アクセサリーの考古学 倭と古代朝鮮の交渉史 (522) (歴史文化ライブラリー)
- 吉川弘文館 (2021年4月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784642059220
作品紹介・あらすじ
古墳時代のさなか、日本列島では冠・耳飾り・飾り帯など貴金属のアクセサリーが流行した。新羅・百済・加耶など朝鮮半島の様々な社会から古代日本の倭へ贈られた品々には、いかなる意図が込められていたのか。発掘されたアクセサリーを紹介しながら、海を越える個人や集団の細やかなつながりや、それらを身に着けた人びとの群像を生き生きと描く。
みんなの感想まとめ
古墳時代のアクセサリーを通じて、古代日本と朝鮮半島の多様な交流の歴史が鮮やかに描かれています。特に、垂飾付き耳飾りや冠、飾り帯などの貴金属アクセサリーは、製造地の特徴を反映し、葬られた権力者の背景や外...
感想・レビュー・書評
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古墳の研究はその手法も多種多様で奥が深い。文献からのアプローチ、石室の作り、埴輪、副葬品などなど、墓誌のない巨大な建造物を、研究者はあらゆる角度から調査し、推論を立てていく。
特に奥が深いのが副葬品だ。骨、武器、甲冑、鏡、土器などとその範囲は幅広く、年代や地域ごとに差異があるため、研究者は各地の古墳の副葬品を知り尽くした上で比較し、被葬者の特定を進めていく。
特定とはいうが、これはほとんど終わりや正解のない作業だ。古墳には墓誌がないため、いくら副葬品や文献と照らし合わせたとしても確定に至ることはほぼありえない。古墳時代の文字資料の少なさはこのような厳しい制限を学者達にかけている。だからといって彼らは思考を放棄したりはしない。制限があるからこそ、学者は一つ一つの副葬品を丹念に調べていくのである。本書はそんな真摯な学者の一人による、古代のアクセサリーの詳細な記録だ。
副葬品における耳飾りの存在は知っていたが、ここまでそのデザインが多彩であるとは知らなかった。新羅、百済、高句麗、大伽耶とそれぞれの国ごとの基準を忠実になぞったものもあれば、各国の要素を組み合わせた逸品もあり、そのパターンは無限に広がる。この多種多様なパターンに大国小国の外交戦略が透けて見えるのが実に面白い。新羅と大伽耶の境界に位置する国の古墳には、両大国のデザインを折衷した耳飾りが副葬されていたという。また、倭のとある古墳に副葬されていた耳飾りの中には、大伽耶に特徴的な中間装飾の鎖を更に付け足した、長鎖の品があった。送る側が受け取り手に合わせてデザインを変更したのか、それとも出向した工人が受け取り手の希望に沿って製造したのか、詳しいことはわからないとのことだが、豊富で濃密な情報がこれらの逸品から溢れ出してくることは確かだ。これらのほんの小さな耳飾りは、古代外交における様々な光景の蓋然性を高めてくれる。
それにしても、なんと新羅の金属加工の技術は高かったことだろう。各国の耳飾りのデザインはどれも優れており、優劣をつけるのはナンセンスだとは思いつつも、やはり新羅の耳飾りの美しさは群を抜いていると言いたくなる。
中間装飾に空球や鎖を使う大伽耶や百済に対し、新羅は多彩な趣向を凝らす。小環と呼ばれる小さな輪をいくつも繋げて溶接し、立体的な装飾を作り出す技は、如何に金が柔らかいといえども熟練した工人でなければ成し得ない秘技であろう。無数の輪からなる物体は、まさにそれ自体が円環の理を表す小宇宙のようで、息を呑むような美しさがある。耳飾りなどに代表される新羅のアクセサリーは、隣国を帰属させ支配下に置くために地方有力者に贈られたとのことであったが、これほどの逸品を渡されてしまっては、わざわざ抵抗する気も失せてしまったのではないだろうか。
半島の三国時代において後進国とされ、中国南朝からは倭より下の扱いを受けていた新羅であったが、上記のような高い技術力を元手に倭と頻繁な外交を行っていた。『日本書紀』において敵対国として扱われていた新羅であるが、新沢千塚古墳にて発掘された副葬品や、筑紫君磐井の勢力範囲である北部九州の遺跡での発掘品は、実際の仲は別としても両国における頻繁な交流が行われていたことを示している。
沖ノ島では6世紀中頃の新羅の指輪が見つかっている。つまり新羅による伽耶諸国征服の後も、倭と新羅の交流は続いていたことになる。副葬品は文字が保存しきれなかった情報の多くを現代に甦らせてくれる。
6世紀前半の百済王である武寧王、その陵墓の副葬品は百済製のアクセサリーであったか。否、実はそのほとんどが新羅製なのである。新羅が律令や官僚制を導入して強国化し、伽耶諸国を巡っての軍事的緊張が続いていたこの時期の百済王の副葬品に、まさか敵国の装飾品が用いられていたとは驚きだ。
「不安定な心の状態だからこそ、アクセサリーを送り合って平穏を保とうとするんじゃないですか」
エピローグにおける著者の同僚の言葉は深く刺さるものがあった。この時期の外交の本質をついているように思えてならない。
本書は各国の装飾品をなるべく多く写真で紹介し、細かく解説を加えてくれている。さらに途中途中でおさらいをし、問題を出してくれるので、読み終わる頃には多種多様なアクセサリーがどこの国のものなのかわかるようになっている。副葬品鑑定の入門書としても使える優れものだ。大国同士の関係だけでなく、小国の駆け引きも見えてくる本書は、古墳時代の日韓関係をミクロマクロに知る上であまりにも有用である。私は図書館で借りて読んだが、これから読む方はしっかり購入して何度も読み返すことを強くお勧めしたい。
余談になるが、本書は栄山江地域における前方後円墳についても言及している。百済による同地域の支配の前後にかけて建造されていること、副葬品に倭の広帯二山冠と百済製の副葬品が送られていることから、百済倭系官僚説に寄った結論を出している。私も同意見だ。考古学においては安易な回答を下すことは極力避けねばなるまい。現代の我々が思うほど古代の交流関係は単純でなく、複雑に入り乱れているのである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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「歴史の中のひとりひとり 高田貫太 (考古学)」を読んで、他の著作も読みたくなった、、、
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PR誌『本郷』最新号(154号)のご案内 - 株式会社 吉川弘文館 安政4年(1857)創業、歴史学中心の人文書出版社
http://www.yoshikawa-k.co.jp/smp/news/n41907.html2021/07/11
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垂飾付耳飾り、冠、飾り帯、飾り履など、朝鮮半島由来の(日本の)古墳時代のアクセサリーを通じて、5・6世紀の倭と古代朝鮮の多様な交流の歴史を描く。
アクセサリーが紡いだ古代の日朝関係の多様な姿について理解が深まった。大学では考古学を専攻していたが、古墳時代のアクセサリーについては知識に乏しかったので、その点でも勉強になった。被葬者が新羅の王族である可能性も高い新沢千塚126号墳の事例が特に興味深かった。 -
【静大OPACへのリンクはこちら】
https://opac.lib.shizuoka.ac.jp/opacid/BC06811580 -
古墳に副葬された垂飾付き耳飾り・冠・飾り帯・飾り靴の貴金属アクセサリーは古代朝鮮由来の物で、新羅・百済・加耶それぞれ製造された地の特徴があることから、葬られた権力者がどこの古代朝鮮の勢力と関係を持っていたかが判別できる。倭王権のような大きな外交史では見えない、数多の地方領主がそれぞれに朝鮮諸国と交渉を頻繁に行っていたことが良くわかる。
著者プロフィール
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