ラン

著者 :
  • 理論社
3.76
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  • Amazon.co.jp ・本 (463ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652079331

感想・レビュー・書評

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  • 13歳で家族を失い、20歳で叔母を失いひとりになってしまった環。スーパーマーケットでアルバイトをしながら孤独な生活を送る環は、唯一といっていい友人だった紺野さんから、転居に伴う別れの餞別に自転車をもらう。その自転車は、自転車屋を営む紺野さんが、死んだ息子に贈るつもりで一から組み上げた世界にひとつしかない自転車だった。
    その自転車には不思議な力があり、一定の条件を満たすと環を死んだ家族の暮らす世界へ連れて行ってくれる。再び家族に会えるようになって浮かれる環に、叔母は「あんたは自転車に残った本来の持ち主の想いに便乗してるだけ」と言い、家族の暮らす世界に来たいのなら、自分の足で走ってきてみろ、と突き放す。

    世界の境界を超えるには、一定の速度を保って40kmを走り抜けなければならない。なんとなくジョギングの練習を始めた環は、走っているところを怪しげな中年男にスカウトされ、彼のジョギングチームに参加することになるが、チームのメンバーはやたらと個性的で・・・?

    というような話。

    家族を失った主人公が、少しずつその事実と折り合いをつけながら、走ることを通して成長する過程を描いているが、びっくりするほど暗くならず、時に笑ってしまいながら、ぐいぐい読めてしまった。

    主人公の不幸な過去は、死者である叔母自身によって否定され、それどころかアルバイト先では理不尽ないじめを受ける。このアルバイト先に途中からパートでやってきた真知栄子というおばさんが、強烈すぎるキャラクターで一際異彩を放っていた。愚痴っぽくて僻みっぽくて、決して好きにはなれないんだけど、やけに根性があって、人間臭いリアリティがある。中盤以降意外なほど重要なキャラクターとなっていき、主人公との奇妙な関係が面白い。

    ジョギングチーム「イージーランナーズ」の誰一人まともな人がいないゆるさも面白かった。皆成長はするものの最後の最後までそれぞれその人らしいとぼけた感があったままだったのがまたよかった。彼らが参加したマラソン大会のスタート場面で物語は終わってしまうが、どんな結果であれ、きっとみんな悔いを残さず楽しく走ったんだろうなあと思う。

    読み始めたら一気に読んでしまう本。

  • 青春ファンタジー小説。家族を事故で失い、その後一緒に暮らした奈々美おばさんにも死に別れた女性、夏目環。同じような境遇のサイクルショップの紺野にモナミ1号を譲り受ける。モナミ1号は環を乗せて「あの世」へひた走る。待ち受けていたのは猫のこよみと亡くなった家族たちだった・・。

    あれよあれよという間に思いもよらぬ方向へ話が進んでいく。「イージーランナーズ」の仲間たちのキャラクターも多彩。(木処泰介、大島尚良、藤見孝一、幡山信太、木処優菜、緑山清花、真知栄子)
    あの世がこんな風にあるならあの世も悪くないなと少し思う。

    内容は非常に面白く、じんとくるシーンもある。全体的にドタバタな感じが少し過剰な気もするが、誰もが誰かに思い入れて物語にはいっていけると思う。

  • 今まで読んだ森絵都作品の中では
    なんかピンとこない話だった。
    でも、嫌いじゃない。

    生きるってことを、
    生きてゆくってことを
    とてもキチンと
    大切に考えてる人なんだろうなぁ
    森絵都さんは。

    「あきらめなきゃいけないことがある。」
    その言葉の繰り返しは
    なんだか心に響いた。

  • ふしぎな本でした
    私はカラフルより好きです
    あととても分厚いので読みごたえがあります

  • 十三歳で両親、弟を亡くし、二十歳で一緒に暮らしていた奈々美おばさんを亡くした。そして二十二の年にこよみが死んだ。
    死者との壁が段々と薄らいでいくのを感じている環は、こよみの死をきっかけにその境界を越える。死者の世界へと続く40キロもの長い道のり。懐かしい家族に会うために環は自転車でその道のりを辿っていた。しかし奈々美の忠告により、40キロを自力で走ることに。死者の世界に家族に会いに行くため、そんなネガティブな思いを胸に環は現実の世界で練習を始めた。

    前半暗すぎて、このままこのテンションやと辛いな~と思っていましたが、中盤あたりから盛り上がってきました。死者の世界っていうと恐ろしげなものと感じられますが、とてもとても平和な世界で、逆にそれが生者を締め付ける。その矛盾がより心に刺さりました。理想の家族そのもの、生きている時も果たしてそうだった?なんで忘れてるの?明るければ明るいほど、それに救われるけれど、同時に突き刺さる。どうしようもない、もどかしい心情をこんなにも読みやすく取っ付きやすく描けるなんて、流石です。

  • あの世にいる家族に会うためにフルマラソンに挑戦する女性

  • 一気に読めた。なんとも…、でもランニングは好き

  • 死者に会いに行くために走る。
    最初はそんな目的だった環が、チームメイトや今生きている人たちとの交流を通して、生きるために走るという目標に向かう姿がステキ。
    それにしても、森さんらしいタッチでやっぱり読後の爽やかさは秀逸☆
    ランニングを始めたくなる♪

  • あり得ない世界の話でした。主人公が成長する様が素晴らしかったです。

  • 成長のお話で、清々しいのに、でもさあ、とか、いいわねえ、とか言いたくなってしまう自分がちょっとイヤ。

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著者プロフィール

森 絵都(もり・えと):1968年生まれ。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞及び産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、17年『みかづき』で中央公論文芸賞等受賞。『この女』『クラスメイツ』『出会いなおし』『カザアナ』『あしたのことば』『生まれかわりのポオ』他著作多数。

「2023年 『できない相談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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