谷は眠っていた: 富良野塾の記録

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  • 理論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652071410

感想・レビュー・書評

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  • 感動した。「at your own risk」以前友人に教わったことばがここにあった。自分の責任においてすべてのことをする。

    ここの若者たちは輝いている。それは何も持っていないからだ。あるのは,しなやかでたくましい体とすさまじいまでの精神力。何もないところから創り出す。というとかっこいい響きだが,その闘いたるや筆舌につくしがたい。寒さとの闘い。労働の重さ。労働の後の勉強のつらさ。人間関係の濃密さ。濃密なるがゆえの苦悩。

    山に登るとき,五合目まで車で行って,その後歩こうという人は多い。でもこの若者たちも倉本聰さんはちがう。最初の一歩から丹念に歩き,気の遠くなる裾野から山頂をめざす。中腹にたどり着く頃は,きっと山に登る術を身につけている。きっと。

  • 読んでいる間から身体がもぞもぞしてくる。

    ああ 生きてる!
    この本の中の若者たち、生きてる!

    あたしも、生きたい!

    身体中の細胞が、生命力を帯びて躍動する。

    今の私は、私たちは、生きていても、"本当に"生きていないんじゃないか?

    この足で踏みしめ、この手で掴み、この身体を動かしたい‼
    他人を気にして私らしい想いを殺してしまいたくない。
    空や風や空気を感じたい。
    表現したい。

    そもそも、感じることすらできなくなっていないか?
    感受性って使わないとダメになってしまう、恐ろしい。

    以下、印象に残ったことを引用
    ---------------------
    豊穣は人を知恵から遠ざける。
    豊かさは我々にあらゆることを、金や情報で解決させようとする。
    すべてを金に頼ってしまう時、我々は知恵を使わなくなる。
    ---------------------

    誕生日のプレゼントはいつも「言葉」だった。
    塾生たちに余計な金はなく、だから贈り物を買うことはできなかった。
    誕生日に、誰かがノートを一枚千切り、そこにみんなで寄せ書きをして送った。


    言葉ー
    金を要する贈答品が巷の隅々まで溢れに溢れ、如何に多くの金を使ったかがあたかも誠意であるかの如く、錯覚してしまっている現在、金を使えない貧しいものたちはそれを心で補わざるを得ない。
    心と工夫と。
    そうしてそれらが一片の言葉となり、互いの間を行き交わった時、どんな値の張った贈り物より、それは正確に人の心を打ったのだ。

    ----------------
    目の前の状況に惑わされず、自分の心が正しい、と、感じたものを選んで行きたい。

    生きろ、私。


    倉本聰さんの言葉ってどうしてこんなにむねにしみるのかしら。

  • 「北の国から」の倉本 聰が開いた富良野塾の始まりの記録。
    さながら北海道開拓使を読んでいる感覚になる。
    厳しい自然の中で苦戦しながら小さなコミュニティを作っていく。
    生半可な事ではないな、と思う。

  • 若者が必死に夢に向かってもがいている姿に共感した。こういう気持ち、忘れがち。世の中うまくいかないのなら、流されて生きたほうが楽だって思いがち。でも、何もない雪の森の中に、家を立てて、農業の手伝いで生活しながら、それぞれの夢にむかって必死で生きる。こんなに楽じゃないことを誰が選ぶ?富良野塾の心は持っていたいな。

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著者プロフィール

倉本聰(くらもとそう)
一九三五年東京生まれ。脚本家・劇作家・演出家。東京大学文学部美学科卒業。『前略おふくろ様』『北の国から』『昨日、悲別で』『優しい時間』『拝啓、父上様』『風のガーデン』『やすらぎの郷』など数々のヒットドラマの脚本を手掛ける。七七年からは富良野を拠点に活動。

「2022年 『脚本力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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