狐笛のかなた

著者 :
  • 理論社
4.15
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本棚登録 : 2369
感想 : 368
  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652077344

作品紹介・あらすじ

夕暮れの枯野を火色の毛皮を光らせて駆ける子狐はふしぎな娘に出会った。"あわい"に生まれ、使い魔として生きる野火。"聞き耳"の力を受け継いでしまった小夜。そして、森陰の屋敷に幽閉されている少年小春丸。彼らは、隣り合うふたつの国の、過去の因縁と呪いの渦に巻きこまれていく。孤独でまっすぐな二つの心の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 2013年12月19日 再読


    和物のファンタジーって神秘的で、いちばんベースの部分が洋物の世界観とは異なる気がします。
    やっぱり日本的スピリチュアルって自然との一体感とか神々の在り方とか独特なものがあるのかもね。

    霊狐の野火が聞き耳の力を持つ小夜と出会い、見守り、助けようとするのですが、野火がぜんぜんヒーロータイプじゃないってところがもどかしくて切ないけど好きなところです。
    使い魔とされ呪者に命を握られていても、自分の思いをただ真っ直ぐに貫く姿がいじらしい。
    小夜もヒロインの割に戸惑ってばかりでたいして成長もしません。
    でも、心の揺れと真摯さが愛おしい。

    隣国の長が、領地と地縁と歴史のしがらみに囚われて憎しみあい呪いあうという血なまぐさい中、二人の心の通い合いがとてもやさしくあたたかくて、最終的に依存できるようになれたことがほんとよかったと思えるのです。

    鈴姉さんの相手って結局誰だったのかな。

  •  この物語は、人の心が聞こえる「聞き耳」の力を持つ少女小夜と、呪いをかけられて使い魔にされている狐野火が、隣国同士の領地をめぐる争いに巻き込まれながら、孤独でけなげな愛を育てる物語です。

     隣国同士の領地をめぐる争いは、復讐が復讐をよび、簡単には断ち切れない呪いと恨みの鎖でがんじがらめになっています。
     人間と魔物――しかも呪いを運ぶ霊狐、という普通では決して越えられないハードルをかかえ、しかも呪いの因果に巻き込まれた敵同士の立場として生まれ、それでも小夜と野火は魅かれあいます。ただひたすら一途に相手を思いやります。
     どうしようもない思いって、あります。その思いを守るために、人から見たら、ばかだなぁと思うようなことをしてしまうことも、あります。
     そんなときにしてしまう「ばかだなぁと思うようなこと」は、本当にばかなことなのでしょうか。
     野火は人に見えても、本当は霊狐です。野火と自分はちがう生き物で、生まれたところも、生きるべき場所も違う――冷え冷えとした哀しみを胸の底に抱えながらも、小夜は野火を大切に思います。野火のほうも、狐の姿でいなければ命にかかわるようなときでさえ、小夜の前では人の姿でいたくて変化(へんげ)します。敵同士でも、無理な相手でも、それでもどうしようもない気持ちは、どうすればよいのでしょうか。二人が寄り添えあえる日は、くるのでしょうか。

    心がくたびれてしまったときでも、この本を読むと、少し心が洗われます。大切にしたい気持ちはどんな気持ちだったかを思い出させてくれる本です。心洗われる究極のラブストーリーを読みたい人や、野山の匂いに満ちたなつかしい日本の風景が恋しくなったときに読みたくなる本です。

  • 白井さんの描かれた表紙絵は、狐笛のかなたの世界観そのものでとても美しかったです。野火と小夜が駆けていく春の野の香りを感じられる作品だと思います。

    上橋菜穂子さんの作品に惹かれ、
    精霊の守り人も読んでみたくなりました。

  • 普段あまり本を買うことはなく、図書館をフル活用する派なんだけどこればかりは買ってしまいました。
    もう5回くらい読み返してます。1番好きな本。

  • 桜の季節に思い出して読みたくなる。ようやっと久しぶりの再読。
    新潮文庫版よりこっちを推してやまない。装画と挿画がたまらないのです。カバーとカバー下の差分まで美味しい。

    憎み合う隣国同士、呪者を手札に侵略と防衛、怨みの応酬が繰り広げられる中、呪者に使役される霊狐の野火と聞き耳の少女小夜が出逢い、心を通わせていく物語。どちらかといえばやさしいタッチでありつつ、負の描写も克明にしてみせるなかなかヘビーなお話で、子どもから大人まで色んなスタンスで楽しめると思う(著者の作品はおおむねそうかも)。
    若桜野のラストシーンがとても好き。春の野の幸福な美しさもさることながら、そこに辿り着くまでの野火と小夜の互いを想う心が、物語が進むたびに強く、尊く思われてくるからこそだと思う。呪者の業や、小夜の存在を知った人々の腹の内がおぞましく苦しいほどに、ふたりにはそれらから解き放たれて幸せになってほしくなる。ふたりの愛と献身、春望の選択がこの未来を手繰り寄せてくれて本当によかった。
    小春丸の述懐、大朗の反問が響いて揺れて、でも小夜の笑顔と幸せな一家の姿を見れば、これがいいのだと思える。切なく美しいラストシーンがとても好き。

  • 頭の中に自然と情景が広がっていくような柔らかで綺麗な文章がとても綺麗

    時代設定も違うし、ファンタジーのような雰囲気なのに、何故か懐かしさを感じるのがとても不思議だなと思いながら読み進めていました

    読了後は切なさと愛おしさが込み上げてきて、また読み返したくなるとても素敵な作品

  • 切なく、刹那く、愛おしく。人のしがらみと心の自由と生きていく辛さと温かみが全て詰まった一冊。私にとってはとても大事な物語です。

  • 本を読まない人をかわいそうだなと思うのは、文字を追い、ページをめくっていって、最高の物語の中に入り込めた時におこる、全身が総毛立つような感動を味わえないから。

    総毛立つとか鳥肌って本来は恐怖とか嫌悪感による現象にしか使わないみたいですが、本当に視界の端で前髪がちょっと持ち上がるんです。感動して。

    そうなってしまう本はそんなに多くはないんですが、上橋菜穂子さんの作品は打率が高い。

    「獣の奏者」は私の中では鳥肌本の殿堂入りですが、この「弧笛のかなた」も、時を経ても枯れない本になっています。

    中身も去ることながら、この美しい表紙が大好き。

    児童文学という括りになっていますが、風景描写の美しさ、共感を通り越して我が事のように胸を締め付けられる心情表現、大人も存分に楽しめます。

    子どもに薦めるうえで、「獣の奏者」はあの分厚さから、自分の読書力にある程度自信を持っている子どもじゃないと、開いて物語の中にダイブするまでがなかなか難しいですが、「弧笛のかなた」なら壁が低くて、上橋さんの世界を堪能できるかと思います。

    新潮社版の巻末解説で、小野不由美さん、荻原規子さんがファンタジー作家の代表として挙げられているらしく、すごく頷けました。
    「十二国記シリーズ」「勾玉シリーズ」そして「獣の奏者」が、子どもにお薦めした結果、見事にハマりこんでもらえる鉄板作品なんですよね。

    初読は図書館だったのでブックコートされてて気づかなかったんですが、カバーを外すとまた胸アツなデザインになってて……。
    カバー表紙と本体の裏表紙を対にすると…また涙が………。

  • どこの国かは分からないけど、日本の昔ばなしを読んでいるようななつかしさを感じる世界だった。
    哀しい宿命を背負った野火のまっすぐな想いに胸を打たれる。最後まではらはらしながら読んだ。ファンタジーはあまり好きではないけど、これはよかった。

  • この本も生徒から
    「何かお薦めないですか」と聞かれたときに薦める本の中の1冊です。

    そして続いて「どんな話?」と聞かれると
    「ファンタジーで狐と人間の恋愛」と答えますが、そのあとに少しクドクドと説明をいれます。
    ファンタジーで狐と人間の恋愛と聞くと子どもだましのような印象を受けますが、そこは「獣の奏者」「守り人シリーズ」の上橋さん。
    裏切りません。
    これはもう、生徒だけでなく、教職員の方にもお薦めする1冊です。自信を持ってお薦めできる1冊。
    最後の2ページは目が潤むほどの幸せにあふれていると私は思います。

    『司書の日記』
    今日は高総体2日目。
    2時間授業なのですが、その2時間目終了後に図書室に来る本好きな生徒がいます。
    平日の昼休みの賑わいは、本好きはもちろんのこと、他クラスの友達に会いにとか、昼休みを過ごしにとか様々ですが、こんな今日のような日に来る生徒は本当の本好き常連さんたちです。

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

上橋菜穂子の作品

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