狐笛のかなた

著者 :
  • 理論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652077344

作品紹介・あらすじ

夕暮れの枯野を火色の毛皮を光らせて駆ける子狐はふしぎな娘に出会った。"あわい"に生まれ、使い魔として生きる野火。"聞き耳"の力を受け継いでしまった小夜。そして、森陰の屋敷に幽閉されている少年小春丸。彼らは、隣り合うふたつの国の、過去の因縁と呪いの渦に巻きこまれていく。孤独でまっすぐな二つの心の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 使い魔である霊狐野火,霊狐の命は術者の手の中にある。主に逆らい命をかけて小夜を守る野火の姿に胸が熱くなる。小夜と野火の一途な愛は切なく,奇跡を信じたくなる。

  • 2013年12月19日 再読


    和物のファンタジーって神秘的で、いちばんベースの部分が洋物の世界観とは異なる気がします。
    やっぱり日本的スピリチュアルって自然との一体感とか神々の在り方とか独特なものがあるのかもね。

    霊狐の野火が聞き耳の力を持つ小夜と出会い、見守り、助けようとするのですが、野火がぜんぜんヒーロータイプじゃないってところがもどかしくて切ないけど好きなところです。
    使い魔とされ呪者に命を握られていても、自分の思いをただ真っ直ぐに貫く姿がいじらしい。
    小夜もヒロインの割に戸惑ってばかりでたいして成長もしません。
    でも、心の揺れと真摯さが愛おしい。

    隣国の長が、領地と地縁と歴史のしがらみに囚われて憎しみあい呪いあうという血なまぐさい中、二人の心の通い合いがとてもやさしくあたたかくて、最終的に依存できるようになれたことがほんとよかったと思えるのです。

    鈴姉さんの相手って結局誰だったのかな。

  •  この物語は、人の心が聞こえる「聞き耳」の力を持つ少女小夜と、呪いをかけられて使い魔にされている狐野火が、隣国同士の領地をめぐる争いに巻き込まれながら、孤独でけなげな愛を育てる物語です。

     隣国同士の領地をめぐる争いは、復讐が復讐をよび、簡単には断ち切れない呪いと恨みの鎖でがんじがらめになっています。
     人間と魔物――しかも呪いを運ぶ霊狐、という普通では決して越えられないハードルをかかえ、しかも呪いの因果に巻き込まれた敵同士の立場として生まれ、それでも小夜と野火は魅かれあいます。ただひたすら一途に相手を思いやります。
     どうしようもない思いって、あります。その思いを守るために、人から見たら、ばかだなぁと思うようなことをしてしまうことも、あります。
     そんなときにしてしまう「ばかだなぁと思うようなこと」は、本当にばかなことなのでしょうか。
     野火は人に見えても、本当は霊狐です。野火と自分はちがう生き物で、生まれたところも、生きるべき場所も違う――冷え冷えとした哀しみを胸の底に抱えながらも、小夜は野火を大切に思います。野火のほうも、狐の姿でいなければ命にかかわるようなときでさえ、小夜の前では人の姿でいたくて変化(へんげ)します。敵同士でも、無理な相手でも、それでもどうしようもない気持ちは、どうすればよいのでしょうか。二人が寄り添えあえる日は、くるのでしょうか。

    心がくたびれてしまったときでも、この本を読むと、少し心が洗われます。大切にしたい気持ちはどんな気持ちだったかを思い出させてくれる本です。心洗われる究極のラブストーリーを読みたい人や、野山の匂いに満ちたなつかしい日本の風景が恋しくなったときに読みたくなる本です。

  • 獣の奏者を読んでいたので、読みやすかった。ファンタジーといえども、戦いは武士の時代のようではあるけど、呪術などを操るものがいたり、独特の世界が和製ファンタジーのようで良いです。野火がかっこいいですね。妖狐の物語を探したくなります。

  • 白井さんの描かれた表紙絵は、狐笛のかなたの世界観そのものでとても美しかったです。野火と小夜が駆けていく春の野の香りを感じられる作品だと思います。

    上橋菜穂子さんの作品に惹かれ、
    精霊の守り人も読んでみたくなりました。

  • 普段あまり本を買うことはなく、図書館をフル活用する派なんだけどこればかりは買ってしまいました。
    もう5回くらい読み返してます。1番好きな本。

  • 切なく、刹那く、愛おしく。人のしがらみと心の自由と生きていく辛さと温かみが全て詰まった一冊。私にとってはとても大事な物語です。

  • 小さい時に母親を亡くし、産婆をしている村のおばあさんに引き取られ、成長する小夜。

    小夜を育ててくれたおばあさんが亡くなってから、小夜の運命が動きだします。

    2つの国があり、お互いが恨み合い、片方の国からは様々な呪いをかけられ、その呪いの犠牲になるたびに恨みが増していく感じで話は進んでいきます。

    人と人との恨みあいは、お互いが傷つき、(弱い立場ほど傷が深い)いいことは無い。(繰り返されるなんて、いちばんダメなこと)という事が語られていると思いました。

  • 桜の季節に思い出して読みたくなる。ようやっと久しぶりの再読。
    新潮文庫版よりこっちを推してやまない。装画と挿画がたまらないのです。カバーとカバー下の差分まで美味しい。

    憎み合う隣国同士、呪者を手札に侵略と防衛、怨みの応酬が繰り広げられる中、呪者に使役される霊狐の野火と聞き耳の少女小夜が出逢い、心を通わせていく物語。どちらかといえばやさしいタッチでありつつ、負の描写も克明にしてみせるなかなかヘビーなお話で、子どもから大人まで色んなスタンスで楽しめると思う(著者の作品はおおむねそうかも)。
    若桜野のラストシーンがとても好き。春の野の幸福な美しさもさることながら、そこに辿り着くまでの野火と小夜の互いを想う心が、物語が進むたびに強く、尊く思われてくるからこそだと思う。呪者の業や、小夜の存在を知った人々の腹の内がおぞましく苦しいほどに、ふたりにはそれらから解き放たれて幸せになってほしくなる。ふたりの愛と献身、春望の選択がこの未来を手繰り寄せてくれて本当によかった。
    小春丸の述懐、大朗の反問が響いて揺れて、でも小夜の笑顔と幸せな一家の姿を見れば、これがいいのだと思える。切なく美しいラストシーンがとても好き。

  • 頭の中に自然と情景が広がっていくような柔らかで綺麗な文章がとても綺麗

    時代設定も違うし、ファンタジーのような雰囲気なのに、何故か懐かしさを感じるのがとても不思議だなと思いながら読み進めていました

    読了後は切なさと愛おしさが込み上げてきて、また読み返したくなるとても素敵な作品

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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