〈武家の王〉足利氏 (歴史文化ライブラリー 525)

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  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642059251

作品紹介・あらすじ

南北朝から戦国時代にかけて、足利氏は実力を失いながらも将軍であり続けた。なぜ武士たちは足利氏を認めたのか。武家の王=足利氏とする序列意識「足利的秩序」がどのように成立し、維持され、崩壊していったのかに焦点をあて、吉良・斯波・新田氏ら一門の系譜から足利氏の存続と滅亡の謎に迫る。そして250年にわたる「足利時代」を再考する。

感想・レビュー・書評

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  •  "いま、足利氏が熱い"というフレーズで始まる本書は、なぜ無力だといわれる将軍(足利氏)が戦国100年を生き抜けたのか、なぜ傀儡だったとしても大名たちの頂点に君臨し続けられたのか、について回答しようとするものである。
     著者は大別、「共通利益」からの説明と、「共通価値」からの説明とがあるとして、自らは「共通価値」からの説明、具体的には、足利氏を「武家の王」とする秩序意識・序列意識がどのように成立、維持され、そして崩壊していくのかを解き明かしていくとする。

     政治学的には支配の正統性根拠如何ということになる。足利氏側からすれば、"力"プラス"イデオロギー"による足利別格化の努力になる訳だが、著者は受け手となる大名側がどのように認識していたのか、実態はどうであったのかを、史料によって明らかにしていく。

     時代的にいうと、14世紀末ごろに将軍家絶対化が確立し、それに伴い、さらに足利一門とそれ以外の一門との序列化が進んだ。そのような例を、著者は中央のみならず東国、関東、九州等の地方における儀礼の序列や席次、敬称などを紹介しつつ説明していく。

     閑話休題。大事なことだが、山名氏が足利一門に属することを初めて知った。系図にあまり関心がなかったのだが、一門を考える際には系図は必須のものなのが良く分かった。

     このようにして、足利氏を上位とする足利的秩序が成立し、戦国時代にも維持されていた。将軍の首のすげ替えは、他の足利一門の者を充てるだけだから、当該秩序は維持されている訳だ。ところが、三好長慶、織田信長は将軍を必要とせずに支配を行った。どうしてそのような事態になってしまったのか?実力主義に舵を切らざるを得なかった将軍が、自らの拠って立つ基盤を掘り崩してしまい、共通価値を失わせてしまったからではないか、すなわち「上からの改革」が原因ではないかというのが著者の結論である。

     エピローグの"足利時代再考"が.全体構成からはやや浮いて感じられたし、また、他時代・他地域での議論や隣接諸分野の成果を積極的に取り入れようとしている意欲は分かるものの、少しつまみ食い的に思われたところがある。
     しかしながら、非常に興味深い大きな論点に正面から取り組んでいるところは素晴らしいし、叙述も一般読者にとって親切な、平易な語り口で論述されていて、足利時代についての理解がだいぶ進んだと思う。

  • 電子ブックへのリンク:https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000104171(学外からのアクセス方法:1.画面に表示される[学認アカウントをお持ちの方はこちら]をクリック→2.[所属機関の選択]で 神戸大学 を選んで、[選択]をクリック→3.情報基盤センターのID/PWでログイン)

  • 戦国末期まで足利将軍が曲がりなりにもなぜ存在しえたのかについて、隣接学問分野の政治学などを援用して、これまで言われてきた武将たちにとっての紛争調停機能などの共通利益よりも、足利氏が儀礼を整備して社会に行き渡らせた足利血統の尊貴性という共通価値に理由を求めることが提案されている。義満期までは足利家を打倒しようとする勢力が出てきたが、権威が確立してからは反抗勢力も足利家の人間を推戴するようになり、将軍個人は滅しても足利氏の血統は存続し、将軍家のみならず源義国以降の足利一門という血統集団が優遇される身分制によって足利の秩序が確立された。しかしその体制は将軍家自らが延命のため一門の血統よりも実力を重視する方針を取ってしまったことによって皮肉にも権威を否定してしまい崩壊を招いたという。
    当時から足利一門である新田氏が、太平記史観によって後世では一門ではないという認識になったとされるが、太平記がそのように仕向けた理由が気になる。

  • 足利的秩序とは何か?
    足利将軍といえば学生には無縁、歴史好きでも
    3人程度認識という体たらくだが、250年継続
    したその理由は、明石散人の作品で支配体系が
    義教の時に完成したからとあったので行政組織
    だと思っていた
    この本を読み「足利しか勝たん」という価値観
    こそが支配体系の最重要ポイントだと分かった
    信用を無くした政治家に価値が無いように、足
    利一門に憧れ近づきたいけど厳然と立ちはだか
    る血統、創業以来「暴力」で他を圧倒し、繰り
    返される「儀礼実践・宣伝工作」で足利を頂点
    とする絶対思想が全国の武士に浸透し、武家の
    王という絶対者による統治が250年続いた

    三好・織田・羽柴が湧いたから幕府が潰れたの
    ではなく、義輝が絶対者である足利を脆弱にし
    てしまったのだ
    (力のある者にも許さなかった立場を与えた)
    絶対「足利」に成れないと考えもしない立ち位
    置に「力さえあれば成れる」と思わせてはイケ
    なかった(織田が生まれてしまう)

  •  室町幕府中期以降戦国時代を経る社会情勢の中、室町殿そして鎌倉公方の足利家がどのような立ち位置にあったのか、共通利益と共通価値をキーワードにしてその実像を探るものである。内容としてそれほどの新発見があるものではなかったが、大きな見取り図としての整理にはなるだろうか。戦国時代を題材とした大河ドラマを観るときなどは多少の予備知識にはなる。

  • 東2法経図・6F開架:210.46A/Ta87b//K

  • 書評はブログに書きました。
    https://dark-pla.net/?p=1814

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著者プロフィール

一九八四年兵庫県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士程単位取得満期退学。博士(文学)。現在、東京大学文学院研究員。主要求業績:『中世足利氏の血統と権威』(吉川弘文館、二〇一九年)、『〈武家の王〉足利氏―戦国大名と足利的秩序―』(吉川弘文館、二〇二一年)、『分裂と統合で読む日本中世史』(山川出版社、二〇二一年)など。

「2022年 『南北朝の動乱 主要合戦全録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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