江戸の出版統制 弾圧に翻弄された戯作者たち (歴史文化ライブラリー 456)
- 吉川弘文館 (2017年10月18日発売)
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感想 : 6件
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784642058568
作品紹介・あらすじ
江戸時代後期、多くの読者を魅了した娯楽小説の戯作(げさく)は、たびたび取り締まりの対象となった。権力側は何を問題視し、作者や版元はいかに受け止め対処したのか。山東京伝の作品をはじめとする戯作の文学的魅力と処罰の理由を探り、自己検閲、自主規制で作品の命脈を保とうとした作者たちの姿を描く。形を変え現代に続く出版統制をめぐる攻防の歴史。
みんなの感想まとめ
江戸時代後期の出版統制に焦点を当て、権力と戯作者・版元の間で繰り広げられる攻防を詳細に描いた本書は、当時の社会状況や文化的背景を深く掘り下げています。寛政や天保の改革に伴う出版物への厳しい規制が、どの...
感想・レビュー・書評
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江戸時代後期の出版統制を詳細に解き明かす。
それは権力側と戯作者・版元の攻防戦。
近世という窓から現代を考える―プロローグ
・寛政の改革と黄表紙 ・山東京伝と筆禍
・文化期の出版統制 ・天保の改革と人情本・合巻
戯作の生命力―エピローグ
・あとがき
主要参考文献有り。
寛政の改革での出版統制と、絶版になった黄表紙
「文武二道万石通」(再刻版における修正にも着目)
「鸚鵡返文武二道」「天下一面鏡梅鉢」「黒白水鏡」の内容。
寛政3年の絶版になった洒落本
「仕懸文庫」「青楼昼之世界錦之裏」「娼妓絹籭」の内容。
摘発での処罰と筆禍前後での山東京伝の作品の変化。
文化元年の出版統制と絶版になった読本
「絵本太閤記」と黄表紙「化け物太平記」の内容。
文化元年5月17日の触。
文化4,5年の表現規制と名主改の導入。京伝・馬琴の口上書。
読本・合巻への触などでの表現統制と合巻作風心得之事。
天保の改革での合巻・人情本への弾圧では為永春水の処罰と
絶版になった人情本「春色梅児誉美」の内容。
絶版になった合巻「偐紫田舎源氏」の内容。
だが水野忠邦の失脚により、締め付けは徐々に緩んでくる。
出版統制に対する戯作者や版元の考えと対策を知ることが
できて、参考になりました。如何に規制に抵触せずに、
読者を楽しませることができるかの苦心。
特に文化期の表現規制では多岐にわたる制約の中での
許される範囲内の模索の厳しさが伝わってきました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
寛政の改革、天保の改革、学校で習ったけど、贅沢禁止以外にも出版物の内容にまで踏み込んでいたんだな。そして蔦重は山東京伝に無茶振りをしていたのか。大河ドラマでも出てくるのかな。
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江戸時代の出版統制と、それに伴う作者の対応についていろいろ調べられてる本。
全体的に「こういう話がありました」以上でも以下でもない話になってるって印象。
作家の言い分、結局のところ売れるから作られるという話になると、ですよねーで終わってしまうわけでw
作者の考察も色々あるのだけれど、この手の話、他の解釈を知っていないと今一つしっくりこないのかな。
幕府の考えを――直接幕府が事細かに支持を出していない以上――だされた出版統制の内容、実際に取り締まられた状況等から推測している話は面白いなと思った。
幕府が「何」を規制しようとしていたのかだったりの話に焦点を絞ってくれてたらもう少し読みやすかったのかなぁ。 -
寛政、天保の改革それぞれで戯作に対して加えられた統制と、作者・板元側の対応がコンパクトにまとめられている。
享保7(1722)年の出版条目、寛政2(1790)年の町触、文化元年(1804)年「絵本太閤記」絶版事件、天保13(1842)年の出版条目変更の町触。これらの潮目は基本として頭に入れるべき。
享保の出版条目は子ども向け草双紙を対象外としていたが、寛政には対象に加えられた。背景には大人向けの本である黄表紙の隆盛。当時にあって「子ども向けの本」という概念がどのようなものだったか、現代の児童書やマンガと対比して考えるのも面白いかもしれない。
規制の影響で、黄表紙では実在の人物を匂わせる絵柄の修正が生じたという「文武二道万石通」の事例。また洒落本で、寛政2年以前に刊行したものと見せかけるため刊記を偽装する事例がある(p105)。原本に記載された刊行年が信頼できない例。
文化の表現規制では色刷り等の華美な造本、残虐な絵等の内容が取り締まられた点も興味深い。規制そのものをネタにした「茶釜前杓子物語」の分析から、馬琴や京伝のような職業的作家の慎重さに比べ、趣味で執筆していた作家がかえって現実の戯画化という初期の戯作的態度を保っているという指摘。商業出版と表現規制の関係。
天保の例として挙げられた「児雷也豪傑譚」の絵柄の違い(市川海老蔵の似顔にしたものとそうなっていないもの)。以前博物館の展示で、似たような事例の原本の比較を見たことがあったので興味深かった。その際は当座演じている俳優の違いに合わせたかと思っていたが、こういう事情もあるのだな。 -
東2法経図・開架 023.8A/Sa85e//K
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佐藤至子の作品
