鉄砲とその時代 読みなおす日本史 (読みなおす日本史)

  • 吉川弘文館 (2012年6月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (238ページ) / ISBN・EAN: 9784642063838

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  • 27510 図書館

  • 今こそ読みなおす不朽の名著。
    終章「死生観をめぐって」を増補。よみがえるキリシタンの世紀
    南蛮より伝来した鉄砲とキリスト教は、戦国の社会に大きな影響を与えた。信長・秀吉と天皇の関係、織豊政権下の武将、民衆や文化に光を当て、近世のあけぼのを書き出した名著。書き下ろしの「終章」を増補する。
    原本は1981年の刊。
     本書の主な内容
      概観 近世のあけぼの
      1 キリシタンの世紀
      2 信長・秀吉と天皇
      3 織豊政権下の武将像
      4 民衆から見た時代の様相
      5 文化の伝統と断絶
      終章 死生観を巡って

     三鬼清一郎氏というと、山本博文氏の著作『天下人の一級史料―秀吉文書の真実』(柏書房、2009年)について、批判をおこなった人という事しか知らなかった。これは、氏の著書に一般向けの著作(私の定義だとリーズナブルな本)が無いことによる。
     今回、吉川弘文館の埋もれてしまった良書を発掘するシリーズ「読みなおす日本史」より、三鬼氏の著作が出版されたため読んでみた。

     はじめにでは「いまのわれわれは、近代的な発想や感覚に慣れ、浸りきっており、それですべてを処理しがち」であり「ともすれば忘れがちのわれわれは、現代風の感覚で四〇〇年まえの姿をみようとしているのではないだろうか」と注意を促している。これは重要な視点であり、当たり前ともいえるが、往々にして忘れがちになってしまう。
     
    以下、備忘的に。【】内は感想
    p27長篠の戦いで、信長は三〇〇〇挺の鉄砲隊を三段に分け、前方に柵を設けて待ちうけ、交互に発射して隙を与えず、武田勝頼の率いる甲州の騎馬武者に壊滅的打撃を与えた話は有名である。ただ、鉄砲は一〇〇〇挺だったという記録もあり、それらをどこで調達し、どのように輸送したかといった点もあきらかでない。長篠の地理的条件などと合わせて、さらに検討が必要であろう。【30年前の著作としては、慎重な記述であると好感を持った】
    p141この時期の年貢は「二公一民」であったと一般的に理解されているようであるが、(中略)つねに収穫高の三分の二を年貢高として徴収するためのものではないことに注意する必要がある。【これは知らなかった】
    p148秀吉は全国の大名に対して、朝鮮へ召し連れた船頭や加子の大半が死んだので、浦々に残っている一五歳から六〇歳までの漁夫全員を肥前の名護屋に送るべきことを命じている。【これも知らなかった。凍死者や戦病死者が多かったとのこと】
    p173安土の宗論は、(中略)南禅寺の僧が判者であったが、信長の意をうけており、勝敗は最初から決まっていた。【信長が法華宗を弾圧したという味方には違和感がある。むしろ法華宗側が議論を仕掛けたのでは】
    p188日本人はキリスト教を、天竺渡来の仏教の一派としてとらえ、
    【当初は、教会側もこうした風潮を利用したが、のちにはこの誤解を解くことに懸命になったとのこと。秀吉は当初、八宗九宗(仏教の八つの宗派に、キリスト教が加わり九つの宗派になった)という感覚だった。】

    織豊時代が俯瞰して読めるが、残念な点もある。30年ぶりの復刊であるが、手が入っていないことだ。執筆当時に比べ、定説が変わった部分があると思われる。現在どうなのかを補注を入れるなど解説して欲しかった。埋もれてしまった良書を発掘するという心意気は買うが、出版社の手抜きかと邪推してしまう。巻末の研究の手引きで取り上げられた本も、現在では、入手困難なものが多く、残念な気がした。鉄砲としの時代というタイトルはややミスマッチか。この時代に興味のある方には一読の価値があると思う。

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著者プロフィール

三鬼清一郎

名古屋大学名誉教授。1935年、東京生まれ。東京大学文学部卒業。同大学大学院博士課程満期退学。名古屋大学教授、神奈川大学特任教授を歴任。専門分野は日本近世史。著書に『鉄砲とその時代』『織豊期の国家と秩序』『豊臣政権の法と朝鮮出兵』など。

「2019年 『大御所 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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