日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法

著者 :
制作 : 日本史史料研究会 
  • 吉川弘文館
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本棚登録 : 119
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642082730

作品紹介・あらすじ

古代・中世の史料は「変体漢文」という独特な文章で綴られる。変体漢文を訓読するための、はじめてのガイドブック。演習問題も付す。

感想・レビュー・書評

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  • 「動詞」として立項しておきながら,例文では名詞としての用例しかないものがある。宣・領状など。この事態に当惑し,いささか時間をとられた。
    これから読まれる方は,以上のようなとまどいを感じたら,緒言12頁の「(4)叙述と表記上の注意」を再読せられんことを。どうもこういう編輯方針を述べているようだ。

    16頁:訓読する場合,主語のあとに「者(は)」の字が使われない限り,格助詞「が」や係助詞「は」などを補う必要はない。
    36頁:自身并春宮大夫,不可立行香(自身ならびに春宮大夫は行香に立つべからず)。
    ・36頁の例からすると,16頁に書かれていることは,あくまで大原則で,意味をはっきりさせたいならば,「は」を補う方が良い,と読むべきか?それとも,36頁の例は現代語訳にひきずられて,誤って「は」を入れてしまったのか?

    44頁:「申(もうし~)」…「申行」「申定」などの形で謙譲・婉曲を示す。
    例 先可申定日次 訳=まず,日取りを決定せよ。
    ・いづくのところに謙譲・婉曲かある?

    44頁:(2)形容詞・形容動詞
    ・捉え方・考え方の相違によるのだろうが,例文は名詞(とわたくしが理解する)と
    して使われているものが多い。「無為=無事」「肝要=大事・要」「無道=非道な行為」 と訳して,形容詞・形容動詞として扱っている。

    54頁:有若亡(うじゃくぼう)=こちらの意向を無視した,傍若無人な
    例 官有若亡之故也,
    ・これを中世では「官有るも亡きが若きの故なり」(担当者がいても,いないのと同じだ)とは読まないらしい。訳は「担当者が不適だからである」。「こちらの意向を無視」すると,「不適」と評価されるのだろう。

    77頁:「乎・哉」→や・か。
    ・用例は,「や」のみ三例。「か」の例なし。

    116頁:良(やや)=「良久」の形で,「少し」「ちょっと」の意味。
    ・漢文では(たぶん基本義として)使われる「非常に・はなはだ(長く)」の意味は,中世では使われなかったのだろうか?

    119頁:補天台座主→天台座主に補す=天台座主にも任ぜられた。
    ・漢文訓読のように「補せらる」と,受け身に訓じなくともよいのだろう。

    121頁:動(ややもすれば)=うっかりすると。場合によっては。
    ・これも,漢文とは訓は同じでも,意味は大違いなので,いささかおどろく。漢文では「いつも,ともすれば,つねに」の意。しかし,例文「近代,仁和寺辺悪僧往反,動成悪事也」は,悪僧なのだから,「うっかりすると」悪事をなすというのは,変である。それで,「場合によっては悪事を働く」と訳しているが,漢文的理解の「悪僧がうろついており,いつも悪事をはたらいている」の方が,しっくりいくように思う。いくつか古語辞典をひいてみたが,「うっかりすると」という語義は見えなかった。「うっかりすると」の用例をあげてほしかった。

    123頁:為悦不少者也。→為悦少なからざるものなり。
    ・「悦(び)を為すこと」など開いて読んでいないので「為悦」は決まり文句なのだろう。あるいは「怡悦」と同意か?

    128頁:併(しかしながら)=すべて。それにしても。
    ・「しかしながら」と読んで「すべて」の意を示す例文をぜひ載せてほしかった。「すべて」の意味である場合,漢文訓読では,「併」は「アハセテ」と訓ずるのではと思ったから。/あるいは,「併不可說也」は「それにしても言語道断である」とも「すべて言語道断である」の両方に訳せる可能性があるということか?

    138頁&156頁:因茲→茲(ここ)により,=これによって(このため)
    ・中世では「茲(これ)により」とは読まなかったのだろうか?「ここにより」では,意味が異なってくるように思えるが。

    159頁:勿論事也=それは仕方のない事である。
    ・中世では,「勿論」は,自明のこと,当然のこと,ではないらしい。

    160頁:委先年,受坊城右中弁俊国之口伝了,雖然,又重今日,授世尊寺三品之家説了→委しく先年,坊城右中弁俊国の口伝を受け了んぬ,然りと雖も,重ねてまた今日,世尊寺三品の家説を授け了んぬ,=……坊城右中弁俊国の口伝を受けた。そうであっても,今日また重ねて,世尊寺三品の家説を授けた(授かった)。
    ・「受……口伝」と「授……家説」の主語は同じであろう。あいだに「雖然,重又今日」とあるのだから,「受」と「授」の意味は同じだとおもう。つまり「授」は「さずけた」ではなく「さずかった」であろう。家説を伝授されたのである。であれば,「授け了んぬ」ではなく,「授かり了んぬ」と訓むべきでないかと思うが,これが中世の変体漢文の読み方だと言われれば,門外漢として引き下がるしかない(それにしても,こんな意味と乖離した訓につきあうのは苦痛である)。いや,「授けた」と訳しているのだから,わたくしの理解とは,異なるのだ。しかし,そうすると,著者は「重ねて」をどのように理解したのだろうか?わからん。

    165頁:固・本自(もとより)=もともと。
    ・「固」の用例を示してほしかった。

    184頁:〔解答〕演習問題二の⑧ 「その沙汰有り」
    ・問題文に「有」字なし。

    73頁:候い畢んぬ/184頁⑤:候らい畢んぬ
    ・校正もれ?

    184頁:〔解答〕演習問題三の⑥ 府宜しく承知し,宣に依りこれを行なえ。
    ・「宜しく」で始まっているが,「すべし」で終わらなくとも良い例として出題したものか?

    178頁:演習問題五の問七「可被出状之由」。187頁の解答「状を出さるべきの処」。
    ・「由」=⇒「処」。
    ★また問十二の解答「状を出さるるの間」。演習問題一の⑥「仰せ出さるる」。これらから中世変体漢文では「出」は「いヅ・いダス」とは読まず,「だス」と読むことがわかった。この本で得た大いなる収穫である。

  • 「日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法」苅米一志著、吉川弘文館、2015.03.10
    198p ¥1,836 C1021 (2019.07.28読了)(2019.07.24購入)(2017.09.20/7刷)
    展覧会をよく見ますが、寺社や武将をテーマとした展覧会では、文書が多く展示されます。注目してほしい部分の現代語訳が添えてあれば読みますが、現物のみとか、活字にしたものが添えてあるだけだとなかなか意味を読み取れないので、読むのをあきらめてしまいます。
    ちょっとでも読めたらいいのになあと思って、この本を手に取りました。
    本のカバーには、以下のように書いてあります。
    (本のカバーより)
    古代・中世の資料は「変体漢文」という独特な文章で綴られるが、これを読解する入門書は存在しなかった。史料の品詞や語法を正確に解釈するためのはじめての手引書。豊富な文例に訓読と現代語訳を配置。演習問題も付す。

    古代・中世の資料を読むための手引書、でした。
    また、諸言によれば、
    「くずし字の解読などには一切触れない。あくまで活字の白文を訓読し、その意味を解釈する、という点を専一に追求するつもりである。」(4頁)
    と書いてあります。「くずし字の解読」については、ほかの本に当たるしかないようです。
    「変体漢文」を読むにあたってのポイントとなる言葉を説明してあるので、漢文自体の訓読を学びたいときには、漢文の訓読法を別の本で勉強した方がよさそうです。アマゾンや図書館の蔵書検索で探してみたら、いろいろありそうです。

    ともあれ、この本を読んで、演習問題にも挑戦してみたら、大分読めるようになった気がします。本の後ろに索引もついているので、今後展覧会に行くときは、この本をもっていって、訓読に挑戦してみようと思います。

    【目次】
    緒言
    (1)記述の指針
    (2)方法論について
    (3)参考文献
    (4)叙述と表記上の注意
    Ⅰ 主語・主部
    (1)主語
    (2)主部
    (3)動詞の体言化
    【演習問題 一】主語・主部
    Ⅱ 述語・述部
    (1)動詞
    A 基本的な注意
    B 古文書・古記録に独特の動詞
    C 接頭語
    (2)形容詞・形容動詞
    (3)助動詞
    (4)補助動詞・終助詞
    【演習問題 二】述語・述部
    補足 文書の書き止め文言
    【演習問題 三】文書の書き止め文言
    Ⅲ 修飾語・修飾部
    (1)目的語・目的節
    A 代名詞としての「之(これ)」
    B 目的語を導く語
    (2)副詞と連用修飾
    A 多用される副詞
    (a) 追加・並列を表す副詞
    (b) 程度を表す副詞
    (c) 時間経過・頻度を表す副詞
    (d) 動作の状態を表す副詞
    (e) 論理的判断や主観・客観を表す副詞
    (f) 呼応・叙述の副詞
    B 連用修飾節を導く語
    【演習問題 四】修飾語・修飾節
    Ⅳ 接続語・接続部
    (1)接続詞的に用いられる語
    (a) 順接的な接続
    (b) 逆説的な接続
    (c) 転換
    (d) 条件付け
    (e) 追加
    (f) 弁別
    (2)接続助詞的に用いられる語
    【演習問題 五】総復習
    演習問題《解答》
    後記
    別表 主要な助動詞・補助動詞の複合的な使用と接続のしかた
    頭字索引

    (2019年7月29日・記)
    内容紹介(amazon)
    古代・中世の史料は「変体漢文」という独特な文章で綴られる。変体漢文を訓読するための、はじめてのガイドブック。演習問題も付す。
    (本のカバーより)
    古代・中世の資料は「変体漢文」という独特な文章で綴られるが、これを読解する入門書は存在しなかった。史料の品詞や語法を正確に解釈するためのはじめての手引書。豊富な文例に訓読と現代語訳を配置。演習問題も付す。

  • これまで古文書の漢文は現代語訳がない限り何となくというか、いい加減にしか解釈できず、勉強したいと思っていました。この本で変体漢文なるものを初めて知ったほどですので、通読してどれほど身についたか心許ないですが、繰り返し読んで古文書にも挑んでみたいですね。
    例文が少ないかなとは思いますが、初学者にはいい本だと思います。どんな文字が書かれているのかではなく、どう読むのか知りたい方には勧めたいですね。

  • まず高校漢文を復習することをお薦めします。

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著者プロフィール

苅米一志(かりごめ かずし)
1968年、福島県郡山市生まれ。筑波大学大学院歴史・人類学研究科単位取得退学、博士(文学、筑波大学)。就実大学人文科学部教授。主な編著書として、『荘園社会における宗教構造』(校倉書房、2004年)、「荘鎮守における組織と祭祀」(『民衆史研究』68号、2004年)、「中世前期における地域社会と宗教秩序」(『歴史学研究』820号、2006年)、『日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法』(吉川弘文館、2015年)

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