娼婦と近世社会〈新装版〉

  • 吉川弘文館 (2023年3月1日発売)
3.00
  • (0)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 32
感想 : 2
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (244ページ) / ISBN・EAN: 9784642084253

作品紹介・あらすじ

近世には遊女・芸者・熊野比丘尼、隠売女・飯盛女・夜鷹など、さまざまに「性」を商品化された女性たちがいた。その実態を生活やこころの問題、梅毒や性愛のあり方も視野に入れて描く。性の売り手・買い手が都市下層民まで拡大し、売買春を成り立たせてきた多様な歴史的背景を女性史の立場から探る。現代の「売春」論議にも一石を投じた名著復刊。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  近世の売買春と性愛についての論稿をまとめた一冊。本書の課題を著者は次のようにまとめている。
     1 近世社会における売買春の実態を、売買春を成り立たせているさまざまな歴史的条件を含めて明らかにすること。
     2 近世の売春観ー当該時期の国家や人々の倫理的判断・倫理的対応がどのようなものであったのか―を可能な限り明らかにすること。
    として、特に近世の娼婦を一括りにして平板に扱うのではなく、実態に即して構造的に把握することを目指すとしている。
     
     以下、第2章では、隠売女と呼ばれた私娼について、摘発に伴う裁判記録等からその実態をうかがっていく。奉公契約の形式を取って雇われる場合が多いこと、逃亡防止のために監視・拘束下にあったこと、健康破壊により平均寿命が短かったことなど。

     第3章では、熊野比丘尼が取り上げられる。中世の熊野比丘尼は絵解きと牛王宝印の配布という勧進を行う巫女だったが、近世に入ると絵解きから歌へ変化し、また歌の宗教性が失われ俗化するとともに売色が行われるようになったという。そのような変化はどうして起こったのか?そこには幕府による宗教統制の影響があったとされる。この辺りの著者の考察は非常に面白い。

     第4章では、遊芸を売る女性「芸者」について、丹後の宮津における実態が現地に残された史料によって検討される。そもそも芸者・芸子との呼称が全国的ではなかったらしいが、宮津では、廓内に酌取女と茶汲女の別があった。判明する限りでの年齢や出身地からして、おそらく酌取女は遊芸を身に着けた芸者の側面が強く、茶汲女は売女の側面が強かっただろうとされる。見番や置屋仲間の実態が一部ではあるものの史料から窺われるのは歴史の面白さである。
     
     第5章の近世の梅毒観として、当時の医書等から梅毒についての医学的所見や実際の治療方法について、第6章では、井原西鶴の『好色五人女』を素材にして、近世における恋愛や情愛に基づく性について考察がなされる。

     江戸時代の売買春というと、吉原や島原といった遊郭の世界が中心で、あとは夜鷹のような私娼がいるというくらいのイメージしか持っていなかったが、この時代における実態を学んで、女性の置かれた状況やその悲惨な実態をより具体的に知ることができた。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

1949年、静岡県生まれ。1972年、東京女子大学文理学部史学科卒業。1980年、一橋大学社会学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、神戸大学名誉教授。 ※2023年2月現在
【主要著書】『ジェンダーの比較法私学』(共著、大阪大学出版社、2006年)、『〈江戸〉の人と身分4・身分の中の女性』(共著、吉川弘文館、2010年)

「2023年 『娼婦と近世社会〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

曽根ひろみの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×