沖縄返還と通貨パニック

  • 吉川弘文館 (2015年1月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (216ページ) / ISBN・EAN: 9784642082662

作品紹介・あらすじ

沖縄返還によるドルから円への通貨交換の直前、日本政府は「ニクソン・ショック」により交換レートを切り上げた。手持ち資金が減り混乱に陥る沖縄の人びと。その損失を抑えるため、琉球政府と日本政府が極秘で計画した貨幣史上類をみない「ドル確認作業」…。通貨交換、物価上昇の中で苦汁を舐めた沖縄の九か月間に迫り、今も続く闘いの源を探る。

みんなの感想まとめ

通貨交換を巡る沖縄の歴史とその影響が描かれた本書は、沖縄返還前夜の混乱や、ドルから円への切り替えがもたらした経済的な波紋を深く掘り下げています。特に「ドル確認作業」という極秘の計画は、沖縄の人々が直面...

感想・レビュー・書評

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  • 「通貨パニック」をタイトルに謳ってるけどそれだけじゃない。
    1ドル支配体制の揺らぎ
    2沖縄返還前夜
    3ニクソン・ショックの波紋
    4ドル通過確認
    5ドルの凋落と沖縄返還

    通過確認が必要になるまでの経緯と、それから沖縄が返還されるに至る経緯とその間の沖縄の民衆の感情 網羅的に解説。

    にしてもハイライトは通過確認。円引き上げによる県民の損失を回避すべく秘密裏に計画し実行された空前絶後のプラン。
    関係者に通底するのは、気概。
    これをやるしかないんだと。
    副主席山中さん、米国民政府の息がかかった琉球銀行も、「面白い。やろうじゃないか」と協力する。前日にマスコミにすっぱ抜かれたら、会見して「遺憾だが中止する」と怒りの表情を浮かべながら裏では実行に向けた画策を進める。
    発表前夜の副主席と大蔵の攻防、そこから山中長官の強行突破による逆転。通過確認法案が議会に提出された時には、すでに確認作業班は離島に向けて出発しているー。

    めちゃくちゃ面白いし凄すぎんか。

    この熱量は、二章で紹介された首里高校でのコザ暴動討論集会での発言に帰結する。
    「現在置かれている沖縄の状況や教育制度などに無関心で何らの意思表示もしないのはいけない。この集会を機会にわれわれの抱えている問題を考え行動に移さなければならない。」

    今の僕らに僕にあるだろうか、この気概。
    考えるだけでも、読むだけでもダメだ。

  • 沖縄に暮らす人々の歴史を知りたく手に取った本。
    「アメリカはこれまで佐藤政権、全体として自由民主党本流の指導力と取引してきた」→日本とは、敗戦から今までアメリカの養分だなと思う。軍事費や思いやり予算、外資への市場開放を通じて、少しずつ搾取されている。キッシーが軍事費をGDPの2%にすると宣言してこれから控える増税。ふざけるなと思う。しわ寄せが一番大きく出ている、出てきたのが沖縄なんだろうな。
    全体を通して筆者の主権なき国家への怒りを感じる。共感。

  • 東2法経図・6F開架:219.9A/Ka11o//K

  • 1971年8月、ニクソンが米ドルと金の兌換停止を発表すると、日本政府はしばらく躊躇した後、円のドルに対する切り上げに踏み切る。しかし、10か月後に本土返還を控えた沖縄住民は堪らず、旧レートの360円でのドル円交換を要求する。この主張は、通貨フロート制の世界にならされた現代人にはわかりにくい。為替に損得は付きもので、例えば数か月前のスイスフランショックでポジションが吹き飛んだFXトレーダーが損失補填を要求するのか、という感じだろう。

    しかし、1971年当時は二十年以上続いたブレトンウッズ体制下にあった。1ドル=360円というのは必ずしも経済的な価値や均衡で決まったものではなく(1940年代と70年代で日本円の価値が同等である筈はない)、米国を中心とする国際金融体制に従属するという政治的意思表示である。であれば、沖縄住民の要求も、政治的主張としては一考の価値があるということになる。

    おそらく、この通貨確認を巡るくだりが本書の山場なのだろうけど、その前後に配置したエピソードとの関連性がわかりづらく、残念ながら本としての完成度は低い。1971年10月の通貨確認は360円と305円の差額を後日補償するためのものだったと思うが、1972年5月の通貨交換を述べた次章では「305円の恨みの交換レート」とある。結局のところ、補償はなされたのかなされなかったのか、極めてわかりづらい。1971年10月以降の入手ドルは補償されなかった、あるいは狂乱物価でそれどころではなかった、ということを言いたいのだろうか。

    「沖縄の苦しみ」には本土の者は耳を傾ける必要がある。その重要性は、本書のような本を読むを改めてよくわかる。しかしながら、感情的な主張だけに傾斜してしまっては得られる理解も得られないのではないか。そういう発信力の不足のような要素も、今日の普天間返還問題を巡る本土と沖縄の温度差に繋がっているのではないか。そういうことも含めて考えさせる一冊だった。

  •  沖縄返還の際に、通貨もUSドルから日本円へと換えたが、その直前にドルショックで1ドル360円が305円になってしまった。住民にとっては手持ちの金が15%も減るので一大事である。
     そこで、琉球政府の数人と日本の山中貞則総務長官の間で密かに360円での交換を密かにもくろみ、見事に実現させたという話である。ばれると投機の金が入ってくるので本当に数人で事を運んだという実話で、山中貞則はこんな時代から活躍していたのかと驚いたし、いい仕事したと感心もした。
     史実として実におもしろい題材であるが、筆者が琉球人であるせいか琉球に肩を持った主観的な記述が多いのが気になった。そのことによって見方が偏っているような気がして、本書のおもしろさが半減してしまったのが残念である。

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著者プロフィール

1949年 与那国島に生まれる。1986年 法政大学大学院人文科学研究科博士課程修了。元琉球大学法文学部教授。専攻 沖縄社会経済史 2022年、没。
【主な著書】『沖縄・一九三〇年代前後の研究』(藤原書店、2004年) 『沖縄 空白の一年 一九四五-一九四六』(吉川弘文館、2011年) 『沖縄 占領下を生き抜く 軍用地・通貨・毒ガス』(吉川弘文館、2012年)

「2022年 『戦後沖縄生活史事典 1945-1972』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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