南北朝の動乱 (戦争の日本史8)

著者 :
  • 吉川弘文館
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642063180

作品紹介・あらすじ

日本が経験した未曾有の大転換期=南北朝時代。二つの朝廷と複雑な勢力抗争が絡んだ動乱はなぜ全国に広がり、半世紀以上に及んだのか。個性豊かな人物像とその時代に迫り、南朝が大きく顕彰された近代史にも言及する。

感想・レビュー・書評

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  • 通史というよりは、個別のトピックについて解説している。

  • 戦争の日本史シリーズの8巻。正中の変から足利義教まで。南朝の描写が少ないのは時代全体を扱う以上やむなしか。ただ事件を追うだけでなく、社会構造の変化や対外関係への言及もあって良かったと思う。

  • 足利中心の記述で、人気のある南朝系武将、楠木正成とか新田義貞とかの記述は殆ど無い。鎌倉幕府が潰れるのは一瞬(尊氏挙兵から3ヶ月くらい)で、その後の南北朝の動乱が延々と続くから、歴史的な影響はそっちのほうが大きいわけね。
    まぁ、尊氏・直義の対立を始めとして、北朝武将の南朝を巻き込んでのぐちゃぐちゃ感はちょっとうんざりするので、イマイチ人気のないのは納得できるが...

  • 戦争の日本史というシリーズで、南北朝時代について書かれたもの。書かれている時代としては、後醍醐天皇の一回目の鎌倉幕府倒幕運動である正中の変から、南北朝時代を過ぎて、足利義満の治世までに及んでいる。この時代を描こうとすれば、どうしても合戦を中心とした描き方になる。例えば建武の新政や足利政権の統治構造については、触れるところは少ない。半済令を通じて幕府と守護の権力の増大が語られるくらい。その意味では戦争の日本史のシリーズにあっているが、最後の足利義満のくだりはシリーズの趣旨から離れるだろう。

    記述としては後醍醐天皇や足利一門を中心として、元弘の変、南朝成立、観応の擾乱、正平の一統、明徳の和約を通時的に描いている。ときおり、九州や陸奥の動きについても言及されている。特徴としては、単なる通史ではなくてその時代を動かした背景を探っているところ。後醍醐天皇や足利尊氏が出てきて、いきなり鎌倉幕府を倒したわけではなく、それを導くような時代背景があった。そうだからこそ、様々な人物が倒幕運動に参加したわけだ。例えば著者は、美濃国船木荘只越郷の惣領家と庶子家の確執を何度か取り上げ、日本社会にみなぎり始めた秩序や束縛からの解放願望を描いている(p.16-19)。さらに、観応の擾乱についても、それは足利尊氏と足利直義の単なる壮大な兄弟喧嘩ではない。これは全国的に蔓延していた急進派と守旧派の対立が爆発したものであり、それが急進派を足利尊氏、守旧派を足利直義に代表させて現れているのだ(p.68f)。第二次世界大戦後の冷戦構造のようなものだ。

    合戦を中心とした記述の中では、僧がなした役割が目に留まった(p.130-139)。南北朝の動乱において僧は大きな役割を果たしていて、それは例えば護持僧という、その法力によって特定の人物を守護する役割を担った僧に見られる(いわば個人専属の祈祷師)。後醍醐天皇の護持僧である文観、足利尊氏の護持僧である賢俊が主要人物(双方とも真言宗の僧)。彼らは単なる宗教的活動をしたのみならず、朝廷と武家勢力をつなぐ役割、また軍事戦略上のアドバイス、果ては寺社勢力への影響力をもって軍勢を動員したりしている。護持僧の立場は魂の平安を願う通常の宗教行為でもなく、それまでの鎮護国家の観念のもとにもなく、当の本人たちにも困惑した感情があったようだ。

  •  南北朝内乱の展開過程を表面的な政局史・制度史・軍事史にとどまらず、社会構造の変容や思想・文化・宗教・国際関係と絡めて立体的に叙述している。逐次史料論拠を明示し、しばしば研究史にも言及しているのが特徴。

  • ともすると分かりにくい南北朝時代を、素晴らしい筆致で博覧強記に最新の研究成果も取り入れながら丁寧に描いています

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著者プロフィール

1949年、長崎県生まれ。九州大学大学院博士課程中途退学。福岡大学名誉教授。文学博士(1985年 九州大学)。専門は中世日本の政治と文化。著書に、『太平記の群像』『闇の歴史、後南朝』『室町幕府崩壊』(角川ソフィア文庫)、『足利尊氏』『足利直義』(角川選書)、『南朝全史』(講談社選書メチエ)、『戦争の日本史8 南北朝の動乱』(吉川弘文館)、『後醍醐天皇』(中公新書)、『増補改訂 南北朝期公武関係史の研究』(思文閣出版)など多数。

「2023年 『足利義満』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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