島原の乱とキリシタン (敗者の日本史 14)

著者 :
  • 吉川弘文館
3.75
  • (0)
  • (3)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 36
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642064606

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 島原の乱は日本最大規模の内戦・一揆である。天草でも一揆が起きており、島原・天草の乱や島原・天草一揆とも呼ばれる。島原の乱には以下の三要素がある。
    ・重税に耐えかねた農民反乱
    ・キリスト教弾圧に対する宗教戦争い
    ・没落した武士による戦国時代最後の合戦

    伝統的な歴史観ではキリスト教弾圧への反抗という側面が強調された。しかし、これは島原藩主が自己の圧政を誤魔化すために切支丹の問題と喧伝した面がある。これに対してポルトガル商人は過酷な税収奪に対する農民反乱との見方であった。ローマ教皇庁も島原の乱の犠牲者達を殉教者とはしていない。レオ林田助右衛門らとは扱いが異なる。島原の乱への冷たさには、ローマ教皇庁にも支配者への反抗を悪とする封建領主的価値観があったためである。

    伝統的な歴史観への反動として、さらには唯物史観のように社会経済的要素を重視する立場からは、宗教だけで説明することを嫌い、過酷な政治への反発を強調する傾向がある。その後、改めてキリスト教の問題も重要と見直されるようになった。

    島原の乱は宗教の自由を求める民衆運動でもあった。「近代の日本に、民主を求める動きが高まっていった歴史の河をさかのぼると、島原の乱に行き着く」(上別府保慶「今につながる島原の乱」西日本新聞2020年5月28日)。

    ヨーロッパでは三〇年戦争などの宗教戦争の悲惨さから信教の自由が自由の金字塔とされるようになった。日本の島原の乱も同じように位置付けることができる。島原の乱の教訓は「信仰の自由や思想信条の自由を害するようなことを強要してはならない」となる。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

1941年、北海道生まれ。1971年、上智大学大学院研究科博士課程単位修了。現在、東京大学名誉教授・文学博士。 ※2020年2月現在
【主要編著書】『日本キリスト教史』(吉川弘文館、1990年)、『ペトロ岐部カスイ』(教文館、2008年)、『キリシタンの文化』(吉川弘文館、2012年)、『島原の乱とキリシタン』(吉川弘文館、敗者の日本史14、2014年)

「2020年 『ルイス・フロイス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

五野井隆史の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×