- Amazon.co.jp ・本 (663ページ)
- / ISBN・EAN: 9784652077719
感想・レビュー・書評
-
原書をはじめて読んで、これは絶対翻訳したいと思ったのが1985年。出版するまでに20年もかかってしまいました。でも内容は決して古びていないです。現在の日本の教育や国防の流れを考えると、むしろ「歴史」から学べる一冊でしょう。舞台は1918年から1919年にかけてのベルリン。第1次世界大戦終結の大きな引き金になったドイツ革命の渦中をかけめぐる14歳の少年ヘレの物語です。タイムスリップしたかのようなリアリティがあるのは町並みや暮らしが当時そのままに詳しく描かれているからでしょう。ただこの本には1点だけフィクションがあります。主人公の一家が住む下町のアパート。これだけは実在しません。その住所には古くから墓地があります(現在も)。つまり幾世代にもわたるベルリン市民の「思い」がこの一家に込められているのですね。彼らの思いは「パンと平和」。使い古された言葉かもしれませんが、当時の彼らにとっては本当に切実だったのです。「ベルリン1933」「ベルリン1945」で三部作となります。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2011年4月に国際子ども図書館にて行われた講演会「いま、ドイツの子どもの本は?」で、訳者である酒寄進一先生の講演を拝聴し、本書の存在を知りました。児童文学として分類されている、という本書ですが、日本ではどこの書店でも児童向けコーナーには置いてありません。内容が難しいのかと一瞬思いますが、メインが子ども視点なのもあり、文の表現も子どもの感情特有の真っ直ぐなものが多いです。小学校高学年~中学校あたりで読んでもおかしくないのではないかと思います。
-
1918年11月から1919年1月までの数か月に起きたドイツの激変と人々の暮らしが子供の視線を通して描かれた一冊。厚みがあるのと児童文学があまり得意ではないことから読み通せるかと心配で、とりあえず図書館で借りてみたのだが、杞憂だった。人々の記憶から影をひそめてしまっている敗戦の混乱期、食料もろくにない中必死に生きて、意見を戦わせ、行動し、国を立て直そうとする人々の姿が丁寧に描かれている。主人公を利発で活動的少年ヘレにしたことで、彼が通う学校、議論がされる家の様子、意見を異にする(皇帝派の)家族の友達との関係、ストを始めた水兵たち、使いを頼まれて歩き回るベルリンの街やデモや鎮圧する軍隊の様子、都会と対照的に食料が豊富な田舎の様子なども(ヘレ自身の淡い初恋も)織り込まれて当時のベルリンの様子が浮かび上がる。この設定が上手いと思う。大勢の登場人物に最初は面食らったけど、読み終えると一人一人が愛おしい。忘れないように読書メモにすべての登場人物の名を読書メモ欄に残したほど。東独から早い時期に西側に亡命したという作者は、この革命が違った経過をたどればナチスが政権につき第二次世界大戦を引き起こすことはなかったかもしれないという。過去の失敗に向き合い、記録し、次の時代に伝えようとする気概を感じる。そして100年後の現在の世界にも飢餓や戦争が絶えてないことを指摘しつつ、「夢は見続けなければならない、夢をあきらめた人は負けだ」という(あとがきより)。これは続きも読まねば。今年岩波少年文庫にて「原書新版で作品全体の構成が手直しされたため、これに準拠し、訳文も手直ししました。」(下巻の訳者あとがきより)とのことで三部作全て出版されるので購入することにした。訳者の酒寄進一氏が以前読んでとても感銘を受けたローベルト・ゼーターラーの「キオスク」の訳者だったことを知る。とても読みやすい訳だったのでこの方の訳本も追いかけてみたい。
-
ベルリンの貧民街に住むヘレ(ヘルムート)の父親は従軍している。母親は工場に働きに行き、彼は妹のマルタと小さな弟のハンスの面倒を見ながら暮らしている。ヘレは市立学校に通っているが皇帝派の威張り散らした教師によくおしおきをされる。第一次世界大戦下のドイツ帝国でのゲープハルト家を中心に貧しい人々の暮らしを活写し、皇帝の退位から革命が終焉するまでを描く。
-
ほぼ忘れられているだろう、第1次世界大戦の終わり。これがヒットラーにつながるのが、よくわかる。
歴史と関係なく、社会の不条理と、それに立ち向かおうとする人たちの姿が胸を打つ。 -
先が気になるし暗澹たる気持ちになる。
-
ドイツの20世紀前半の〈転換期〉を描いた三部作の第一巻。余り馴染みのない「11月革命」を子どもの目を通して淡々と語っていく。児童書と言うには余りに重い内容だが、これが児童書だからより価値があるのか。 一家の歴史をもう少し一緒にたどってみようと思う。
-
「1933」「1945」三部作読了。