木戸孝允 (幕末維新の個性 8)

著者 :
  • 吉川弘文館
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本棚登録 : 71
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642062886

作品紹介・あらすじ

幕末の桂小五郎と明治の木戸孝允の一身二生。倒幕の志士から新時代の政治家へ変貌していく姿を生き生きと描く。版籍奉還、廃藩置県、立憲制導入など、明治国家の建設に奔走した、木戸の後半生に焦点を絞り、その個性に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 「維新の三傑」の一人、木戸孝允の名を知らない人はいないだろうが、他の二人、西郷隆盛と大久保利通に比べると、どうも地味だ。これはつまるところ、彼自身の個性とその業績が日本人の集合的記憶(歴史観)の中にうまく位置づいていないということなのだと思う。とりわけ、維新後の新政府における木戸の業績は一般にあまり知られていない。本書が焦点を当てるのはその部分、つまり「政治家・木戸孝允」の側面である。

    維新後の彼の国家構想は、略言すれば天皇を中心とした中央集権体制の確立であり、これに基づいた新たな中央―地方関係の構築である。むろん彼の構想にも変遷はあり、特に岩倉使節団の副使として米欧を巡遊した経験は深刻な意味を持っただろうが、それ以前に彼が主導した「版籍奉還」「廃藩置県」あるいは「五箇条の御誓文」においても上記の構想の一端を見ることができる。維新後の木戸孝允の十年は、彼のがもともと持っていたヴィジョンが実際の政権運営や外遊を通してより具体性を持って立ち現れてくる十年だったといえるのではないか。

    本書はその一連のプロセスを知るのによい本である。そしてまた、一般の読者にとっては貴重な一冊でさえある。そもそも、木戸孝允を主題とする本はなぜか少ない。彼は日記・書簡のたぐいを大量に遺しており、これらは幕末維新史における基礎史料とされる。したがって、アカデミズムにおける研究には十二分の蓄積があるだろうし、本を書く上での材料に不足のあろうはずがない。ところが、本が出ない。特にその人物を知るうえで真っ先に読まれるべき評伝がない(古い本はあるが絶版して久しい)。これは木戸の業績に鑑みて、極めて不当な事態ではないか。

    そのような状況だから、本書の存在は実にありがたい。とはいえ、前述したように本書は維新後の木戸の活躍をフォーカスするもので、幕末期に至るまでの前半生にはプロローグで触れる程度である。十全な評伝の出版が望まれる。また、本書は文章が少々生硬で、一般向けの割に読みにくいところがある。随所で引用される木戸の日記・書簡については、著者のほうでもう少し意味上の注釈ないし補足を入れてくれてもよかったのではないかと思う。

  • 木戸孝允の、特に維新後の後半生にスポットを充てた評伝。いざという大事な会議に木戸はいない、というキャラづけはそうなのかと思いつつ読んでいた…のだけど、全体としては自分でもびっくりするくらい読み進まず。ちょっと読んではすぐ飽きて、読み終えるのにやたら時間がかかってしまった。どうしてそうなるのか…起承転結が感じにくいからなのか。ただ評伝なんだから物語性をやたら持たせてもそれはそれで問題なのだが。あるいは、僕は個人を追いかける評伝というジャンルがそもそも苦手なのかもしれない。ぼくが歴史を考えるとき、あまり一個人にクローズアップするという手法はとらないし。

  • 正直、木戸孝允のことは歴史の授業以上のことは知らなかったし、他の小説などに出てくる木戸像(ひがみ、愚痴、神経質)を想像していたが、本書はその印象を全てではないが解消してくれた。
    明治期の役職名など、解らない部分もあったが雰囲気でなんとか読了した。

  • 維新の三傑の中でもぱっとしない、歴史小説では「陰気、優柔不断」で片付けられてしまう木戸孝允の人物像を探る上でこの本はとても読みやすい。(分かりやすい)
    こういう本にありがちな、鼻についたり難解だったりする部分が全く感じられないから私は著者の書き方が何より好きだったりする。
    著者の木戸孝允にまつわる論文もとっても面白いので重ねておすすめです。

  • 買って、まだきちんと読んでないけど5つ星。
    明治時代の木戸公のことがメインに書かれている現在唯一の本。表紙の写真、コレを選んだ出版社の方、ありがとう。今後も、この写真で普及しますように。(「松菊木戸公伝」巻頭1ページまるまる使ってある写真だから、教科書とか歴史書は、この写真をメインにしたらいいと思う。)
    松尾氏、研究してくれて本当にどうもありがとう!!と言いたいです。

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著者プロフィール

中央大学文学部教授

「2012年 『多摩の近世・近代史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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