昭和陸軍と政治 「統帥権」というジレンマ (513) (歴史文化ライブラリー)

  • 吉川弘文館 (2020年11月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (282ページ) / ISBN・EAN: 9784642059138

作品紹介・あらすじ

政府の軍部「統制」を失敗させ、暴走を招く要因になったとされる統帥権独立制。だが実際は、政治からの軍事の独立確保とともに、軍部の政治介入禁止という複雑な二面性があった。建軍以来の陸軍はこれらをどう認識し、いかに振る舞ってきたのか。宇垣一成・武藤章・東条英機らの動向から、制度や規範意識のなかで揺れ動く昭和陸軍の苦悩に迫る。

みんなの感想まとめ

テーマは、昭和陸軍の政治との関わり方とその苦悩です。これまでの常識では、軍部の暴走は統帥権独立制に起因するとされてきましたが、本書ではその独立制が持つ二面性、すなわち政治からの軍事の独立と軍部の政治介...

感想・レビュー・書評

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  •  戦争への道は軍部の暴走に起因し、そして軍部を抑制できなかったのは、制度としての統帥権の独立が障害となったためである、と近代史の常識として語られてきた。 
     しかし、統帥権独立制には、政治からの軍事の独立という面と、軍部の政治介入禁止という二面性があったのであり、軍部が政治介入を一貫して行ったものではないと著者は言い、具体的な史実を述べていく。

     輻輳した昭和史の流れを、陸軍、特に政治との接点を持つ陸軍大臣及び軍務局の視点から叙述しているので、これまで良く分からなかったことが、ずいぶん理解できるようになった。宇垣が度々首相候補に擬せられた事情、二・二六事件後の広田内閣で軍部大臣現役武官制が復活した経緯、新体制運動に対する武藤軍務局長の目論見と挫折、首相、陸相、参謀総長を兼務した東条に対する批判など、興味深い問題が分かりやすく論じられている。

     軍人の政治介入を忌避する精神がたとえ軍人自身に持たれていたとしても、兵器の近代化や総力戦に耐え得る国家社会創りのためには、自らの意思を国政に繋ぐことが必要不可欠である。そのときに統帥権独立制は、軍部にとって桎梏ともなってしまった。

     昭和陸軍に対する見方がガラリと変わるような、刺激的な一冊である。

     

  • 対米戦に至るまでの昭和の陸軍と政治についてのこれまでの常識を覆す刺激的な説。
    統帥権独立については司馬遼

  • 横暴で非理性的な軍部?これまでの昭和陸軍像を覆す。
    軍部の暴走を招いた要因とされる統帥権独立性には、政治からの軍事の独立とともに、軍部の政治介入禁止という二面性があった。軍人たちは、これらをどう認識してきたのか。政治との関わり方に苦悩する昭和陸軍に迫る。(2020年刊)
    ・歴史とイメージ ープロローグ
    ・明治陸軍と政治
    ・宇垣軍政
    ・陸軍派閥抗争
    ・近衛文麿と陸軍
    ・東条軍政
    ・統帥権独立と政治介入 ープロローグ

    大変面白く読む。
    本書を読むと昭和陸軍が政治に対しどの様な対応をとろうとしてきたのかがよく分かる。従来、統帥権独立が軍部暴走の元凶のように語られてきたが、本書を読むと、統帥権独立には、政治からの軍事の独立とともに、軍部の政治介入禁止という二面性があったことがわかる。また、軍事指導者たちの多くは、主観的認識においてその制度と規範意識に沿おうと努力したことがわかる。
    著者の「統帥権独立制と軍部の政治介入は、あまりに自明の常識として、やや無批判に扱われすぎたのかもしれない」との記述は重い。今後、さらに研究が進むことを期待したい。

  • 統帥権と政治についてというので読んでみたが、それらの権利の保持者であった天皇については一切触れず、軍関係者(それも陸軍関係のみ)に終始しているだけ、全く新味がない。
    三権分立以前の日本の仕組みに対する観点からの切り込みもなく、明治時代の軍と
    昭和の軍を比較するだけで、明治天皇と昭和天皇の違いに関しても論述が欠けている。これらは全て天皇に対する忖度なのか?
    一方で軍と政治の関係に関するこれまでの常識に疑問を投げかける意見は明確であるが、その主張にあまり論理性や史実が投影されていない。
    残念な書物である。

  • 東2法経図・6F開架:396A/Ta54s//K

  •  明治陸軍と比べ昭和陸軍は政治に介入して暴走、統帥権独立がその原因、という一般的図式を再考するというのが著者の問題意識だ。
     そもそも明治初期は政治と軍事が未分化だったが、その後軍事の専門化が進むというのは多くの先行研究のとおり。そして著者は、政治からの軍事の独立と、軍部の政治介入禁止、という「統帥権独立の二面性」を指摘する。昭和陸軍も、彼らの主観的認識としてはこの制度と規範意識に沿おうとしたという。
     政党政治との妥協を図った宇垣が陸軍から反発され、永田が皇道派に憎悪されたのもこの文脈で理解できる。また軍務局長の武藤は、陸軍が直接政治に参入するのではなく新体制運動を支援することで強力政権の樹立を目指した。著者は、「統帥権独立」がなければより直接的な介入があった可能性すら排除しない。
     現代社会では、軍の政治的中立と文民統制は共に望ましいとされる。これらと統帥権独立はどう共通し、どう異なるのか。また米政府の高官指名を見ると、文民統制を前提とすれば軍の人事が多少の党派性を帯びることは避けられないのか、そんなことを漠然と考えた。

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著者プロフィール

1979年生まれ。中学校卒業後、海上自衛隊生徒(41期)を経て國學院大學文学部史学科卒業、同大学院法学研究科博士課程後期満期退学。宮内庁書陵部編修課(非常勤)を経て同上大学院再入学、同修了。博士(法学)。

「2015年 『宇垣一成と戦間期の日本政治』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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