天国からはじまる物語

  • 理論社
4.07
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感想 : 81
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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652077672

作品紹介・あらすじ

もうすぐ16歳になるリズは、車のひき逃げ事故にあってしまう。気がついたときには、大きな船に乗っていて、見知らぬ港に入ろうとしていた。到着地は、地上での人生を終えた人が暮らす地「Elsewhere」。そこは、人が時間をさかのぼる世界。つまり、1年ごとに1歳ずつ若返っていくのだ。大人になることができないリズは、自分の若すぎる死を受け入れられず、新生活にもなじめない。しかし周囲の温かい目に見守られ、そして、双眼鏡をとおして見る地上の様子に深く考えさせられながら、徐々に心をひらいていく。やがてひとりの青年に恋心をいだいていく…。

感想・レビュー・書評

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  • リズは16歳の誕生日を迎える前にひき逃げに遭い、「ドコカ」(Elsewhere)へやってきた。そこは、人が時間をさかのぼる世界。つまり、1年ごとに1歳ずつ若返っていく。同世代のタンディ、若返った自分の祖母ベティや、ロック歌手のカーティスと出会うものの、リズはなかなか自分の死を受け入れられない。

    恋も、パパへのプレゼントも、免許をとることも、もうできない。

    未練ばかりであちらの世界への執着を断ち切れないリズが、徐々にこちらの世界を受け入れ始めたきっかけは…。

    年々若返り、懐かしい人と再会できる世界。犬のお喋りが理解できる世界。死後にこんな世界が本当にあるなら、怖くない。

  • 不思議な物語だった。
    人が死んでしまった後に、現世とさほど変わらない世界があって、そこからもう一度逆さの人生がはじまり、赤ちゃんに戻ったら生まれ変わる。なかなか面白くて、それならば死が訪れても怖くないのになって思った。
    だけど、リズみたいに、大人になる前に、あまりに若くして失くなってしまうと、絶対に大人になれない。最初は反発してばかりのリズを、なんだかワガママなコだなぁって思っていたけれど、確かに受け入れがたく、自分は死んでまで不幸だって思い、リズみたいに反発するのが当然だと感じた。そんなリズが、新しい人生でいろいろな人との出会いに恵まれ、仕事もみつけ、そして向き合い、全うする姿に刺激をうけました。
    どんな人生であれ、どんな状況におかれても、懸命に生き、そのとき自分にできる精一杯のことをするしかない。豊かな人生を送るには、逃げない勇気が必要なんだって、おしえてくれた一冊だと思います。

  •  死んだ後、死者の国で自分の死をどう受け入れ、前に進むかを描いた小説。
     死者の国の仕組みや死後の生活などの設定はとても面白く、展開もその設定を活かしたもので楽しめた。また、縫い跡が死を受け入れられていない象徴として登場していたり、会話の中で出てきたシェイクスピアの「夏の夜の夢」が物語の総括として機能するなど、小道具が上手く散らばっていたのがよかった。
     ただ、描写に関しては気になるところが多く、同じページ内で一人になりたいと友人に言ったのに実際に友人が行ってしまうと行ってほしくないと思ってるところや、3行前までわずかな物音もさせないようにして隠れていたのに話かけられたら葛藤なく返事するところ、絶対に地上に戻ると思っていたのに亡霊の話を聞かされただけで簡単に決心も変えるところなどなど、言い出したらキリがないくらい多い描写齟齬や違和感が多く、読んでて話が入ってこないし読む手が止まることが多かった。加えて、地の文に時々出現するどの目線かも分からない()や、登場人物の行動や態度が変わる理由に説得力が乏しいこと、設定が後からすでに知っているもののように出てくることといった部分で読んでいてストレスを感じた。おかげで登場人物の人物像が掴みづらく、主人公が自分の死を受け入れるのにかなり長い時間を要することもあって、感情移入はできなかった。
     テーマとしては、人生の不可思議さや生者の世界と死者の世界は共存してることを言いたいのだと思う。いつまでも残してきた人のことを考えてうじうじしてる主人公が、残してきた人を忘れるのではなく死者の国で大切なものを見つけることで立ち直ったり、残してきた妻を思い続けていた人が主人公といい関係になり妻が死者の国に来てもその関係を続けられたことが特に印象に残った。

  • 中学生の頃友人を交通事故で亡くし、気持ちの整理がしきれていなくて混乱状態にあった頃に学校の図書館で見つけ、読んだ本です。
    タイトルに惹かれたんですね、友達は天国にいるんだ、と思って。

    当時、この作品に救われました。
    死は終わりではなく、また新しい人生の始まりなのだということがわかって。ほっとしてボロボロ泣いたのを覚えています。13年後、彼女は地上に戻ってくるんだ、また会えるかもしれないと思いました。
    もちろんファンタジーだということは百も承知です。だけど、どうしたって死後の世界は空想にしかならないのだから、この作品のように死後の世界を考えて、その考えにすがってもいいじゃないですか。それで後に残された人が救われるのなら。

    久しぶりに読みたいなぁと思って、また近所の図書館で借りてきました。
    やっぱりとってもいい話です。少し恋愛色が出すぎているような気がしないでもないですが、まぁ許せる範囲ですかね。(恋愛系あんまり好きじゃないので☆4にしちゃいました…)
    輪廻転生論に基づくストーリーですが、この作品を読んで救われる人は多いのではないかなと思いました。

    今回少し時間がたってからまた読み直してみて思ったことは、亡くなった人と後に残された人ってどんどん離れていってしまうんだなぁということ。
    私の中で彼女は13歳のままだからなぁ。

    死後の世界が「ドコカ」だったら楽しいですね。切ないことも多いけど…。

  • こんな世界があるなら、死は怖いものでは無いのかもしれない。死は終わりでは無いのかもしれない。そんな風に思える。

  • 人は死んだらドコへ逝くのか────。一度は考えたこと,あるのでは無いでしょうか。私は幼い頃は頻繁にそんなことばかり考えていたものです。天国や地獄の存在を信じました。今だって少し怖くなる時があるくらい。
    人間なら誰しも抱く疑問と不安......『死後の世界』の物語です。とは言っても決しておどろおどろしいものではなく,ハートウォーミングなじんわりじわじわとくる感動ストーリーです。米国版『天国の本屋』と言ったトコロでしょうか。

    何て私の人生はうまくいかないんだろう......幸せなんか感じたことが無い......どうせ死ぬなら何のために生きるの......?
    そんな想いを抱いて生きているあなたに読んで欲しい作品。

    静かな海に心を浸してみませんか?

  • この物語は、「プロローグ」が「最期」で、「エピローグ」が「はじまり」である。

    リズが死ぬところからものがたりがはじまり、
    再び新しい命となって生まれるところで物語は終わるからだ。

    死後の人がいくという「ドコカ」(Elsewhere)は、
    自分の亡くなった年齢から若返っていって、
    赤ちゃんに戻っていくという場所なのだ。

    リズは15歳で交通事故で亡くなったから、
    15歳以上になることはない。

    免許も取りたかったし、恋もしたかった。

    15歳で突然人生を終えなければならなかったことさえ
    受け入れられないのに、
    ここでも大人になれない事実に、彼女は反発する。

    でも、改めて自分の人生を思い返すと幸せだったということに気づいて、
    そこから彼女は変わり始めたのではないかと思う。

    人が年老いていくのは子供に還っていくのと同じことだと
    以前から感じていたけれど、
    「ドコカ」では、まさに年を経ると子供に還っていく。

    河から赤ちゃんとして流れていく日は、「ドコカ」での生活を終える日、
    折り返したその人の人生が終わって、新しい人になる日なのだけど、
    その日、その人を送り出した人たちは、どこか寂しさを感じながらも、
    送り出したその人の新しい誕生日を祝っている。

    地上でその人とお別れするときも、
    その人が完全にいなくなったのではなくて、
    カタチは違っても、その人はいるのだと思い続けていていいのかなと思えた。

    私が死後に対している持っているイメージは、この作品とは異なっている。

    だけど、真っ向から違うと言おうとは思わない。

    旅立ったあとの世界の捉え方としてとてもおもしろいと思ったのだ。

    旅立ったあとの世界について、
    自由に考えてもいいのだと思わせてもらえたことに感謝したい。

  • 最初は、尖った物言いばかりのヒロインに共感できず、ヤングアダルト作品の印象が強かった。ところが中盤以降、物語の組み立ての良さが光り始め、最後は心が温かくなって読み終えることが出来た。
    愛する人が無垢の状態に戻り続け、カウントダウンで永遠の別れを分かつ切なさ、東洋的な輪廻転生思考も混じりつつ、複雑な気持ちを登場人物たちと共有した。
    いいお話だった。

  • 読んだのはかなり昔なので内容は詳しく覚えていないが、思春期で度々「死」について考えては夜眠れなくなったあの頃、死ぬのはそんなに怖い事ではないのかもしれないと思わせてくれた一冊。

    時間があればもう一度読み直したい。

  • なかなかなティーンエイジャーをよくぞ我慢強く見守ったおばあちゃんに拍手を送りたくなった!
    若くして死んでしまった女の子が素直に詩を受け入れ現実を受け入れ...なんて出来るわけがない。その葛藤が読者をイライラさせるふるまいとなり、なんとも切なくそして応援したくなる作品で、もっと若い子がこの本を手にして読んでくれたらいいのになぁと感じだ。
    もし、この物語のような「ドコカ」が実際あると、それはちょっと残酷な世界のようにも思う。仏教では死んでなおあの世で修業をさせる宗教もあるが、無に帰してよって。やり残しや未練を昇華させるための場であるならばアリかなぁとも考えるが、やっぱり死んじゃったらそこでおしまいよってあっさりと終わらせてほしいかな。
    天国のちょっと奇妙な世界観を楽しめた作品だった。

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