • 吉川弘文館 (2014年7月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784642057837

作品紹介・あらすじ

悲惨な結末の道を辿ったアジア・太平洋戦争。国家のエリートとして養成された海軍将校たちはなぜ無謀な戦争を実行したのか。陸軍の暴走を抑止できなかった海軍の姿勢を検討し、三国同盟や対米開戦、作戦遂行における意思決定過程を追う。「合理的」な決定を目指しながら、結果的に犠牲を生んだ彼らの思考に迫り、現代にも通じる組織のあり方を考える。

みんなの感想まとめ

組織の合理的な判断が戦争の運命を左右する様子を描いた本書は、海軍将校たちの複雑な思考過程を掘り下げています。国家のエリートとして育成された彼らが、無謀な戦争に突入していく背景には、陸軍との力関係や官僚...

感想・レビュー・書評

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  •  「海軍将校」と言っても中堅層から米内大臣まで幅広い。また、米内大臣は自らを「軍人」と考えるため和平交渉の発動提起は自らの任務とは考えていなかったとしつつ、次の頁では木戸内大臣の方針に賛同して閣内で動いた、とある。これを含め、著者が自らの結論に合う事実関係を繋ぎ合わせたり、合うように解釈したりしたのでは、との薄い疑念は残る。
     ただ、その時々の局面で「合理的」な意思決定を目指していたこと、自らの専門性を追求しつつ政治には不関与、所掌外には口を出さない、という本書で語られる海軍将校の性質は、本来の官僚制には極めて忠実と言える。対米開戦の決断時、近衛や陸軍は対米戦を所管する海軍の判断を求める。海軍側は、困難を認識しつつもこれまで多額の国費が投じられてきたのだから執行を断れない。
     失敗した数々の作戦はどうか。著者は、艦隊決戦主義や即戦即決主義、武人的ロマンティシズム、士気の高揚、という前提や目的が誤っていたからだとしている。

  • 海軍軍人を官僚として捉え、その思考過程を分析することにより、国民がどのように官僚を監督するかについて考察する。

    中国戦線を拡大し、太平洋戦争に突入していくにあたって、陸軍が政治的に主導したと考えられ勝ちではあるが、戦争の遂行、拡大にあたっては、海軍に反対する意志があれば、それを強行することはできなかった。

    最新鋭の軍艦、兵器を建造し、運用する高度な技術者集団であり、合理的な判断をくだすことを期待される海軍が、なぜ対米開戦に合意し戦争を継続し、さらには誠に非合理的な特攻作戦を行うに至ったかについての分析。

    帝国憲法の下では、国務大臣は各々が独立して天皇を輔弼する国務大臣単独輔弼制をとっていた、そのため海軍の運用については、海軍大臣(海軍・運用)そして軍令部(作戦)が独立した権限を持っていた。
    そのため、対米開戦にあたっては、海軍の同意は必須であった。

    戦時に非常に多くの兵力を運用する陸軍とは異なり、はじめに設備(軍艦、装備)ありきの海軍では、平時(戦争準備段階)から、専従の職員(軍人)がその運営に関わる。

    海軍はその存在の根拠が対米戦争であるから、対米戦争を否定することは、組織の否定となる。しかし、戦争を行うことは合理的には厳しい選択となるため、当初海軍は石油はじめ重要物資の供給を停止した米国以外の国からの物資輸入を模索する。
    しかし、いよいよ燃料枯渇が現実問題となって迫ってきた時には、対米開戦を否定できない海軍は、否応なく対米開戦を決断し進めていくことしかできなかった。

  • 表紙の米内光政大将が素敵というのはさておき、帝國海軍の書籍を読む度に海軍の体質というのはクソだなと思う。陸軍を批判し、責任転嫁という体質と風潮を見ているとなんだかいたたまれない気持ちになる。井上成美大将までもが陸軍批判をしていたのにはたまげた。太平洋戦争というのは本当に悲惨な結果だ。戦況的な事ではなく、たくさんの若者や有能な人材を無駄死にさせた。しかし、それは戦争全体に言える事なのだが。所詮、終わった事なので戦争を知らない世代が後づけ論でウダウダ言う事は英霊の方々に対し、失礼かもしれない。

  • 米内光政、山本五十六、及川古志郎、豊田貞次郎、高木惣吉・・・
    国家エリートたちの意識をみつめ組織のあり方を考える。敗戦に何を学ぶか。
    悲惨な結末の道を辿ったアジア・太平洋戦争。国家のエリートとして養成された海軍将校たちはなぜ無謀な戦争を実行したのか。。「合理的」な決定を目指しながら、結果的に犠牲を生んだ彼らの思考に迫り、現代にも通じる組織のあり方を考える。(2014年刊)
    ・パラドックスとしての太平洋戦争―プロローグ
    ・海軍の内と外―海軍と政治
    ・開戦―海軍のジレンマ
    ・作戦―海軍の戦略・戦術構造
    ・終戦―海軍にとっての「政治」
    ・敗戦に何を学ぶか―エピローグ

    本書では、海軍将校が「合理的」な決定を目指しながら、なぜ結果的に犠牲を生んだのか、その思考に迫っている。

    本書ならではの視点として、「戦前の内閣は国務大臣単独輔弼制をとっていたため、その省の管掌事項については、最終的にその省の大臣が排他的で独占的な権限を持っていたとする。ゆえにいかに陸軍といえども、完全に海軍や外務省の領域とみなされるようなことについては、容易に干渉することが出来なかった」という点、「政治的に消極的な海軍が組織利益についてだけは、強い執念をみせたのか、著者は自己の管掌する事務を執行する責任が海軍を組織利益の追求に駆り立てた」とする点がある。
    著者は、海軍が戦争を決意したから最終的に戦争はおきたとしているが、開戦までのプロセスを見ると、官僚的な合理性により判断され、より大きな視座、高位な価値観による判断がされないため事態が悪化している様子がわかる。(読んでいると結局、憲法上の欠点により戦争は避けられなかったように感じられてならない。)

    また、良識派として高く評価される米内光政についても「主管大臣を尊重する傾向が強い、部下統制に対し楽観的な行動をとる傾向のあった」としており、傑出した政治的に広い視野を持っていた訳ではないとしているのも興味深い。

    著者の説を用いると、合理的説明がつく点が少なからずある。海軍贔屓には耳が痛い内容であるが、読む事をオススメしたい。

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著者プロフィール

1983年、宮城県に生まれる。2006年、東北大学文学部卒業。2011年、東北大学大学院文学研究科博士課程後期修了。現在、福井工業高等専門学校一般科目教室助教、博士(文学) ※2014年6月現在
【主な編著書】『昭和戦時期の海軍と政治』(吉川弘文館、2013年)。「平沼騏一郎内閣運動と海軍」(『史学雑誌』122-9、2013年)

「2022年 『海軍将校たちの太平洋戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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