僕は、そして僕たちはどう生きるか

著者 :
  • 理論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652079799

感想・レビュー・書評

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  • バクシーシ山下氏の例の本とともに読了。
    ともに理論社。

    特定秘密保護法案が可決された今、身につまされる思いで読む。
    わたしもコペルくんと同じタイプ。いやもっとだめだめだけれど。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「身につまされる思いで読む。」
      この本は未読、、、近い内に借りようと思う。。。
      「身につまされる思いで読む。」
      この本は未読、、、近い内に借りようと思う。。。
      2014/02/27
  • 【内容】
    「君たちはどう生きるか」吉野源三郎/岩波書店 由来の小説.
    原作同様,14歳のコペル(原作を読んだ叔父がつけたあだ名)の素朴な視点を通じた等身大の人生論,につながる物語.
    昆虫採集の矢先,叔父さんと親友宅へ媒染用のヨモギを摘みに向かう.実は,親友の優人は小5以来,登校拒否となっていて,距離ができていた.
    叔父さんとヨモギ摘んだり,優人の従姉が加わって昼食を作ったり,オーストラリアで兵役していたマークが来てバーベキューをしたり.久しぶりに共に過ごすことで,少しずつ緊張が緩んでいく.昼食やボーイスカウト,徴兵やコペルの昆虫採集の理由,そして優人が登校拒否をしている理由など話題にすることは多種多様だが,根底にあるものは「僕は、そして僕達は、どう生きるか」についてだった.

    【感想】
    もっと前に読みたかった!特にコペルと同じ中学生の時に読んでいたかった...
    この小説の哲学はタイトル通り,「僕は(主体性をもって)、そして僕達は(群れとして)どう生きるか」.
    私もコペル同様に,人の意見を鵜呑みにしてしまう性質で,個の弱さに目を背けている部分があり,1人こっそり行動することをしがちです.おそらく,ほとんどの日本人にとって,コペルの気持ちは「あるある」だと思います.

    近年,マスメディアは疑いやすくなっていますが,口コミNo.1の金融・保険サービスやベストセラーの本,周囲の人の言動などなど,私にとって鵜呑みにしがちなものはまだまだ多いです.そんなとき,「意識のライトを当てて,自分の僅かな違和感を明らかにする」ことができれば,と思います.
    「自分基準で『自分』をつくっていくんだ。他人の「普通」は、そこには関係ない」というフレーズとそのエピソードは特にショックでした...

    個を確立させればそれでいいかというと,やはり人間は群れの生き物で.物語の最後,インジャが少し心を開くことによって「どんな群れが求められているか」コペルが確信し,その決意が気持ちよかったです.

  • 個人的メモ。他の人に向けたレビューではない。

    そういえば、映画化された「西の魔女が死んだ」にもそういう部分はあったんだった、と読み終わって思い出した。

    最近のエッセイで、
    『ここのところ世間全般にどうもきな臭い。
    世の中が全体主義的になって、一人反対することが出来ない空気になるのは嫌だ』 というような話が何回か書かれていた。

    それを、14才の少年を主人公に、その年代に対して書いたものらしい。
    2007-2009に連載されていたもの。

    普段なら「梨木香歩の新刊!」と飛びついて、文庫も待たず単行本で買う勢いなんだけど、これはアマゾンのレビューを見て、読むかどうか迷った作品。

    でも図書館で見かけて読んで、これは買おう、と思った。
    これから、というか今、必要なことが書いてある。

    とはいえ、見た目には梨木さんのいつもの雰囲気(植物いっぱい、犬アリ、そして染色家あり)なんだけど、これがまたナイーブなテーマをナイーブな世代に向けて書く緊張から、なじみのものを沢山引き寄せて味方にして頑張った!という感じがして痛々しくも見える。

    西の魔女も同じように「群れ VS 個」というテーマが入ってたと思うけど、今回のは、作者が今の時代に「群れの暴力に個がつぶされそう」という大きな危機感を持って、今、まさに危急の時の為に書いた、というストレートさがある。

    だから登場人物たちに起こる事件が現実的で生臭くて、いつものちょっと白昼夢みたいなファンタジックな感じと全然違うなぁ…と思ったけど。
    必要に駆られて、こういうのも入れたんだなぁ、と。
    結果、いつもの梨木的世界に現実の問題ががっぷり組み込まれてて、重くて面白くて、やっぱり考えさせられた。
    こういう、何度も読み返して自分の血肉にしたい、と思う作家さんは今はこの人だけ。

    参考文献がなぁ。まぁ、なるほどなんだけども。
    「ある徴兵拒否者の歩み」
    「心のノート」を考える
    「土壌動物の世界」
    「ナチュラリスト志願」
    「ボーイスカウトが目指すもの」
    「良心的兵役拒否の潮流」

    あと、作中のポルノ被害にあった女の子と、その事件のきっかけになったと思しき本は、10代向けのシリーズ「よりみちパン!セ」
    バクシーシ山下の『ひとはみな、ハダカになる。』のよう。
    もちろん参考文献には挙がってない。

    きっと「よりみちパン!セ」だなぁ、と思ったんだけど、ほんとにそんな本があったことにびっくりした。
    しかし本当にあった本への怒りが、執筆のきっかけの一部になるなんて、
    「現代社会の問題」をダイレクトに扱う人だとは思っていなかったので、なんだか意外な気がした。

  • 僕は、そして僕たちはどう生きるか。

    私は、そして私たちはどう生きるか。読みながら何度も自分の心に問いかけた。
    今の自分はコペルのように(肝心要の自分自身が信用できない、僕にはもう自信がなかった)という状態。
    少年たちのある一日の様子を通して、なんて重大なことを伝えているのか。大勢に飲み込まれることなく、無難なほうへと流されることなく、幾度も心に問いかけながら、それでも群れとともに自分の道を歩いていきたい。
    強くなりたい。

    ※参考「君たちはどう生きるか」吉野源三郎 岩波書店

    そして作中インジャがインジャになった原因AV監督の書いた本のモデルと思われるのが、同じ理論社から2007年に出版されています。

    • kuroayameさん
      凄く気になり、読んでみたい本に登録していたので、レビューを拝見させていただき、とても嬉しかったです♪。
      ありがとうございました★。
      凄く気になり、読んでみたい本に登録していたので、レビューを拝見させていただき、とても嬉しかったです♪。
      ありがとうございました★。
      2012/11/26
  • 人と会ったり、話したりすると、パワーを使う。みんなで盛り上がる方が楽しいのはよく分かるけど、そうしたくてもできない時や、したくない時もある。でも、そういうのが分からない人や認めたくない人がいて、「盛り上がってないじゃん」なんつって言われて。子供の頃からそれがすごくイヤで、集団での衝突が絶えなかった。「何であんたはそうなの?」って言われても、上手く説明できなくて、結局、選ぶのはいつも孤立だった。『僕は、そして僕たちはどう生きるか』は、そう言う気持ちを上手く表現してくれている。大衆と犠牲。ロックンロール。分かりきったことだけど、社会生活を送る上で、100%の勝利や100%の理解はありえない。大切なのは、この一線だけは譲れないという「何か」を持つこと。投げ出さず、最後まであきらめずに戦ったり、訴えたりすること。梨木さんの本の中では、一番すんなり読めた。題名に負けない、いい本だった。

  • 冒頭近くに次のような一節がある。

    それぞれ「譲れぬ一線」を抱えた人たちが、皆それぞれの「前線」で闘い、その言わば「夢の跡」が、今、僕らの生きる世界なんだ。

    いくらでもすぐれたファンタジー世界を構築できる梨木さんに、これほど不器用なまでにストレートな作品を書かせたものは、おそらく彼女自身、「譲れぬ一線」に直面したと感じる場面がいくつかあったせいなのだろうと想像できる。理論社が無邪気な装いでレイプものAV監督の本を出版したということ。戦争を準備させるような政治家たちの言葉。生命を静かに奪っていく開発。命の大切さといった耳触りのよい言葉で、個人をおしつぶしていくような風潮。
    そうした意味で、吉野源三郎氏が最初に「君たちはどう生きるか」を出版した時代と現在を重ねあわせて考えてみるのは興味深いことだ。あのとき生きていたひとたちの多くも、まさかその20年後に、国が壊滅するほどの戦争に自分たちが突き進んでいくことになるとは、想像もしなかったのだろうから。2人の「コペルくん」の問いは、激変したように思える世界の中で、同じようにそこに放り出されている問題を指し示しているが、オリジナルのタイトルに対して、「僕は、そして僕たちはどう生きるか」というタイトルをもってきたことは興味深い。群れから距離をおくことができること、そしてなお群れのために考え続けていくことができること。その方法はひとつではないとも、梨木さんは示唆している。

  • 子どもたちに読ませたい1冊。
    読み終わって、もっと先を読みたいと思ったが、ここで終わるからいいのだとも思った。
    ここから、また新たなスタートが始まるということに希望がある。
    生きるのが下手な方が、よりよく生きられるような気もする。
    その分、深くいろいろと考えるから。
    新しい出会いとスタートと。読んでよかった1冊。

  • あー。これはちょっとだめだ。いくら梨木香歩さんでもだめだ。ジャンルがYAだったので手にとったけど、どうしちゃったんだろ。他の方が書いてましたけど、道徳の本でも目指してるの? って言葉にすごい頷ける。レイプとかAVとか不登校とか命の授業とか、なんか全部詰め込みすぎ。

  • 14歳のコペル君と友達のユージン、ユージンの親戚のショウコ、その友達のインジャ。不登校のユージンの家の庭で再会したショウコ。そして、そこに密かに住んでいたインジャ。この生きにくい現代を、確かな自分を持って生き抜く中学生たち。そして、ちょっと浮世離れしたおじさんのノボちゃん。今を生きる若い世代へのメッセージ。

     コペル君とおじさんと友人たちとくれば、当然「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎)が下敷き。私にとって吉野さんの本は座右の書。なので、当然この本は読みます。そして、感動!!
     うれしくて、なんだか紹介文になってませんが、現代の「君たちはどう生きるか」になっていると思いました。

  • 題名になんか慕わしいものは感じていたのですが、読み始めてびっくり!
    コペル君とおじさんが出てきてるし、なんか古風な言い回しと落ち着いた文体・・。
    とくれば、これは、吉野源三郎「君たちはどう生きるか」の梨木版じゃないですか。\(^o^)/

    時にうんうん、時にドキっという感じで、とても嬉しく読みました。引用しておきたい文章もたくさん。
    舞台は平成の現代。
    コペル君は14歳で1人暮らし。大学で教えているお母さんの異動に専業主夫のお父さんが同行してしまったから、という導入からして面白い・・・。

    コペル君は小さい時からものごとをよぉ~~~く(*^_^*)考える子で、今も考え続けているという、あはは・・私の大好きなタイプの男の子なんですね。
    そんな彼が、ずっと不登校の友だち・ユージンの家をおじさんのノボちゃん、犬のブラキ氏と一緒に訪ねた一日の話なんだけど、ユージンの従姉妹のショーコ、ショウコのガールスカウトの先輩であるインジャ、ショウコの家のお客さんであるオーストラリア人のマークとあれこれ語りながら、また、考えることが増えていく・・。

    一番の話題は、多数派と少数派との関係。
    ジェンダー、生態系、学校、戦時中の“洗脳”、徴兵制IN現代、などを題材に、みんな、とても穏やかに(そして全然、説教臭くない所が凄い!)語る内容が面白くて、面白くて。
    特に、コペル君がこれまでの自分を振り返り、彼の「適応力」に対して価値観がひっくり返るほどの衝撃を受けた場面では、私も愕然とし、でもそこでまたプラスの気持ちになれたところが、梨木さんの力量ってことなんでしょうね。

    多数派が悪くて、少数派は報われなくて、という単純な扱いじゃないところが、またよかった。

    ある種の「たくましさ」や群れでやっていく能力・・協調性とか思いやりとか・・は、「大人数」の中でしか獲得できない、とか、だからこそ、時には群れから離れて生きることも大事だ、とか、足を踏まれたら痛いって言えばいい、踏んでいる方はそのことに気づいてないかもしれないから、とか、なんか、こんな風に書きだしちゃうと、誰でも言ってる陳腐な内容になりそうなのがもどかしいんだけど、一つ、一つが、すっごく腑に落ちたんだよね。

    うん、私は常々「みんなと同じ」という流れがとてもイヤで、その意味でちょっと突っ張らかった自分、みたいな感じを持て余したり、ちょっとは好きだったり(汗)してたのが、また、違った角度からも見れるんじゃない?と教えてもらった気分。

    アラフィフのお母さんが、YAを読んでこんなに感動するなんて!と、笑ってしまうこともできるけど、ここは素直に、梨木さん、参りました!と言いたいです。

    • kurapiさん
      はじめまして。フォローありがとうございます。
      私もこの本、とても好感を持って読みました。でも吉野源三郎「君たちはどう生きるか」という本が下地...
      はじめまして。フォローありがとうございます。
      私もこの本、とても好感を持って読みました。でも吉野源三郎「君たちはどう生きるか」という本が下地にあるとは知りませんでした。というか知らなかったんですよね、恥ずかしい…。
      2011/07/20
    • じゅんさん
      kurapi様 こちらこそ、早速のコメント、ありがとうございます!(*^_^*)たなぞう難民同士、たくさんおしゃべりできるといいですね。「君...
      kurapi様 こちらこそ、早速のコメント、ありがとうございます!(*^_^*)たなぞう難民同士、たくさんおしゃべりできるといいですね。「君たちは…」はかなり古い本なので、年齢的なことから御存知なかったのではないでしょうか。「僕は、・・」今年のベスト1
      かも!というくらい好きなお話でした。これから、またよろしくお願いします!
      2011/07/20
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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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